episode 3
「なぁ、頼むから・・・俺の背に着けてるそれ離してくれないかな?」
「振り向いたら、撃つ。関係ない発言をしたら撃つ。よそ見をしたら撃つ」
俺はディセルを恋人認定した次の瞬間、瞬時に背後を取られ、気づけば銃口を背中に密着させる形で当てられていた。そして、俺はそのままで目的の場所までの歩みを余儀なくされていた。
「って___!これじゃあ、まるでどこかのFBIと似た状況じゃないか!」
ガチャリッ
「言ったはずよ。関係のない発言をしたら撃つと____」
冷徹な声色が俺の精神を撫でる。普段なら、レイスが隣に居て、何かしらの方法でディセルの注意を引いてくれるのだが、あいにく今は俺とディセルの二人だ。仮にここにレイスがいたとしても、助けられるのはこの状況だけで、今後の任務を常に共に行動する俺とディセルは後何度、同じような状況になるか分からない。それを考えただけで先が思いやられた。
「キット こんな所で何してるの?それと、ディセルも?」
____あぁ、安心した。
「助けてくれ、レイス。ディセルに____」
俺がこの好機をものにしようと、通路に現れたレイスに声をかけ、今の現状を告げようとした時だった。
「キットに恋人にされた」
「____ッ!」
背後のディセルが、ただただ、一言そう呟いた。すると、一瞬にしてその場が凍りつくのを感じ、俺はすぐさま弁解をしようと試みる。
しかし、猶予というモノは時に非情で何の罪もない俺に追い打ちをかける様に、新たに冷たい視線が向けられた。
「ふーん、そうなんだ。キットはそういうことするんだ____」
白い髪の少女は今もなお、ツインテールの少女との距離がかなり近いを俺を見て、疑いの目を追加した。
「レ、レイス!?これには理由があるんだ!」
すかさず俺は事の発端と現在に至る過程を事細やかに話した。しかし、ディセルの役職を《恋人》したことについては少々、不満な顔をされ、それについてはより一層の説明を求められた。単にここで「ディセルへの日ごろの仕返し」と答えれば、レイスは納得するだろう。しかし、もう一歩の方はどうだろう?もしも、この取り決めが何の策も無く、ただ、仕返しという理由だけで成り立ったモノだと分かれば、間違いなく俺の背にピタリと密着している、銃口は弾丸を放つだろう。
「____どんな?」
(・・・きた____さぁ、どう回答する、キット)
自らに挑戦状の様に問う。
もしも、今俺が生きているこの世界が誰かのノベルティゲームだった場合、このジーンには____
・《正直に言う》
・《上手く誤魔化す》
といった二択の選択肢が出ていることだろう。
そして、この選択は仮にも主人公である俺の人生を大きく分岐させるに違いない。だから、今回ばかりは____。
(悪いが今回は俺自身の選択でいかせてもらう)
心でそう言った俺はレイスの顔をじっと見つめ、ただ一言____
「行ってくる、それと俺がきっと、君を____」
横を通り過ぎる様に発した俺の言葉にレイスは「えっ___?」と声を発し、俺の方へ振り返った。しかし、そこには既に俺とディセルの姿はなかった。
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「いいの?レイスに本当の事を言わないで?」
「いやいあや、誰のせいであんな状況になったと思ってるんだ!?」
「それはそうだけど・・・あの子の顔、かなり不安そうだったわよ?」
「・・・・・・今それを言わないでくれ・・・どうしたらいいか分からなくなる。それに、昼にここに戻ってきたらレイスにはちゃんと事情を話すよ。それに、ディセルにも」
「策があっての事なのね?」
「・・・うん」
組織を出た、俺とディセルは大聖堂へ向かう道中でそんな会話をしていた。どういうわけか、ディセルも自然と俺との足並みを揃え、同じ目的地への道取りを辿る事になっていた。
