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Last Rotor - Resurrected as Kit -  作者: キット
An angel who has descended of Starry Night.
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episode 10【Second part】

 ディセルの目を見た。俺から見て斜め左下を見つめるその目に俺はある仮説を立てる。今度は剣ではなく俺の左足を狙っている____と。


 バンッ!


 「嘘っ____」


 予想は外れなかった。弾丸は俺の左足を確実に狙っていた。しかし、先にそれに気づいた俺は絶命ブレイク間近の剣を左足の前に重ねた。鳴り響く金属音、振動する腕。


 「____」


 (何で?私の動きが分かったの!?アイツの行動は確かに読めていた。だから、手っ取り早く動きを止めるために足を狙ったのに)


 ディセルは目の前で起こったことを理解できなかった。


 「命拾いしたわね?それで、その今にも壊れそうな剣で何ができるの?」

 「____」

 「何か言いなさいよ!・・・それとも気づいたの?剣じゃ銃には勝てないって」


 俺は言葉を発しない。次に俺は行動のリズムを変えた。今までディセルの周りを円を描くように駆け回っていたが今度は一気に攻めに入る。


 キッ!


 足にグリップをかけ、ディセルの方へ駆ける。銃に向かって行く。自殺行為とも取れるその行為にディセルは「何を!?」と言った表情をした。視界に映るのは脳天にしっかりと照準が向いた銃口と黒い蝶。引き金を引かれれば確実に終わるこの状況でも依然として走る。視界の横を風の流れの様に景色が過ぎていく。


 (この距離ならまだ____当たる)


 ディセルは照準を剣を持つ右腕に変えた。剣を壊せば、何の心配もないのだが今のキットは剣を壊したところで他の何かで応戦してくるのではないかという、強迫観念がディセルを覆っていた。土煙を起こし、視界をさえぎったこと、狙いがバレ、防がれたこと。今まで経験したことのない戦いがディセルの戦闘心ポテンシャルを根底からくつがえしていた。


 (これなら、絶対に________)


 その時、ディセルはあることに気づいた。


 (何でアイツはあんなに速いんだろう。動きが追えないわけではないそれでも____)


 この疑問はディセルの先天的な何か故の疑問だった。銃を使うきっかけを作ったのもそれで、武器を十分に扱る様にしているのも《それ》だった。本来なら一瞬で勝負がついてもおかしくないはずの戦い。それなのに今もこうやって、弾丸数を減らされている。トリッキーな戦闘をする、相手に自らのリズムが崩されたせいなのかもしれないと、ディセルは思った。例え、そうだったとしても今まで幾度いくどとなくあらゆる戦闘をくぐりに抜けた私なら、既に慣れているはずだった。だから、今のこの戦いはどこかおかしいと思ってしまう。

 恐らく、それはあることが原因なのだろう。

 それは____


 ____何で、私は《魔眼(オッド・アイ)》を発動していないんだろう____ 


 ディセルは瞳に宿した、先天性の特徴に意識を向ける。しかし、それは発動どころか存在自体が確認できなかった。


 「嘘・・・でしょ・・・・・・?」


手足が付いているように当たり前の事が無くなった喪失感にむしばまれる。


 (このままだと、距離を詰められるっ・・・!確かに私の魔眼はさっきまで発動していた。それも、アイツの雰囲気が変わるまで____)


 「まさか・・・」


 ディセルは今にも崩れそうになっている剣を握り、駆けよってくる剣士キットを見た。低姿勢で風の抵抗をできるだけ、減らしながら走るその様はまるで疾風。そんな、姿を見たディセルは次に確認しておくべき部位パーツを視認する。長く風になびく前髪の下に隠れる、キットの瞳だ。


「その色は・・・!?____もしかして【蒼眼の瞳】だと言うの?あり得ない・・・!」 


 驚いている場合では無いことぐらい、ディセルは分かっていた。それでも、目の前で淡く揺らめくように輝く蒼に完全に気を取られていた。

 この一瞬のすきがディセルの勝ちを逆にした。


 「えっ____」


 意識を銃に向け、照準を合わし直した瞬間____


 パリィンッ!


