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Last Rotor - Resurrected as Kit -  作者: キット
An angel who has descended of Starry Night.
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episode 16

 見上げる程の階段を俺とレイスはしばらくの間、上がっていた。俺達の組織を出て、少し進んだ先にあるセレクトリアの城に向かうための長い階段がある。横幅、縦幅共に馬車がそのまま通れるのではないかという広さを誇る階段の段数は千を優に超えているのではないかと思える程、一つ一つの刻みが短かった。


 「そう言えば、俺はまだセレクトリアの城に入ったことが無かったな」

 「そうだね。でも、私たちも数えるくらいだよ」

 「そうなのか?」

 「うん」


 息を切らしそうになる手前で俺は階段を上り切った。

 下を向いていた、頭を上げると目も前には言葉で言い表せない程、神々しく隅から隅まで細やかな装飾が施された王宮が姿を現していた。


 「凄いな・・・」

 「流石のキットもこの城は少し見ただけじゃ、イラストに出来ないんじゃない?」


 レイスが「これならどうだ!」と言いたげな、不敵な笑みを俺に向けそう言った。


 (____どんな表情もかわいいな____レイスは。でも、その笑顔は崩させてもらうよ)


 などと、心で思った俺は城の外観に圧巻させられていた顔を作業中の顔に意図的に変え、言葉を発した。


 「一見、難しそうに見えるこの壁の装飾模様だけど、法則があるから描けると思うよ」

 「えっ____!」


 (驚いた表情もいいな)


 「嘘だけど」

 「も、もう____!」

 「今日はいろんな表情をしてくれるんだな、レイスは。参考になるよ」


 キッ____!


 レイスの鋭い視線が俺への精神攻撃を計った。だが、俺はそれを逆手に取った。


 「そう言えば、レイスのそういう(一面)、一度も描いたことが無かったな?もしかして、それを知ってたから、やってくれてるのか?」


 そうではないことぐらいは分かる。だが、日ごろあまりこういうコミュニケーションを取っていなかった俺はただ単にこの状況が楽しかった。


 「キッットっ!」


 怒りと恥ずかしそうにして、赤面しているその顔は俺の心に会心攻撃(クリティカルヒット)し、思わず、それを目に焼き付けようと俺はした。


 「うん」


 俺は意味もなく、一人頷いた。


 「あんまり、そういう態度を取ってると____」


 レイスは不意に俺への距離を縮めてきた。


 「え____?」


 突然の出来事に俺は条件反射どころかその場を一歩も動けなかった。次にレイスは俺のコートの内側に手を入れた。コートの内側はペンやメモ帳などを入れることのできるポケットが作り込まれており、俺はペンとスケッチブックの紙を数枚、折りたたんで携帯していた。暇な時に資料集めでもしようと、忍ばせておいたそれにレイスは気づいていたのだろう。案の定、レイスの手には俺の本当の作業道具が二つとも握られており、白髪の少女は「どう?これでもまだ、そういう態度を取れる?」と言いたげにこちらを見ていた。


 「俺が悪かったよ、レイス。謝るから、それを返してくれないか?」


 すかさず、弁明を試みるが、白髪はすぐにそれを手放さなかった。


 「もうしない?」


 やれやれと言った表情でレイスは俺の言葉に返事を返した。


 「誓うよ」

 「なら____」


 (セーフかな・・・・・・?)


「昼休みめでこれは預かっておくね」


 暗黒微笑で手に持った、二つの(俺にとって)をレイスは俺に見せ占めるかの様にそれを見つめ、自らのポケットに収めた。


 「うぅ・・・昼休みまでの間に何かあったらどうしてくれるんだよ・・・・・・」

 「それはキット、個人の問題でしょ?大体、私たちの仕事の最中に私情を持ち込む時点でいけないんだよ?」


 それはあまりに正論であまりに非情な発言だった。だが、レイスの言っていることにも一理ある。確かに仕事中に私情を持ち込めば、それだけで判断が鈍ることもない話ではない。以前、レイスが話してくれた、《呪いの体現者》の時の様にいくら相手が子供でもそれはあくまで仮の姿。本来の正体は人の体を渡り歩き、殺戮を繰り返す《呪い》_その一言に尽きる。

 レイスはその事件で少女に乗り移った、それと対峙した。

 その時の彼女は、相手が子供_ましてや幼い少女だということに心を打ち砕かれ、その場で膝から崩れ落ちた。この反応は人として正常なのは言うまでもないだろう。今から、自分が成さねばならないことが間接的にも《殺人》で仮にも、人だったモノをあやめることなのだから。

 だが、レイスには人を殺すという、《自分の中で最も犯してはいけない禁忌》という、《私情》を仕事に持ち込んでしまった。それが、結果的に彼女自身の心に傷を作ったことになったのだが。

 しかし、俺とレイスの私情には決定的な違いがあった。


 ____それは、《自分に対しての私情》と《他人に対しての私情》だった。


 自分の欲求の為に私情を持ち込んだ俺とは違い、レイスは人を思った故の私情を持ち合わせていた。


 「それはそうだけど・・・・・・でも・・・」

 「もし、団長に見つかったら、きっと怒られるよ?」


 これではっきりした、レイスの行動は《他人に対しての私情》からきているんだと。


 「わかった。なら、昼休みまできちんと仕事をするよ」

 「それは当たり前でしょ?」

 「はい____」


 これ以上言うと、白髪の少女は俺にそれを返してくれないと思った俺は素直に彼女の言葉に従うことにした。最も、紙やペンが無くとも俺には記憶と言う内面的な記録装置が備わっているので最悪、それをフル稼働させれば良いだけの話なのだ。