「教祖の異能は仮に《心読》と名付けたとして、あんたはこれをどうやって攻略するの?」
「問題はそれなんだけどさ。俺の考えは《それを逆手に取る事》なんだ」
「逆手?」
「相手の心が読める、つまりは会話と本音の差異を見抜けるってことだろ?これって、逆に考えれば相手には大きな余裕があるって考えれはしないか?」
「そうだけど?それがどうしたの?」
「その絶対的な力に浸っているっていう事実を掴むことが今回の任務遂行の鍵なんだよ」
「・・・・・・つまり何?」
相手の心が読める=偽りの会話はすぐに見抜かれる。
下手に芝居をすれば、そのぎこちなさで怪しまれる。もしくは会話より先に心を覗かれる。
どちらにせよ、相手はいつか必ず、持っているであろう異能を使うのなら、こちら側の手の内はいずれバレる。なら、俺達が取るべき行動は必然的に決まる。
「普通の会話をしながら、相手が躊躇するような事を心で思えばいいんだよ」
「一体、どういう事?」
「例えば、(俺に話しかけたら殺す)とかかな?」
「・・・・・・あんた、意外と怖いわね」
「こうでもしないと、相手に効果がないだろう?」
ディセルは俺の突拍子もない考えと、それの回答に少しばかり驚いていた。というよりかは、少し引いていたと考えるのが妥当だろうか。
「それじゃあ、最初の策はこんな感じで」
「うん、わかった。・・・・・・って!何が分かったよ!?それじゃあ、私の考えはまだ何も反映されてないじゃない!」
「と言うと?」
「私の《魔眼》を使っての遠距離捜査よ!」
「あー、それか____」
「それか・・・・・・て、何よその言い方 今まで忘れてたみたいじゃない!」
「いや、忘れてないよ。ただ、今はまだそこまではしなくていいと思ってさ」
そうこれは今から始まるであろう、俺の計画と他人の意識を利用した戦いだ。
俺はかつて白衣の心理学使い_リフ=スケープと心理と心理を計りあう《心理戦》を経験したことがある。それも、プロと一市民並みの知識しか持ち合わせていない剣士との心理戦だ。互いの言葉に《異》を見出し、それを突きつける。法廷の裁判の様な会話と行動。それらを行い、相手の隙を突く。時には自らの言葉に偽りを潜め、相手側がそれにどう釣られるかを判断し、次の一手を繰り出す。幸いにも、俺はリフとの心理戦に置いて勝利を収めることに成功した。
しかし、今回の捜査と条件は少し違った。一般的に心理戦は相手の顔色、声の加減、話の矛盾などを指摘し、少しずつ追い詰めていくのだが、今まさに起こりうるであろう、それは果たして心理戦と呼べるのかが多少の疑問だった。理由はいくつかあげられ、その中にこれを心理戦と呼べない決定的な条件があった。
それは、心を読むだ。
言葉に仕組んだ罠を相手が踏んだことで、戦況を変化させる、《心理戦》とは違い、表は普通の会話、裏では本音の対話という実に曖昧なこの戦いは心理というよりは別の言い方があるのではないかと思ってしまう。常に会話をこなし、心の中で攻撃をする。その、人には見えないけれど、互いの思考と精神を削り合う、そう____
この戦いは_《精神戦》と呼ぶべきなのでないだろうか。
「さぁ、戦いを始めようか____」
「は?」
ディセルとの会話を一切無視した、俺の会話に少女はただ一言呟いた。
「あんた、何言ってるの? まさか、それで私の会話から逃げようって言うの?」
「逃げないさ、今からは行動を共にするんだよ」
「そ、それはそうだけど・・・全然理由になってないじゃない!?」
「いずれ絶対、確実にディセルの力は必要になる時が来るから、その時は頼んだ」
「・・・・・・わかったわよ。でも、もし嘘だったら、許さないんだから・・・」
ディセルの顔色は確認することは出来なかったが、俺が力についての必要性を口にした時、一瞬、少女の雰囲気が穏やかなモノへと変わった気がした。