 バンッ


 何かが砕けた音が鳴り響く。その衝撃で引き金が引かれる。

 ディセルの()()に持っていた銃が宙に舞う。それに伴い、彼女の体も大きくる。後方に倒れゆく、自身の体。その時、ディセルは視界に入る黒髪の剣士を見た。


 (その瞳・・・やっぱり・・・・・・。あんたのその力は私やレイスの《天使権限》_いや、団長セリカの権限まで越えるというの・・・!?)


 地面に尻もちをついた衝撃でディセルは「あうっ」と一瞬息が止まる。そして、次に目を開けた時、空を見た。銀色に光る、破片がひょうの様に降り注ぐ。土に時間差で次々と刺さりいつしか、それは止んでいた。


 「これでお前の武器はない。負けを認めてくれないか?」


 完全ではない蒼い瞳を宿した少年が少女に声をかける。しかし、少女はそれに応じる素振りを見せない。


 「何を言ってるの?あんたも、武器が無いんだから、ここから格闘勝負にでもする?そうしたら、キット あんたにも勝ち目はあるかもしれないわよ?」


 精神面、そして技術面で負けたディセルは「もうどうなったていい」と言いたげな表情でそう言った。


 「それもいいかもな」

 「・・・でしょ?散々、あんたを馬鹿にしてきた女を痛めつけることのできるチャンスよ?もっと、喜びなさいよ。腹部を殴って、もだえ苦しむ姿とかみたいでしょ?」

 「確かにそれは《R指定》のイラストとしてはぴったりだ。だが____」


 俺はそれよりも、ディセルに完璧な敗北を味合わせようとある行動に出ようとした。だが、その行動はディセルの想定外の攻撃で阻止される。戦意喪失と言ったわけではないがディセルは確実に負けを自覚している顔だった。だが、「これで駄目ならね」と言った言葉が聞こえそうな程に繰り出された切り札は俺とディセルとの間合いを数メートル空けた。


 サッ!


 「レイスから聞いてない?私は銃を使う剣士____つまり《剣銃》使いなのよ」

 「____っ!」



 ____確認なんだけど、ディセルは《ケンジュウ》使いだから____


 脳裏に蘇る、レイスの一文。



 「まっ、懐に隠せる大きさだから剣とは言いにくいわね?短剣と言ったところかしら」


 (どうする?俺には武器はない。それに唯一の勝利への道筋が断絶した。なら____)


 俺は砕け地面に刺さった剣の欠片を出来るだけ集め、後ろに数回ステップした。


 「後はこれをどう使うかだな」


 ディセルの視点が俺だではなく短剣に向いている間に土の上に横たわる無機質を拾い、懐に忍ばせた。


 「それで、その剣の残骸で何が出来ると言うの?」

 「出来るさ、こうゆうことがな!」


 俺は手に持っていた銀の欠片を手首のスナップを効かせ、投げた。


シュッ____


 静かに風を切る刃。

 ディセルは投げられることをあらかじめ予想はしていたものの実際に行動に移されると、その思った通りになった戦況に疑問を抱く。


 (このままアイツの攻撃を全て回避すれば勝てるの?それにしても、何かおかしい)


 キィンッ________


 初撃はあっさりと弾き返される。


 「そんな攻撃が通用すると思うの?そういえば、キット あなた遠距離攻撃になってるわね?使われている剣が泣いてるわよ」

 「それはどうかな?」


 シュッ________シュッ________


 今度は二連続で投げた。しかし、攻撃は単調なせいか二回の腕の振りで意図も簡単に交わされる。残された欠片は後、わずか。ここからの勝利への方程式は自身の持ち得る、力とそれ以外の《何か》が無ければまず勝ち目はないだろう。


 (あれ?少しだけど魔眼が使えてる・・・?)


