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Last Rotor - Resurrected as Kit -  作者: キット
An angel who has descended of Starry Night.
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episode 26 【New day】

 《そしてあの夜から数ヶ月の時が経ち、私は14歳の誕生日を迎えた。》


 季節はとっくに移り変わり今は冬を待つ期間の秋だ。部屋から見える、木々は枯れ落ち、残った葉は風が吹くたびに揺れている。私の気持ちもその葉と同じように揺らめいていた。今、私が住んでいる《ロイ家》はセレクトリアでも名を知らぬ者がいないほどの名家だ。王家との関りはもちろんのことながら、国の公的機関や貴族と言った有権者との繋がりもあった。私の家では時折、その人々を招きパーティーという名の話し合いをおこなっていた。家に来るのはいつも大人の人ばかりで私は退屈だった。それに難しい話は盗み聞いても意味が理解できず、ただただ暇な時間だった。だから、私はパーティーの日には自室にこもり、一人あの夜の日の《思い出》にひたっていた。

 しかし、今日はそんな思い出に浸る事よりも大事なことがあった。それは、私の誕生日パーティーだ。このパーティーはいつもの退屈なモノとは違い私が主役で知らない大人たちも来ない。もしかしたら、私の誕生日は人を呼ぶほどめでたいものではないからと思うのはやめた。

 だけど、それは私にとって好都合だった。普段は仕事で忙しいお父様も今は自分だけのお父様、それにお母様はいつも優しくて話もちゃんと聞いてくれる。そんな、お母様だから誕生日の私にもっと優しくしてくれるはずと私は思い胸を踊らせた。

 でも、その日を境に私の周りは急速に変化し壊れ始めた。


 「私、剣士になりたい」


 思いを口にした時、時間が止まった錯覚におちいる。自分だけが何故か動けず、それ以外が止まった感覚に私は気持ち悪さを覚えた。言葉を発しようにも何を言えばいいのかわからず、その場で静止してしまう。


 「え?」


 そして、ようやく気付いた。時間は止まったのではなく自分が止めてしまったのだと。能力的なものではなくその場の空気を自ら凍り付かせてしまったのだと理解した少女は家族に声をかけた。


 「どうしたの?何か言ってよ」


 震える声で話しかける少女。何かを察したのだろう、きっといい返事は返ってこない。それどころか、家族の関係にも亀裂きれつをいれてしまったかもしれないことに。


 「____レイス お前はいずれこの家を継ぐものだ。だから、そんな夢は捨ててほしい」


 返ってきたのは見当のつく答えだった。


 「でも、私は____」


 頬に痛みが走る。


 「私がお前に手を出すのはこれが初めてだ。だが、これだけは分かってほしい、これは全てレイス、お前の為なんだ」

 「私の為って・・・家の名を絶やさないためでしょ?」

 「無論、それもあるが。それよりも、お前には何不自由なく生きてほしいんだ」

 「私の夢を否定してる時点で自由とは言わない!」

 「・・・・・・」


 核心を突いた私の言葉でお父様は黙ってしまった。取り返しのつかないことを言ってしまった自覚はあった。


 「ねぇ、レイス?何で剣士になりたいの?」


 お母様が沈黙を破る様に語りかけてきた。


 「それは・・・」


 お母様の問いにも素直に答えられない自分が嫌になった。


 「言えないのなら無理に言わなくてもいい。だけど、その望みが自分の意思じゃないなら剣士になるのはやめなさい」

 「ううん、これは本当に私の気持ちだよ」

 「そう、なら少し考えてみなさい?今日はもう遅いし、ベッドに入ってゆっくり考えてみて、それでも気持ちが変わらないのならまた話して?」

 「うん」


 お母様はあの時の剣士の様な微笑みを私に向けた。お母様のその優しさと心の温度は私に伝わり、張りつめていた緊張感が解けていた。


 「これでいい?」

 「・・・・・・・・」


 お母様の言葉にお父様は返事をしなかった。そんな二人を見て私はこれ以上何も言葉が出なかった。


 【それでも________私は剣士になりたい】


 この思いだけは変えられなかった。剣士になることに不安が無いわけではないが、一方的な望みの押し付けからの頬の痛みが私にその思いを強くさせた。そして、私は二人の顔を見て部屋に戻った。


 「眠れない・・・・・・考え事は夜には向かない・・・」


 いろいろ考えているうちに私は夢の世界から出てしまった。そうなってしまたら、次の睡魔を待つ以外に眠る方法はなく、私は再び目を閉じる。それでも、意識はこちらにあり、眠れないととよく確信した私はベッドから出て机に向かった。

 そこには、あの人にもらった私の似顔絵が写真縦の中に飾ってあった。それを見るだけで私の心は安らぎ少しづつだが瞳を閉じ始めていた。思い出を考えながら眠ってしまったせいか、夢の中に無数の白い流星群が見えた。


