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Last Rotor - Resurrected as Kit -  作者: キット
An angel who has descended of Starry Night.
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episode 12【Second part】

 記憶に真新しい大通りをしばらく歩くと、以前来たことのある場所に出た。


 「確かこの辺りだったよな、ウィックに出会ったの?」

 「私はほぼ毎日会ってたけどね」

 「それはそうだけど」

 「今日は休日だし、ウィックも路地から飛び出てくることはなさそうだね」


 レイスは少し寂し気にそう言った。


 「でも、家の場所は知ってるんだろ?」

 「ここから少し歩いた場所に診療所があるの、そこがウィックの家だよ」


 ウィックの父親_リフは医者で妻を早くに亡くし、娘と二人で暮らしている。一度、リフと会話をしたことがあるが表情からも分かる様に非常に優しく、話し手に回っても聞き手に回っても、上手く立ち回れるであろう。


 「ここだよ」


 レイスが向けた視線を辿るとそこには、並立して建てられている家々とさほど変わらない大きさの診療所があった。個人診療所といった造りのそれは入り口に何気なく置かれていた、花瓶と建物を囲むように敷き詰められた芝生が自然の安らぎを辺り一面にもたらしているようだった。


 「イメージと随分違うな・・・もっとこう白いのかと思ってたんだけど」

 「白い?何そのイメージ」

 「俺の世界じゃ病院は大体《白》ってイメージが強いんだ」

 「そうなんだ。でも、国の医療機関はそんな感じだよ」

 「そうなのか?」

 「うん」


 ガチャッ


 俺とレイスが診療所の前で話していると、扉を開けるよりも先に内側から開けられた。


 「それじゃ、先生 今日はありがとうございました」

 「いえ、医者として当然のことをしたまでです。また、何かあればいらしてください」


 聞こえたのは老人の声と聞き覚えのある男の声だった。


 「あ!レイスちゃんにキット君じゃないか。こんな日にここに来るって何かあったのかい?」


 リフは俺達に気づくや否や驚いた表情を見せ、次に心配そうな声で質問してきた。


 「そうじゃないです。今日はその、ウィックと遊ぶ約束をしてたんで」


 レイスは事の発端を簡潔に告げる。


 「そうなの?でもいいのかい せっかくの休日をウィックの為に使ってくれて」

 「休日だからですよ。いつも、あんな笑顔で私に元気をくれるのに何もお返しが出来てなかったので、それに単に遊びたいんです」

 「そうなんだ。ありがとう、レイスちゃん それにキット君」


 話を聞いてリフは微笑ましい顔でそう言った。


 「そう言えば、リフさんは休みの日も診療してるんですか?」


 俺はリフに聞いた。


 「あー、でも午前中だけだけどね。流石に僕も休まないと体がもたないよ・・・」


 リフは苦笑いをしながらそう言った。


 「ま、僕の事はいいから ウィックの所に行ってあげて、凄く喜ぶと思うよ」

 「リフさんは仕事の方は大丈夫なんですか?」


 レイスがリフに患者の事も含め質問した。


 「今の患者さんでちょうど終わりなんだよ。後は今日の仕事の後処理と器具の手入れをすれば僕の仕事は終わりだよ。だから、レイスちゃん達も僕の事は気にしなくていいからね?」

 「分かりました」


 俺とレイスはリフの仕事の邪魔をしないように足早に二階へと上がった。ウィックの部屋は階段を上がって突き当りにあり、部屋の中からウィックの声が微かに聞こえてきた。どうやら、年頃の少女に見合った遊びをしているのか、一人二役と言った声の立ち回りをしている。