 ディセルは自分の身に特徴《魔眼》が戻ったことを体感的に気づいた。


 (今までの攻撃を弾き返せたのも、きっとこのおかげなの?でも、何で急に____)


 答えに検討もつかないディセルは目の前の敵を見た。そこには先程までの輝く様な蒼はなく、黒色と蒼色が淡く揺らめいていた。


 (まさか、アイツの瞳が関係しているの・・・?だったら、今ならまだ勝ち目はある!)


 俺の方へ一気に間合いを縮めながら走ってくるレイスに俺は残りの全てを投げた。


 「当たらない!そんな攻撃今の私には____」


 完全に自身を取り戻していたディセル。無数に降り注ぐ、銀の雨をもろともせず、刃が弾く。だが、ディセルが見たのはそんな人工的な自然現象ではなく、黒い髪の下にはっきりと見えた《蒼》だった。

 気づけば、ディセルの魔眼は完全に封殺され、動体視力は剣士並みにまで下がっていた。そんな、状況でこの戦況に自ら入るというのは自殺行為と取れた。


 サッ!


 「痛ッ____」


 ディセルの左腕を剣の鋭利が掠める。

 俺はその一瞬を見過ごさなかった。


 シュッ


 最後に残っていた、欠片を投げた。


 「うっ!」


 今度は右腕を掠めた。


 そして________


 遠距離からの____


 地面を蹴った。

 数秒も満たない速さでディセルの間合い内に入る。

 懐に隠した無機質_銃を持つ。


 ____近距離攻撃。


 カチャッ


 銃口はディセルの額に向いていた。あの時、ディセルは残りの弾丸を三発といい、俺との戦闘で二発使った。そして、今ここに最後の一発が装填されている。無論、撃たないのだが、もし、ここが本当の戦場だったら確実にディセルは死んでいる。


 「ディセル、俺の勝ちだ」

 「えぇ、そして私の・・・・・・負け・・・よ」


 完全なる敗北を味わったディセルは今までの意思はどこへやら、あの武器庫の時の様に少女らしい表情を見せていた。顔は涙で濡れ、負けたことへの悔しさからか唇を噛んでいた。流石さすがに何も言わず立ち去るのはディセルに悪いと思った俺は声をかけた。


 「今日のはまぐれだよ。ディセルが本気を出せば、俺には一瞬で勝てると思うぞ?」

 「何それ、それで慰めのつもり?言っとくけど、私は負けたなんて思ってないんだからね!今度戦う時は、もっと強い武器を使ってやるんだから」

 「次回がない事を祈るよ・・・・・・」

 「それに責任取ってもらうんだからね!」

 「えっ!?」

 「私に・・・私にその・・一生消えない傷をつけたことよ!」

 「ちょっと・・・!人聞きが悪い事を言わないでくれ!俺は別に・・・それに回復魔法で治るんじゃないのか?」

 「治るけど・・・やっぱり治らない!」

 「どっちなんだよ・・・・・・」

_____________________________________


 こうして、俺とディセルの戦いは幕を閉じた。修練場は思いもよらない結末にしばらくどよめきが続いていた。それに勝敗を告げるはずのアナウンスが自らの仕事を忘れていたことからも分かる様にこの結果は本当にあり得ない事だったのだと思った。

 ディセルに銃を返した後、俺はレイスの待つ剣士の控室へと足を運んだ。時折、すれ違う、人々の視線が俺の心をじわじわと精神攻撃してくる。こっちの方が痛みよりも辛いと俺は心で思った。後に分かった事なのだが、今日の人の多さは剣士の少女たちから情報が漏れたせいらしい。もともと、誰でも許可さえ取れば使用が認められているこの修練場だけあって、人が多いのは当たり前の様だった。それに、普段は夜の仕事をこなす、影の支配者と言われていた元 《ローゼン・ミッドナイト》のディセルが表向きに姿を出すこと自体が貴重レアだったという。