 鳥の鳴き声が聞こえ、私は意識の海から起きた。

 気づけば朝だった。昨日までの複雑な気持ちは嘘のように消え、今では自分の気持ちに素直になれた。


 「私は剣士になる」


 ひとり呟くと、身支度を整えお母様達がいる場所へと向かった。


 「おはよう レイス」

 「おはようございます お母様。・・・・・・お父様は?」

 「まだ来てないけど、そのうち来ると思うわ」

 「わかりました」

 

 朝はいつも家族三人で食事をしていた。しかし、今日に限ってお父様は未だに姿を見せなかった。それから、数十分待った時、お父様が姿を現した。


 「・・・・・・お父様」

 「なんだ?レイス」

 「あの、お話があります・・・お母様にも」

 「なに?レイス」

 「えっと・・・私、やっぱり剣士になりたいです」

 「・・・」

 「・・・」


 お母様もお父様も私の発言を聞いて、黙ってしまった。私はきっとまた、いい返事は返ってこないと思った。しかし、その予想は裏切られた。


 「二年だ・・・二年で功績を残せ」

 「お父様?」

 「剣士になるのであれば、その中でも一番になれ。それがレイス、お前を剣士にする代わりの約束だ」


 この展開は予想外だった。


 「お父様・・・・・・ありがとう・・・ありがとうございます」

 「良かったわね レイス」

 「はい!お母様」


 その瞬間、この家に張りつめていた悪い緊張感が一気に壊れた感じがした。


 「剣士学校への手続きは済ませてある 今日からでも通えるぞ」


 一般市民なら普通、こんなことは出来ないだろう。しかし、私の家は《ロイ家》という普通とは違った立場を取る名家であり、それ故、学校側も急な申し入れさえも受け入れてくれたのだと私は思った。


 「お父様が食事に遅れたのって、もしかして・・・」

 「ゴホッゴホッ_!どうでもいいだろそんな事。ただの寝坊だ」


 わざとらしい咳ばらいをするお父様に私は笑顔で返事をした。


 「は、はい!」


 本当の事は分かっていたけれど私はそれ以上先を追求しなかった。だって、お父様の頬は少し赤みがかっており、それだけで答えになっていたのだから。


 「それじゃあ、支度したくをしましょう?」

 「そうですね お母様」


 私は食事を済ませた後、自室に戻り必要なものをかばんに詰め、部屋を後にした。

 玄関にはすでにお母様とお父様の姿があり、二人とも手に何か持っていた。


 「レイス これを持っていきなさい」

 「これは?」

 「聖水と言われる物であなたをきっと、守ってくれるは」

 「そうなんだ、ありがとうございます お母様」


 次にお父様が私の手に何かを握らせた。


 「お父様?」

 「時間がある時にでも読みなさい」

 「・・・はい」


 この時のお父様の顔はお母様とは正反対でどこか暗く寂しさを感じさせた。何かを察したようなその表情は私の記憶に今でも鮮明に残っている。

 私は二人から物を渡された後、靴を履き玄関を出た。

 

 この時の私はただひたすらに剣士になりたかった。理由を言えと言われれば、少し恥ずかしいが答えは意外と簡単で剣を握り、街を守るという剣士に憧れたからっだった。私はこれから、剣士学校に入って、たくさん学んでたくさん辛い思いをして、剣士としての品格を磨くのだ。どんなことになっても私は後悔はしない、そしていつの日か自分の選択を誇れるような剣士になって_____そして____。それから先の事は駆け出したばかりの私には想像すらもできなった。だけど、一つだけ感じているモノがあった。

 それは、親友と呼べる友達に会えるのではないかという淡い期待を胸に抱いていたことだ。


 (お母様、お父様、行ってきます。帰ったら、学校での話をたくさんしますね)


 外に出た時、冷たい風が体を横切った。旅立ちの門出には向かない雰囲気だった。


 不意に木の枝から一枚の葉が風にさらわれた。

_______________________________________


 あの日芽生えた思いは非情にも灰色をした雪に覆いかぶさられ、決して果たされることはなかった。お父様に渡された手紙の中にはロイ家のありとあらゆる権利書・繋がりのある人のメモ書きの様な物が入っていた。今思えばお母様もお父様も家に感じた異変に気づいていたのかもしれない。剣士学校への早々の入学手続きに聖水や手紙と言った渡し物。たかが、学校に行くというだけなのにそこまでするのは少し、不思議だった。それも、全ては私の為だったのかもしれない。


 失った心で何を考えているのかも分からなかった私。


 それでも、私は共に傍に居続けてくれた優しい黒い蝶々に導かれるように新たな道を歩き出した。


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