 「ここだよね?」

 「声もするし、当ってると思うよ」


 トントンッ


 レイスが扉をノックすると、ガタッという音が聞こえ次に扉に駆けよってくる足音がする。


 「お父さん、お仕事早く終わったんだね!早く遊ぼーーーー!____っえ?」


 満面の笑みを浮かべ、レイスに抱き着くウィックは体に伝わる細身の体格と頭に感じた柔らかな感触にすぐにお父さんではないことに気づき声を止めた。


 「・・・レイスお姉ちゃん?」


 ウィックは信じられないと言う表情と何故ここに居るのと言いたげな声色を発した。


 「この前、約束したでしょ?遊びに来るって」

 「あ、そっか!約束守ってくれたんだね、ありがとう レイスお姉ちゃん!」


 今度は相手を確認したうえで、ウィックは笑顔を向けた。


 「俺も来たけど良かったかな?」


 俺はなんとなく感じた御呼び出ないと言う空気に耐えかね、質問した。


 「うん、キットお兄ちゃんも来てくれて嬉しいよ!ありがとう」

 「それは良かった、こちらこそ、歓迎してくれて嬉しいよ」


 自身の必要性を確認したところで俺とレイスはウィックの部屋に入った。


 「ウィックは何がしたい?」


 レイスがウィックに希望を聞いた。


 「一人じゃできないことがしたいかな?」

 「一人じゃできないこと?うーん・・・思いつかないな・・・それより、ウィックは部屋と外、どっちで遊びたい?」

 「外がいいかな?でも、お父さんに止められてるんだよね・・・・・・」

 「何か、外に出たらいけない理由でもあるのか?」

 「ウィックがつらい目に合うからダメだって」


 俺の質問にウィックは疑問が残る回答をした。仮にこの返答に意味を持たせるのだとしたら、一番有力な理由は《少女誘拐事件》だろう。連日、起こるこの事件にリフは娘の危険を感じたのは言うまでもない。その考えはまったくもって道理が出来ている。しかし、今は仮にも剣士が二人いる。俺やレイスが傍にいればリフも外に出ることを許可してくれるのではないのだろうかと俺は思った。


 「それって俺達が一緒でもダメなのか?」

 「うーん・・・聞いてみないと分からないかな?」


 今のウィックの感じだと完全にダメと言うわけではないのかもしれない。


 「だったら、聞くだけ聞いてみようよ」

 「だな」


 もしかしら外出できるかもしれないという雰囲気にウィックは嬉しそうにしていた。


 「私たちこれから街に出ようと思うんですけど、ウィックも連れて行ってはダメですか?」


 俺達はウィックを連れて一階に降り、リフの診察室に来た。決して広くはないが整理が隅々にまで行き届いており、掃除もしっかりと行われていた。衛生面はまず、心配ないだろう。それに、綺麗なのはこの診察室だけでなくこの建物の室内全てに人の手が行き届いている。


 「ウィックは外に出たいかい?」


 少し困った表情でリフは聞いた。


 「できれば、レイスお姉ちゃん達と街に出たいな」

 「・・・・・・仕方ないなぁ、いいよ。楽しんでおいで」


 リフは娘の気持ちに応える様にそう言って笑って見せた。


 「ありがとう!お父さん」

 「でも、一つだけ、約束を守って欲しいんだ」

 「何?」

 「いくら、楽しくてもあまり走っちゃだめだよ?」

 「分かった」

 「よしっ!それじゃあ行っておいで」


 リフは赤髪の少女の頭に手を置き優しく撫でた。


 ウィックは部屋に戻り身支度を整え、一階に降りてきた。俺達はそれまでリフと雑談をしながら待っていた。


 「お待たせ」

 「それじゃあ、行こうか?」

 「うん!」


 二つ返事で玄関を出る、レイスとウィック。俺もそれに続いて、出ようとした時、リフに呼び止められる。


 「キット君 少しいいかな?」

 「えっ?俺に何か用ですか?」

 「君に聞いておきたいことがあるんだ」


 リフは俺に何を聞きたいのか、そして何で今なんだということを思っていた。


 「でも、俺達 今から____」

 「____それは、《君にとっての命》よりも大事なことなのかい?」


 返答を言い終えるよりも先にリフは俺の耳元に詰め寄り、囁く様にそう言った。

 

 「________えっ」

 (取り込まれるようなこの口調の変化はなんだ・・・!?)


