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Last Rotor - Resurrected as Kit -  作者: キット
An angel who has descended of Starry Night.
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episode 14 【After Innocence day】

 「____これだ!」


 俺は店に入ると、真っ先に視界に入ったペンを手に取った。運命、それとも宿命か、手に持ったそのペンは俺の指に違和感なく収まった。現実世界に置いてきた、アナログ用のシャーペンと形は違えど、それを見つけた時、電光石火の様な衝撃が俺を襲った。


 「____確かに受け取った。今度は君が俺の思いを形にしてくれ」


 俺は小さく手に握った、ペンに語り掛ける様にそう言った。


 「紙はこれとかどうかな?」


 レイスが持ってきたのは紛れもなくスケッチブックだった。ざらざらとした肌触りと厚みのある感触に俺はアナログの良さを改めて痛感した。


 「それでいいよ。ありがとう レイス」

 「どういたしまして」

 「それじゃあ、これからは外でも描けるってことだな」

 「そうだね」


 店で商品を購入した後、俺達はセレクトリアにある公園に来た。辺り一面が緑色の絨毯でそこを歩くと、柔らかな感覚が足に伝わる。


 「じゃあ、早速____」


 俺は二度、右手の開閉をし、それを慣らした。

 次に買ったばかりの《大切》を手に取り、白い可能性に落としていく。


 シャッ_シャッ_何かを払う様な音を奏でながら俺は筆を走らせる。

 右手は基本的にそれを離さず、左手は盤面を時折、傾け、描きやすい向きに変えた。

 しばらくやっていなかった、アナログ描きに俺は新鮮さと間違えられないという緊張感を同時に覚えていた。でも、今はそんなことさえも、絵を描く際の楽しみなのだと思えた。


 しばらく、沈黙という名の集中力に身を任せていると、やがてそれは出来上がった。


 「____終わった」


 声を発したと同時に俺はゆっくりと息を吐いた。絵描き中はほとんど息をしていなかったのだろう。妙な息苦しさがそれを境に消えた。


 「白黒なのにここまで出来るんだ」


 絵を見たレイスが「わぁっ!」と言う声が伝わってきそうな表情をした。


 「ペンで描くのは初めてだけど、やれるだけやってみたよ」

 「初めてなの!?」

 「うん」


 言っていることは間違いではない。だが、それはあくまで今の状況を指すのであればの話だ。アナログ描きは普通はシャーペンなどの消しゴムで消せる、ペンを用いて行うもので、今の様に最初から消すことのできないインク式のペンで描くのは初めてと言うだけの事だ。


 「それにしても不思議だね?」

 「何が?」

 「普通なら絶対にありえない色が私に使われてるんだもん」

 「うん?どういう意味」

 「ほら、ここ」


 レイスが指示したのはイラストの髪の部分だった。


 「私の白髪に黒色が使われてるのが不思議だなって」

 「____」


 レイスの髪色の事にまた触れてしまった。幸い、レイスは気にしていない様子だったがそれよりも俺の方がそれを気にしていた。


 「ごめん」

 「何で謝るの?」

 「また、髪の事を思いださせてしまったかなって・・・・・・」

 「私は別に気にしてないよ?」

 「そうなのか?」

 「最初のころは気にしてたけど、今はもうそれも《個性》かなって思ってるよ。それにさっき、キットが選んでくれたリボンもこの《白髪》じゃないと似合わなかったし。それを考えると、この髪も悪くないのかなって思えてきたんだ」


