努力した僕が【魔帝】の幼馴染に幸せにされるお話
※この短編は、作者の別連載作品である、『裏切られた僕がドロドロに甘やかされるまで』のifストーリーとなっております。
この短編単体でも雰囲気は読めるとおもいますが、連載の方を読んで頂くと、より分かりやすいと思われます。
ご了承下さい。
バキッ!
「おら、もっと働けうすのろ!」
(・・・痛い。)
「“忌み子”のお前を雇ってやってんだぞ!」
ガンッ!
「せっかく給料も払ってやってるのにな!」
(・・・痛い。)
「お、おい!」
「なんだぁ?どうしたぁ?」
「終わったってよ!」
「何がだよ?」
「【邪神】討伐完了だそうだ!!」
「え?マジか!?」
「嘘だろ!?」
「おい、もう仕事はしないで、飲みに行こうぜ!」
「そうしよう!」
ガヤガヤと僕を放って遠ざかっていく喧騒。
(あぁ、今日もおわったんだ。)
(・・・レーナ。)
どうやら、【邪神】の討伐は終わったらしい。
(・・・明日からもっと頑張らなきゃ。)
倒れていた身体を起こす。
「・・・レーナ。」
そうして、僕は歩きだした。幼馴染の。
愛しい婚約者の。
【魔帝】の彼女の名前を呟いてから。
あれから一年位たっただろうか。
【英雄】パーティーの半数の故郷であるこの村に、今日“彼ら”が帰還するらしい。
昼間から、村の入り口の門に村人達が群がっている。
村、といっても八百人位いるものなので、門までの道のりが埋まってしまっている。
僕は・・・近づきたくないから、静かに隠れてみていることにした。
夕陽がじきに沈む、という頃だ。
一介の村人である僕には、まるでキラキラと光って見えるような豪奢な馬車が村に向かってきた。
その馬車の窓からチラリと見える、見覚えのある赤髪。
「ッーーーー!」
叫ぶことはしなかった。
でも、叫びたかった。
あぁ。無事で帰ってきた、彼女。
良かった。・・・本当に良かった。
思わず涙が溢れてしまう。
途端、沸き立ってくる不安。
(本当に僕と一緒に居てくれるのか?)(ただの村人と【魔帝】様が?)(そもそも、僕はレーナを迎えられるのか?)(お金なんて少ししかない。)
(やっぱり、貴族様とかにお身請けしてもらう方がいいのかな。)(でも・・・。)
(選ばれたいなぁ・・・。)
「ミル!!」
唐突に後ろから響いてくる声。
明らかに早すぎる。
でも、ずっと聞きたかった、彼女の声。
(・・・痛い。)
胸が痛い。目から涙が溢れる。けれど、身体は振り向こうとしてくれない。
「ミル!!聞いてるの・・・って、酷い格好してるじゃない!」
「レー・・・ナ。」
ようやく絞り出せた一言。
でも、レーナはそれにすら反応しない。
「動かないで。【聖女】様程じゃないけど」
小声で何かを唱える彼女。
淡い緑色の光が僕を包んだ。そう認識した直後には、僕の身体にあった大小様々な傷が綺麗サッパリ無くなっていた。
「ミル。この傷はどうしたの?」
「レーナ。僕は、「答えて!!」
「・・・働いたんだ。」
「何をして?」
「建築作業だよ。」
「・・・こんな量の傷は、普通建築作業じゃ付かないと思うんだけど?」
「・・・。」
「やっぱりこの村は・・・駄目ね。」
また何かを唱える彼女。
視界が閃光に包まれる。
まばたき直後に見た景色は、僕の知っている村じゃなかった。
人、人、人。
夜であるのに、その活気は衰える事を知らないようだ。
屋台に店、宿。全てに灯りが灯っていて、そのすべてから騒ぐ男たちの声が聞こえてくる。
それよりも目につくのは、30メートルはあるであろう大きな壁。
そう。
おそらく王都と呼ばれているところだろう。
その景色を、ガラス一枚隔てた部屋の中から僕は見ていた。
「うん。荷物は私が持ってくればいいから、ミルはここで待っててね。」
連れてきた犯人は悪びれる様子もなく、あの村に戻ろうとしている。
ようやく振り向いてくれた身体。
すぐにレーナに向き直って呼び止める。
「ま、待って、レーナ!」
「ん?どうしたの?」
「こ、ここはどこなの?」
「あぁ。王都にある私の家だよ?」
「何で?」
「んー?それはね、」