 一瞬時間が止まった。呼吸と脈、体の機関がある一定の地点に辿り着いた時、その全てがずば抜けて羽上がった。


 (一体どこで・・・!?一体どこでその情報を知りえたんだ____)


 「・・・・・・どうかな?」

 「・・・分かりました」

 「僕は嬉しいよ、さっ僕の診察室で話そうか?」

 「はい、どこでも構いませんよ」


 この時の俺は自分が分からなくなっていた。レイスとの楽しい日々に刺さる刃物。少しずつ色づいてきていた日常(キャンバス)に黒の絵の具を落とされた様な濁った心が俺を侵食していく。リフは鼻からこれが狙いだったのではないかと思わされるようにクリティカルヒットした言葉に俺は感情を失い、男の言われるがままに行動をしていた。


 「レイス 悪いけど、先に行っといてくれ」

 「何かあったのキット?」

 「____別に何もないよ、リフさんに呼ばれててね」

 「リフさんに?それなら、待っていようか?」

 「いや、大丈夫だよ。俺も、終わったらすぐにそっちに行くから」


 そう告げると、俺はリフの待つ部屋へと歩みを進めた。

_____________________________________


 「____それでどこまで知ってるんですか?」


 診察室の備え付けられている椅子に座った俺は目の前の男に感情を込めず質問した。


 「そんなに硬い表情をしなくてもいいよ。僕だって君をどうにかしようって思ってないんだからね?」

 「・・・・・・」

 「君がどう思うかは今の僕には分からないけど、僕が知りえるのは君には明確な命ではなく、()()()()()()()が存在するのではないかと言う仮説だけだ」

 「仮説?」

 「まぁ、それも今となっては真実なんだけどね」

 「____まさか、俺の行動で判断したと____」

 「心の病気って知っているかい?人の手で治すことで出来ない、自分自身の変わりようで直すことが出来るモノさ」

 「____何が言いたいんですか?」

 「おっと、話がそれてしまったね 僕はここで病気の治療はもちろんの事、心の治療もしてるんだ。だから、君のちょっとした表情の変化や()()()()でその人間の精神状態をある程度くみ取れるんだ」


 (まさか____あの時の握手で分かったのか・・・!?)


 「だから、俺に鎌をかけてみたと」

 「悪いけどそうさせてもらったよ。どうしても、君という人間に興味が出てきてしまってね」


 完全にリフのペースに乗せられている。俺と言う存在を今もこうして、言葉と言う力で操ろうとしているのは目に見えた。誘導尋問とも取れるこの心理戦に俺は自ら足を踏み入れ、その先に進んでしまっていたらしい。


 「その興味はあなたに何をもたらすんですか?」

 「《共感》さ」

 「共感・・・?」

 「理由は分からないけど、君はあのレイスって子に何かを捧げているように僕は見えてね。大事な物の為に自分を犠牲にしているその様に・・・ね?でも、これは僕の()()に過ぎないけどね」