 「キット、大丈夫?」


 聞きなれた安心感のある声が心に響く。


 「少し、傷を負ったけど大丈夫」

 「見てたけど。まさかあんな戦い方をするなんてね」

 「ディセルは本当に強いんだな」

 「キットもだよ?だって、ディセルの魔眼オッド・アイをもろともしなったじゃない?」

 「魔眼オッド・アイ・・・あ、そうだった。俺はそんな反則チートと相まみえていたのか・・・・・・」

 「序盤は危なかったけど、最後の方のキットは何か【別人】みたいだったよ」

 「別人?レイスはおかしなことを言うな・・・」

 「おかしくないよ・・・でも、本当に良かった」

 「そうだな」

 「これからも、よろしくね《《傍付き剣士》》さん」

 「うん、こちらこそよろしく」

 

 俺はレイスに渡された、水を飲み少し休憩した後、回復魔法で傷をいやしてもらった。暖かな感触が肌に伝わる。疲れのせいか元から眠かった俺の体はいつの間にか意識の海へと落ちていた。


 「今日は良く頑張ったね、お休みキット」

_____________________________________


 修練場の湿っぽい通路をツインテールの少女は歩いていた。敗北を初めて味わったことと、今までに感じたことのない言葉にできない恐怖、そして、全てが事実だということを忘れるなと言うように刻まれた両腕の傷。右手に持った銃を見るだけで先程の戦いが鮮明に蘇る。あまりの気持ち悪さに発狂し、銃を投げようとした右手を左手が止める。そうして、再び歩き出した。

 彼女に語りかける者はある一人を除いて誰一人としていなかった。


 「対戦ご苦労だった ディセル」

 「セリカ団長・・・」

 「まさか、あのような結末を迎えるとは私も思っていなかったのでないささか驚いているのだ」


 壁に背を預け、淡々と語る白い髪の剣士。


 「キットにあんな力があるとは思いませんでした・・・。もしかして、団長は知っていたのですか?」

 「知っていたら、このような場を設けずともすぐに入団させていたさ」

 「そうですか」

 「今後はキット_キット=レイターをレシウル=ロイの傍付き剣士として扱うことにする」

 「異論はありません。では、私は傷の手当てがありますのでそろそろ行きます」


 羽が千切れ、地面を這っている蝶の様にその場からいなくなるディセルをセリカは何も言わずただ見つめていた。


 「最後に一つ聞いてもいいですか?」


 数歩進んだところでディセルは立ち止まり、セリカに質問をする。


 「傍付き剣士の資格試験は最低でも上級階級並みの剣士でしか受けられないはずでは?戦ってみてキットという剣士は剣を持って、まだ数日と思えたのですが。それに、副団長の傍付きとなればもっと高い階級が必要になるはずでは?」

 「あぁ、それのことか。確かにキットは剣を持って数日でまず間違いないだろう。それに、階級はこの国の民と変わらないはずだ」

 「なら、何故?もしかして、どこかの王のご子息なのですか?」

 「話が飛躍し過ぎているぞ、ディセル?」

 「では何故!?」

 「・・・・・・」

 「本当の事は教えてくれないのですね・・・・・・」

 「すまない。私もまだ、全てを掴めているわけではないんだ」

 「分かりました」

 「改めて、今日はご苦労だった。ゆっくりと体を休めるといい」

 「気遣い感謝します」


 ディセルは団長セリカの言葉に返答した後、出口へと歩みを再開した。何かを隠しているということだけはディセルにはわかっていた。だが、その内容まではどう考えても思いつかなかった。団長セリカのキットに対する、言いようのない後押しや傍付き剣士の資格試験の受願条件を無視しキットに受けさせたこと。全てが不自然すぎた。

 もし、今の私にこの疑問を解く術が既に備わっているのだとしたらそれは____。


 ____いつか、話せる時が来たらその時は教えてください。


 ____()()()()()()さん。


 去り際に放った言葉にセリカは一瞬動揺した。


 「何が言いたい」


 少し苛立ちを感じさせる声色でセリカは去り行く黒蝶ディセルにそう言った。しかし、そこにはもう、姿はなく、破けた衣服の布がヒラヒラと風に舞っていた。


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