 レイスは俺を気づかってくれたのか、それとも本当にそう思っているのかこの答えを俺は()()知ることが出来なかった。

 _____________________________________


 「今日はありがとう」

 「俺の方こそ、ペンとかいろいろ買ってくれて ありがとう」

 「それくらい普通だよ?専属の絵描きさんに描いてもらえるならそれくらい別に」


 家に着いた俺達は一階の広間に腰を下ろしていた。


 「何か淹れてこようか?」

 「頼めるかな?」

 「紅茶とかでもいい?」

 「何でも大丈夫だよ」


 しばらくすると、ほのかに花の香りがした。


 「口に合えばいいんだけど」


 黄金色をした、液体がティーカップの中で揺らいだ。


 「_はっ!」


 口に含むとその芳醇な味わいと絶妙な温度に思わず目を瞑って一人、黄昏てしまっていた。


 「どうかな?」

 「この紅茶って高価な物だったりする?」

 「一応、セレクトリアでは知らない人がいない程、有名なブランド品だけど」

 「なるほど、だからか」

 「《名家 スレイシア家》が買い取ったハーブ園のハーブを使った紅茶は貴族や王族と言った、上位階級の人たちの間ではかなりの評判だよ」

 「すごいな・・・」


 それしか言葉が出なかった。


 夜も本格的になり、そろそろ就寝の時間だろうと思った頃、突然、家の扉を叩く音が聞こえた。

 俺が最初に玄関へ行こうとするが、それをレイスは静止させ、「私が行く」と言い、一人玄関へと赴いた。


 「夜分遅くにすみません ここは純白の剣姫(リリィ・ソードダンス) 副団長_レシウル=ロイ様のご自宅でよろしいでしょうか?」


 レイスが扉を開くとそこには、丈長の青いコートに身を包んだ金髪の青年が立っていた。歳は俺と差程、変わりはないと思われる。


 「間違いはありませんが、あなたは?」

 「紹介が遅れ申し訳ありません。 僕は王国直属の組織_《今は無き最高位(ロスト・ファミリア)》の剣士_クレイ=スペシャリティです」

 「王国直属・・・それで クレイ、そんなあなたがこんな夜遅くに何の用ですか?」

 「僕は本日、このセレクトリア市内の警備の任務当たっているのですが、その途中、レシウル様の家の前を通りかかり、伝えておかなければならない事があったことを思い出しここに来た理由わけです」

 「それはどの様なものですか?」

 「連日多発している、《少女誘拐事件》についての進展です」

 「進展?また何かあったの?」

 「本日、新たに三名の少女の遺体が見つかりました。それも、遺体は新しく、恐らく今日、殺されたのでしょう」


 クレイのその発言を聞いた瞬間、その場は震撼した。


 「それで、少女たちの身元は分かったのですか?」

 「幸い、どの少女の親にも通達は出来ました・・・事後ですが」

 「新たに三名・・・・・・これはもう、組織の人間を総動員して捜査に当たるしか・・・」

 「それについては話は出ています。僕の所属する_今は無き最高位(ロスト・ファミリア)、レシウル様の所属する_純白の剣姫(リリィ・ソードダンス)この二つの組織が加われば、事件解明に大きく近づくと思います」