 「()()()()同じだと言いたいんですか?」

 「その感じだと、本当のようだね。あぁ、僕は娘の為ならこの命に代えても、そちらを優先するつもりだよ」

 「あなたのその考えは親として普通だと思いますけど」


 俺は自分の考えと他人の考えをひとくくりにされたことに怒りを感じていた。


 「そうだよ。だからこそ、それは誰にも邪魔されちゃいけないんだ」

 「そろそろ、本題に入ってもらえませんか?」


 今までのリフの態度とは違った、その態度に俺は終わりを告げるべく話の核を突くことにした。


 「あぁ、そうだね。じゃあ単刀直入に聞くけど 君は________」

_____________________________________


 街は賑わい、人の多さもいつもり多く感じられる。

 そんな、人込みの中を白髪と赤紙の少女は歩いていた。


 「ウィックはこの辺り来たことある?」

 「あるけど、あんまりないかな」

 「そうなんだ。なら、今日はいっぱいいろんなところに行こうね?」

 「うん・・・・・・」


 普通なら喜ぶはずの提案にウィックは何故か俯いたまま返事をした。この感じにレイスは心配していた。


 「どうかした?」

 「えっとね・・・私、今日外に出られて嬉しいんだけど、何故か寂しいんだよね」

 「それはどうして?」

 「前、来たときは友達と一緒だったんだけど、最近は遊びにも来てくれなくなったんだ・・・」

 「お友達は病気にでもなったのかな?」

 「ううん、多分それはないと思う。だって、凄く元気な子だったもん」

 「・・・レイスお姉ちゃんにはその友達の事は分からないけど、それも一時的なモノだと思うよ?」

 「何で分かるの?」

 「・・・・・・うーん」


 レイスの理由もない返答と考えている時間でウィックは察したのだろう。


 「レイスお姉ちゃんも曖昧な事を言うんだね・・・」

 「・・・え?」

 「お父さんも、同じようなことを言ってたから」

 「リフさんが?」

 「うん」


 完全に遊ぶようなテンションではなくなった二人はただその場に立ち尽くし黙り込んでしまった。


 「それに、レイスお姉ちゃんは今ここに居ない」


 最初に沈黙を破ったのはウィックだった。


 「うん?」


 レイスはウィックの言った意味を考えた。


 (以前、ディセルに似た様な事を言われたっけ・・・・・・)


 「レイスお姉ちゃん、何か気になる事でもあるの?」

 「ウィックには誤魔化せないか・・・実はキットの事が気がかりでね。リフさんと何を話しているのか少し、気になって」

 「そうなんだ」


 ウィックに本音を告げると赤髪の少女は口元を微笑ませ。言葉を発した。


 「今日はありがとう。私はもういいよ」

 「え?まだ、全然遊んでないのに?」

 「本当の事を言うと、もう少し街を歩きたかったけど、レイスお姉ちゃんの事が大好きだから。そんな、顔をしてほしくないから、今日はもう帰ろう?」

 「ウィック・・・・・・ありがとう。でも、もし キットがこっちに来たら、まだ遊ぼうね?」

 「うん」


 しかし、そんな期待も裏切られ、二人の少女はリフの個人診療所の帰路に着いた。まだ、朝だというのに落ちた気持ちのせいか何もかもが鈍く感じられ、自然と力が体から抜けていた。その感覚は霧を晴らすように、すぐに溶けいつもの感覚に戻ったのだが、それでも何か違和感の様な気がかりだけが胸に残っていた。

 この時の感覚は扉を開けて、数秒で解明されることになることを数秒前の私はまだ知らなかった。


 「じゃあ、入ろっか?」

 「うん」


 レイスは扉を開けて中に入った。


 「じゃあ、私は一旦部屋に戻るね」


 ウィックはそう言って二階に上がって行った。


 (キットはどこにいるんだろう?)


 レイスがキットの居場所を考えていると声が聞こえてきた。運命のいたずらなのかそれとも____。

_____________________________________



 ____あぁ、そうだね。じゃあ単刀直入に聞くけど 君はその右腕が後二年で使えなくなることに気づいているかい?____


_____________________________________



 耳に届いた、その言葉にレイスは深い悲しみと罪悪感、そして、言いようのない思いが胸の内から込み上げてきた。 

 それからの記憶は薄々だが思い出せた。診察室から出てきたキットの感情の入っていない表情と「レイス 今日は帰ろう」と言う一言。その言葉に私は同意するような返答を返したのだろう、気づけば自室のベッドに横たわっていた。

 顔にかかる白を私は青い瞳で見つめていた。


 キットは分かっていたのだろうか、それとも今日知ったのだろうか?

 そもそも、その事実は真実なのか?


 ____と、思考はそれを《本当》にしまいと曖昧な疑問を無数に生み出していた。


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