episode 5
「この後はどうするつもり?あんなにあっさりと入会できると思わなかったから、この後の予定は何も立てて無いわよ?」
「それなら一つだけ、今しておかなければならない予定があるぞ?」
「え?何よそれ?」
「____《雪山デート》」
「くっ____!」
カチャッ____
「冗談だよ。でも、雪山に行くのは本当なんだ」
「あんた絶対違う事考えてるでしょ!何でこんな時期に雪山なんかに行かないといけないのよ!任務で死ぬより、遭難して死ぬのがオチよ?」
「遭難・・・か」
「・・・・・・で、その雪山に何しに行くのよ?」
ディセルに問われ、俺はようやく行動の意味を口にする。
「あの場所はフロア一面をステンドグラスに囲まれてただろ?もしもの時にそれを利用できないかなって」
「利用?」
「団長の話だと信者は優に千を超えているらしいから、もしその全てと全面戦争になったら不利なのは確実に俺達だ」
「話が見えないんだけど?」
「信者は恐らく、教祖によって成り立っている。だから、それが無くなったらどうなる?」
「____崇拝対象との繋がりが切断されて、自分を見失うとか?」
「まぁそんな感じ。だからだよ」
この考えが本当に効果的なのかは分からないが。もしも、その方法で千を超える勢力を止めることが出来るのならやらないよりはましだろう。
「で、それと雪山はどんな関係があるの?」
「ディセルの銃は弾丸以外も撃てるのか?」
「《魔弾》とか、弾に魔法を付加させたモノとかかな」
それを聞くだけでも、俺の作戦に大いなる一歩が加わったのを感じた。大聖堂を取り囲むように付けられた虹色の硝子はいわば、俺達_信者を取り囲んでいると考えていいだろう。それが何を意味するかと言うと、どの角度からでも狙えるということだ。未知数の能力に近い《心読》を保有している可能性を考慮して、任務を遂行するのなら並大抵の計画では相手の思うつぼになるのは目に見えていた。むしろ、相手にはめられながら任務を遂行する方が悟られないし、動きやすいのではないかと思ってしまう。仮に、俺達が教祖、それが率いる信者との攻防になったとして、その中には親子連れもいるかもしれない、それに老人と言った者も参加している可能性はゼロではない。そう考えると、この任務で最も大事なのは犠牲者を出さないことだ。
《黒魔術》=《反転の呪い》
と、考えている俺にはその術を知りたいという、密かな願望があるのは間違いないのだが、一歩間違えれば俺もその影響を受けかねない。だから、それが行われるよりも前に相手側の企みを阻止し、方法といった、《手前の術》で一時的に留めて置くのが最善の手ではないかと思った。
そして、もう一つ、俺にはこの任務に置いて、気を付けておかなければいけないことがあった。
今回は《今は無き最高位》の任務への参加という立場を取っている、俺達_《純白の剣姫》はあくまで、サポートという事を忘れてはいけない。それ故、あちら側のいう事には逆らえない。《例えそれが自身よりも階級の低い者だったとしても》だ。そこで、俺は最悪の事が頭をよぎってしまった。剣士とは明確な違いが明らかになっていない、騎士は俺達の様に警備隊という役職は恐らくないだろう。これは以前クレイから聞いた事なのだが騎士は常にその在り方を厳守する立場であり続けなければいけないという、家訓の様なものが存在するらしい。これは恐らく、警備隊を兼任する_俺やレイスの様な《剣士兼警備隊》という特殊な役職が存在しない事を意味するのだろう。だからこそ、今回の任務は少し、気がかりなことがあった。それは、任務遂行の為なら手段を選ばないという者がいるかもしれないからだ。心辺りが別段あるわけでもないが、それでも一人だけ、他の騎士たちとは何かが違う存在を俺は知っている。
____薄紫色の髪を持つ騎士 マルスだ。
あの騎士だけには何か気をつけないといけないという感情が湧き上がってくる。
以前、《少女誘拐事件》の際に街を歩いていた、少女二人に注意を呼び掛けた時の優しい口調からの冷酷な口調への変わりようを俺は今でも覚えている。
今回そんな奴の下で逆らうことのできない任務をすることに俺は一抹の不安と最悪の展開が待ち構えているのかもしれないという考えが脳裏をよぎる。
だからこそ、今回は騒ぎが大きくなる前に証拠を押さえ、《黒魔術信仰》という犯罪を芽吹く前に摘み取りたいと思っていた。例え、それが教祖、たった一人の命で終わるのなら俺はそれでもよかった。
「なら、それで頼む・・・」
「もしかして、今回の件で死者出るかもしれないって思ってるの?」
「何でそれが分かるんだ?」
「だってあんたのその顔、昔の私に似てるから」
「え____?」
「私の魔弾とその考えがどう関係しているかは分からないけど。それでも____分かるわ」
「関係性は今は言えない・・・ごめん。だけど、それがディセルに言い当てられたことに関係しているのは確かだよ」
明確な関係性はある。しかし、それを言ってしまうと今後の計画に響くかもしれない。だから、今だけはこの胸中を口出すことはできなかった。




