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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

今日から学校と仕事、始まります。②莞

新世界の神様を知った住人達

作者: 孤独

ドババババババ


「あはははははは、私は神だ!神だ!!」


気、狂ったように列車内で機関銃を乱射し、なんの関係もない乗客達を殺すこと。


「この神を背いた罪だ!これは罰だ!!」


”常識”と呼べる者が備えられないでいながら、人間の利器を扱う。

銃は撃ち手を選ぶ。正しい使い方も各々次第。銃がイカレたら、次の銃を使う。今奪った人間を殺したように使い捨てる。



「この腐れきった社会を神が変えてみせよう!」


パァンッ



列車内で暴れた男は、38名の命を奪い、その最後に拳銃自殺を図ったのだった。



◇         ◇



コポポポポポ


コキュコキュ


「ふぁぁっ」


こんな農園みたいな場所だったら、コーヒーを飲んで……。それでも欠伸して……。リラックスができそうな空間だ。そう思える。彼女にとってはだ。

それでもこんな危険地帯で眠っちまいそうなくらい、退屈な時間がある。

喋る相手がいない時だ。

彼女は研究材料の調査、修正を繰り返す。



『水、水くれぇ……』

『陽の光、浴びたい……』


盆栽の鉢ならぬ、”凡才の鉢”

土の上に出ているのは人間の頭部のみ、それから下は……心臓と肺といった、人間としての活動が許される臓器だけが残り、水のみで生きていられる状態となった人間。いや、元人間達か。

植物のような状態に追いやられている人間達は、彼女達の実験台である。


ガチャッ


「すまない、遅くなったな。MS.麗子」

「ようやく話し相手が来てくれた。先にコーヒー頂いているわ、ダーリヤさん」


この人間農園の設立者、ダーリヤ・レジリフト=アッガイマン。

ロシアの軍総司令にして、人間達の進歩を望む者。

その野望、大いなる夢に、協力している1人がこの酉麗子であった。


『水、水ーー……』

『風浴びたい……』

『出して、出してぇ……』



盆栽と化した人間の頭部達が、ダーリヤや酉に話しかけてくるが、2人はまったく耳に入ってこないといった表情で話を進める。

お互いが求めているのは、人間が持っている各々の変化であった。



「私とあなたが言うのもなんだけど」


そう建前をする。



「ここにいる重犯罪者、精神異常者の、心の正常化と呼べる事をするには最低でも8回は、人間の人生を経験しないと変わらないわね」

「心と血を変えるのに、世代と時代はいくつも超える必要は聞く。妥当だが、こんなものか?」

「はははは、私もそう思ってたところ」


規律と秩序が壊れた心を、またもう一度紡ぐための研究。

名を挙げた犯罪者、異常者を対象に。安全かつ有無を言わさず、人権と呼べるギリギリのラインを残し、心の構築の研究に役立っている状況。

頭しか残っていない彼等に抵抗の声と心は挙げられても、身体を持ってしての抵抗はできない。

土の下からの部位は現実の通り、ないのだから。

しかし、


「時間と質、どっちが言いかしら?」

「両方だ」

「欲張りね。でも、即答のあなたは好きよ」


酉麗子が持ってきた、ちょっと大きめなスコープを盆栽となっている人間達につけてあげれば……


「また、来世をしてきてね」


◇           ◇




手も、足も、ある。当たり前の事だ。

それでもそこに自分が周りには映し出されていない状況。

事件から数年先を想定された駅は、乱射事件が忘れられたような綺麗な所となっていた。忘れられる事がないよう花が添えられた場所もある。何も思うわけもない。だが、これから起こってくる事に体験者は何も関与ができない。

ストップされても、地獄。されずとも、地獄。

死んで当然と何度吐き捨てられても、仕方のない事である。



プーーーーーーッ


『トランクなどの大きいケースをお持ちのお方は、改札をお通りになる前に、金属探知機、駅員による荷物チェックをさせて頂きます。ご不便、ご迷惑をかけて大変申し訳ございません』


あの乱射事件をきっかけに、列車やバスなどの交通機関にも、厳しい管理、監視のシステムが構築された。


「俺、持ってねぇよ」

「早くしてくれよ」

「ラッシュ時でもやるのかよ。もういい加減にしてくれ」


一日に何千。いや、何万。それ以上の利用者達がいて、365日を費やしても、現れる事などまずあり得ない。誰だってそう思える事をひたすら続ける。

安全、安心を生み出す事は確かに平和と幸福かもしれない。

だが、苛立ちを生むことも珍しくない。あり得ない。そんな馬鹿なと、思っているからだ。


『列車にご乗車できる人数には制限があります。また、一車両に付き、2名の警備員を乗せています』

『ご理解のほど、よろしくお願いします』


乗客もそうであるが、そのようなシステムを構築した側にも負担がある。

安全第一を優先したい。それを突き詰めれば、簡略化などできるわけもなく、人の目も機械の目も必要になる。莫大な費用と途方もない労力が必要である。

時に、そんなことが、予想を上回る技術やシステムを生むことになるが……。遥か先になるものだ。今、その途中が苦しみになっている。


「ふざけんじゃねぇぞ」

「こんな生き辛いルールが、俺達の税金でできるなんてあんまりだよ」

「死んでたら殺してぇよ」


社会は確かに記録に残る事件によって、変わるものである。

その犯罪者がやった罪、その罰を受けるのは、全てに生きる者達に届けられる事である。大なり小なり、嫌々でも人と人は繋がり、社会が出来上がっている。



「死ね」


そんな言葉は届かず、叶えようのないこと。

不便ない社会にいて、自由のない生態で、苦しみながら生かされている。



亡くなった遺族への配慮が足りていない事が、大変失礼なモノになって申し訳ございません。


事件や災害の爪痕で社会全体が変わるのはよくありますね。

いつかは、前向いて向き合うのが、1人の人間の役目でしょうか。


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