「ミルを二度と傷付けさせないためだよ?」
「・・・でも、僕がレーナにあげられるものなんてないよ。やっぱり、僕を選ぶくらいなら貴族様にお身請けでも「ふざけてるの?」
一歩、詰め寄られる。反射的に一歩下がってしまう。
「ミル。ふざけているの?」
また一歩。さらに一歩。気付けば、ガラス窓に逃げ場を塞がれていた。
顎を摘ままれる。でも僕は視線を合わすことができない。
「私は、あなただけいれば良いんだよ?」
唇を食まれる。柔らかい。温かい。快楽に思考が溶かされていく。
「んっ。んぅ。」
ジュル、ビチャと、水音をたてながらより深く交わっていく感覚。このまま一つになっていってしまうような。
「っはぁ。」
だからだろうか。
離されてしまったときに“もっと”なんて思ってしまったのは。
「れ、レーナ、な、んで?」
「フフ。気持ち良かったね?ミル。」
鏡がないから分からないが、恐らく僕の顔は真っ赤だろう。
「あぁ。可愛いよ、ミル。」
頭を撫でられる。
「もう、荷物は明日でいいかな。」
「え?」
溶けた顔をしているレーナ。何処と無く怖くなって逃げだそうとするが、脚が動かない。
「フフ。【麻痺】が発動したよ?逃げようとしたのね?お仕置きが必要かしら?」
「レーナ、止、めて」
「嫌よ?」
魔力による身体強化で、僕をベッドに引き摺っていくレーナ。
その後は・・・察してください。
「おじさん。これとこれ下さい。」
「あいよ、兄ちゃん。」
レーナから貰った銀貨で支払いを済ませる。
今日は、レーナは僕の持ち物(わずかな金銭のみ)を取りに行ったため、ここには居ない。
・・・結局、着るものも住むところも金銭もレーナに任せきりになることになってしまった。
だから、家事くらいは僕がすることにする。
というよりした。
レーナは、多分僕と結婚してくれるのだろう。
あの約束通りに。
だから、少しでもレーナの助けになりたい。
き、昨日はそういうこともしてしまったわけだし・・・。
【器用貧乏】な僕なりに頑張りたいと思う。
そう思った矢先のことだった。
「兄ちゃん、ちょっといいか?」
気付いたら知らない男たちに囲まれていた。
・・・殴られるのだろうか?
「わ、分かりました。」
そんなこんなで人目につかない建物の影である。
「兄ちゃん、アンタ、どういう関係だ?」
「あ、あの、関係とは?」
「しらばっくれんじゃねぇ!!」
「オメェ今朝レーナ様の家から出てきてたろ!?」
・・・あ。
「俺らのレーナ様とどういう関係だ、コラァ!?」
地雷踏んだぁぁぁぁぁ!
割りと駄目な奴らに見られてたぁぁ!!
油断してた!村じゃないからって少し油断してた!!
「え、えとですね。」
どう考えても答えられない質問の答えを探し求める。
当然、タイムリミットは訪れる。
「そもそも、私はあなたたちのものじゃないわよ?」
え?あ。
「え、あ、レーナ様?」
「こ、こここっここれはですね・・・。」
「私は、今まであなたたちを見逃してきたけど、こんなことが有るようなら・・・」
「【魔帝】としての全力を以て潰しに行くわ。」
「「「は、はい!」」」
「で、この子は私のモノだから・・・まぁ、分かるわよね?」
「「「すいませんでしたぁっ!!」」」
そう言って我先にと逃げていく男たち。
「・・・レーナ。」
「もうダメ。決めたわ。」
身体が動かない。記憶に新しい【麻痺】だろう。
「ミル。あなたを二度と家から出さないわ。」
・・・ははっ。
「ふぅ。ミルのご飯、おいしーね。」
「レーナ。この首輪を外してくれない?」
「・・・分かってないのね。」
ドンッと。
床に押し倒される。
「なんでこうなってるか、自覚あるの?」
「・・・はい。」
「いいえ、無いわ。だって、あるならそんなこと言い出さない筈だもの。」
「そもそも、今のあなたで私になにかを言えるの?」
「そんな生意気なミルにはお仕置きかな?」
昨日よりも激しい、嬲るようなキス。
彼女から逃げられないのだ、と否応なしに伝わってくる。
でも、いいかもしれない。
僕も、レーナから逃げる気は・・・今はない。
それに、レーナは僕を救ってくれた人だ。