 そして、俺は城の城外をレイスは城内を警備することになった。


 (何で俺達は街ではなく、城の警備なんだ?誘拐事件は街で起こってるのに、これじゃあ配置ミスとしか思えないけどな)


 「おはようございます キット=レイターさん」


 城の周りを探索するように歩いていると、聞き覚えのある声が耳に届いた。


 「クレイ おはよう」


 姿を現していたのは、整った容姿に金髪の髪、それに合わせる様に調整した青いコートに身を包んだその様は想像上の騎士さながらだ。


 「キット=レイターさんはここの担当なんですか?」

 「そうだけど。・・・それより、その呼び方どうにかならないのか?」

 「というと?」

 「そんな、堅苦しい呼び方じゃなくて、あの夜の日みたいに呼び捨てで」

 「そうでした・・・すみません。キット」


 (若干の敬語は気になるが今はこれで良しとするか・・・・・)


 「ところでクレイはどこの担当なんだ?」

 「セレクトリア市内ですかね。主に大通り周辺の警備と監視です」

 「クレイも、外なのか」

 「外?」

 「俺達の組織から配属された剣士のほとんどが城内か城の周辺の警備に当たらされているんだ。それに比べて、そっちの組織は王国直属なのに街の方の警備だろ?少し、不思議に思ってな」

 「あぁ、そう言うことですか」

 「何か知っているのか?」


 「それがキットの疑問なんですね」っと言った顔をした、クレイは少し間を置いて、話し始めた。


 「恐らくは勢力の差、かと」

 「勢力?」

 「偏見だとは思いますが、《純白の剣姫(リリィ・ソードダンス)》には女性の剣士が多いではないですか?僕たちの団長はそこに懸念を抱かれたらしく、街の一切をこちらが引き受けるという形で参加してくれたんですよ」

 「なるほど」


 俺のいる組織_《純白の剣姫(リリィ・ソードダンス)》は魔獣討伐戦で散って逝った剣士たちの娘を入団させることで作られた組織なので女性が多いのは仕方がないのだと俺は思った。


 「でも、普段、城の警備をしている僕たちがあなた方の組織に全てを任せたという意味も忘れないでください。それだけ、《今は無き最高位(ロスト・ファミリア)》はあなた達の力を信頼をしていることを」


 そう言い終えた後、クレイは城の階段を降り街へと駆けて行った。

 一人残された俺は辺りに誰もいないことを確認した後、先ほどの探索の続きを始めた。


 「一回りするだけでも、結構時間がかかりそうだな」


 俺はまだ城の三分の一も歩いていなかった。


 「うん?」


 少し進むと、庭園の様に入り口がアーチになった場所を見つけた。中に骨子がありそれを伝うように茨がそれをかたどっていた。


 「一応、入ってみるかな?」


 俺は警備半分・興味半分でその場に足を踏み入れた。きめ細やかな煉瓦で出来た道を歩いていると、ほのかに花の香りが漂い始めた。先程の入り口もそうだが、どうやらここは城の保有する施設の一つ_《薔薇庭園》なのだろう。


 「ここが出口か?」


 しばらく、茨で出来たトンネルを歩いていると、いつしか大きな円状の広場に出ていた。辺り一面、深紅の赤で囲まれたその場は無数の薔薇が咲き誇り、不意に吹いた突風にその花びらが空に上がってゆく、雨の様に降り出した。


 「風景画はあまり描かないけどこれは記憶に留めて置きたいな」


 そんなことを一人、言っていると後方から足音が聞こえた。

 次第に近くなるその音はどこか落ち着いた足取りで軽やかに感じられた。


 「あなたは剣士様ですか?」


 声が聞こえた方に振り返ると、そこには金色の長い髪を風になびかせた少女がいた。いや、この感じを少女と例えるには少し違った。


 「あっ、えっと、そうだけど。君は?」


 俺が尋ねると金髪の少女は左手を胸に置き言葉を発した。


 「私はこのセレクトリアの国を統治し見守る者と言ったら良いでしょうか?」

 「____」


 嘘を言っているように見えなかったその様子に俺は声が出なかった。


 「ふふ、ごめんなさい。少し、からかっちゃいました・・・・・・」

 「えっと・・・」


 何をどう聞いたら良いのか分からなった俺は思考を回転させ次の言葉を模索するが、それよりも先に少女は声を発した。


 「私はセレクトリア=ルル このセレクトリアの女王です」


 満開に咲き誇る薔薇の花を背景に金髪の少女はそう言った。


 「_____」


 俺は目を見開き、息が止まった感覚に陥る。

 今まで《セレクトリア》という単語を散々聞いてきて、慣れたはずだったそれに俺は今こうして、精神的スタンをくらっている。剣士である以上、《守る》ということは必然的な物なのは分かっていた。しかし、俺の思っていたそれは街の人に向けられており王という国、全ての《1》という存在は全くの盲点だった。

 今こうして、セレクトリアの《絶対》と出会ったことに俺は何をどうすれば良いのか分からず、完全に自分の立場を見失ってしまっていた。


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