 「どちらも王国直属の組織だから、無理ではないと思うけど・・・すぐにとはいかない」

 「そうですよね・・・ましてや、僕は組織の一部、レシウル様の様に副団長と言う階級をお持ちの方の考えなら聞いてもらえるのではないでしょうか?」


 レイスはその話を聞いて、しばらく黙った。


 「一応聞 団長に聞いてみるけど、承諾されるとは断言できない。それに、そちらの団長さんはどうなの?」

 「そうでした・・・」

 「まぁ、取りあえず聞いてみる」

 「そうですか!ありがとうございます」

 「用が済んだのなら、任務に戻った方が良いんじゃない?」

 「あ、そうでした。それでは今は無き最高位(ロスト・ファミリア)_剣士_クレイ=スペシャリティこれにて退散させてもらいます」


 クレイと名乗る青年は敬礼しながらそう言って、玄関を出て行った。

 そして、突然の訪問者が帰った後、レイスは再び、俺の居る場所に戻って来た。


 「今は無き最高位(ロスト・ファミリア)・・・レイスの組織との関係性はどんな感じなんだ?」

 「同等かな?でも、階級の差は組織外でも注意されてるから、今のは単に階級の差ってこと」

 「なるほど____はっ!」

 「どうしたの キット!?」

 「まだ、クレイはこの辺りにいるかな?」

 「いると思うけど、どうしたの?」

 「一つ、聞いておきたいことがあるんだ・・・!」


 そう言い残し、俺は玄関を飛び出した。

 辺りは暗く、灯り一つ持たずに駆け出した俺の視界は限りなく闇に近かった。


 (まだ、遠くには行ってないはずなんだけど____いた!)


 「クレイ!」


 俺は前を歩く、金髪の剣士に声をかけた。


 「えっ_?」


 不意の登場にクレイは驚きのあまり、腰から剣を抜き払った。


 「____回避」


 それを俺は軽く、交わしもう一度声をかけた。


 「敵じゃないから、その剣を鞘に戻してくれ」

 「あなたが敵ではないという証拠は?」

 「証拠になるか分からないけど、俺は純白の剣姫(リリィ・ソードダンス)_副団長_レシウル=ロイの傍付き剣士だ」

 「傍付き剣士・・・まさか、あなたは以前、修練場で剣銃_ディーセルシ=ラニと戦い剣を壊されながらも砕かれた破片を巧に使い、試合のルールを逆手に取って、相手の武器で決着をつけた、あのキット=レイターさんですか?」

 「そうだけど・・・」


 (説明が長いな・・・・・・)


 「分かってもらえたかな?」

 「はい。先の無礼をお許しください・・・」

 「別に怒ってないよ」

 「寛大なお心遣い感謝いたします」

 「そんなに堅苦しい言葉使わなくてもいいのに」

 「では、どのように?」

 「友達と話す感じでいいんだよ」


 俺の言葉を聞いて、クレイは「本当にそれでいいんですか?」と納得のいかない表情をしていた。


 「じゃ、じゃぁ、キット、君が聞きたいことは何だい?」

 「少女の遺体の状況を知りたいんだけど、分かるかな?」

 「あぁ、それですか・・・少し言うのには気が引けますけど・・・・・・どの遺体も心臓が欠損していまして・・・心臓が無くなた少女は壊れて遊べなくなった玩具おもちゃには興味がない言いたげに路地に投げ捨てられてまして・・・・・・犯人はそんなことをして、よく心を保っていられますよね?」


 俺はこの情報を以前、街の貼り紙で見たことがある。しかし、何故、犯人はそこまでして《心臓》にこどわるのだろうか?《人体収集家》というものを俺は聞いたことがある。しかし、今回の事件はそれとは少し違った感じがした。あくまで俺の俯瞰的な考えなので断定はできないが。


 「心臓・・・か。それで、他には何か情報は無いのか?」

 「そうですね____これは偶然かもしれませんけど、どの少女も年齢が同じだったんですよ」

 「年齢が同じ・・・?」

 「七歳ぐらいだと、僕は聞いてますが。今日、発見された少女達もそうでした」

 「偶然とは言い難いな」

 「あ_!」

 「どうした、クレイ?」

 「後、もう一つ、言い忘れていたことがありました」


 クレイは何かを急に思い出したように口を開き。俺の言葉に返答を返した。

 この事が《連続少女誘拐事件》解明を急速に進めることになることを俺は確信することになる。


 「なんだ?」


 先程までの会話と同様に俺は聞き返した。返ってきた言葉は推測と憶測が入り混じった不確かな解釈だったが俺にはそれが真実の様に思えて、思わず心を塞ぎたくなった。


 ____王国直属の医療機関の鑑識の結果、少女から奪われた心臓はどれも確実な殺人を行うためだけに狙ったのではなく、その部分だけを的確に摘出したかのようだったと。

 ____まるで、専門的な知識を持った者の犯行だと思わされてしまったそうですよ____。

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