だから、彼女の言うことは可能な限り聞いてあげたい。
でも、搾り取られるのは勘弁かな。
胸に伸び始めた手を見て、僕は痛切にそう思った。
あぁ。幸せだなぁ。
ーーーレーナ視点ーーー
その出会いは、偶然だった。
彼には、兄がいて。彼は、それに連れられて。
彼が“忌み子”と呼ばれていたのは知っていた。
だけど、私はそんな彼の目が綺麗だと思った。彼の顔立ちが可愛いと思った。
だから、彼が欲しいと思った。
それ以来、彼とよく遊ぶようになった。
彼は、みんなに嫌われていたから、私と二人で遊ぶことになったのは割りと早かった。
彼の瞳が私だけを見ている。
そんな状況が堪らなく幸せで・・・。
でも、終わりが来た。
私と、彼の兄の目に変な紋様が浮き出てきた。
私のものは、【魔帝】とやらの証で。
彼の兄の物は【英雄】らしい。
それがわかってからしばらく、彼が私のところに来なくなった。
その後は、忙しなかった。【聖女】な王女様が私たちを迎えに来て、【邪神】とやらの討伐に連れていかれるらしい。
彼と離れることになりそうだから、余り行きたくはなかったのだが、強制らしい。
出発前日。
彼が私を呼び出した。用事は、告白だった。
驚いて一瞬固まってしまったが、食い気味に了承の意を返す。
良かった。これで後は【邪神】とやらを倒すだけだ。
あれから三年くらいだっただろうか。
帰ってきた。この村に。彼を探す。
いない、いない、いない。
この辺にはいないみたい・・・いた。
建造物の影に隠れるように、ひっそりと。
転移で彼の後ろに。彼を呼んでから気付く。
ボロボロだ。身体が、傷だらけだ。
手早く回復をかけて、犯人を聞き出す。
彼の環境は理解していたが、まさか、ここまで酷くなっているとは思わなかった。
とりあえず、彼を王都に買っておいた家に運んで、やるべき事をしようとした。
が、彼が可愛すぎるので行くのは明日になりそうだ。
≪自主規制≫
目を覚ますと彼がご飯を作っていた。
「レーナに全部頼りっきりになっちゃうから」だそうだ。
気にしないでも良いのに。
まぁ、彼の手料理が毎日食べられるのでなにも言わないけど。
転移で、あの村に戻る。彼のものをすべて回収して、するべきこと(【終焉の極炎】を村に打ち込み、焼き付くす。間違っても生存者は残さない。)だけして帰る。
「【探査:ミルド】」
彼の位置を把握・・・囲まれてる。
どうしたんだろう。まぁ、なんにせよ。
もう彼を家から出さないことにする。
「そもそも、私はあなたたちのものじゃないわよ?」
呆けた顔をしている彼。
「私は、今まであなたたちを見逃してきたけど、こんなことが有るようなら・・・」
「【魔帝】としての全力を以て潰しに行くわ。」
「「「は、はい!」」」
「で、この子は私のモノだから・・・まぁ、分かるわよね?」
「「「すいませんでしたぁっ!!」」」
立ち位置を解からせて・・・。
「・・・レーナ。」
彼が何かを言おうとしている。でも。
「もうダメ。決めたわ。」
「ミル。あなたを二度と家から出さないわ。」
「ふぅ。ミルのご飯、おいしーね。」
「レーナ。この首輪を外してくれない?」
「・・・分かってないのね。」
ドンッと。
彼を床に押し倒す。
「なんでこうなってるか、自覚あるの?」
「・・・はい。」
「いいえ、無いわ。だって、あるならそんなこと言い出さない筈だもの。」
「そもそも、今のあなたで私になにかを言えるの?」
「そんな生意気なミルにはお仕置きかな?」
彼に口付ける。激しく、彼の全てを奪い取るように。
彼をもう逃がさない。彼は救われたのは自分だと思っているのかもしれないが、私はその彼の可愛さに救われていた。
私に恋を教えてくれた。頼ってくれた。
だから、もう彼を逃がさない。絶対に。
だんだんと時間感覚が曖昧になっていく。
でもこの世界には彼と私だけいればいい。
そう。それだけが私の望みであり、幸せなのだから。
ミルドくんのヒロイン感。
何故作者が書くとヒロインがヤンデレ染みてしまうのでしょうか?
本編と比べると矛盾点等々あるかもしれませんが、お許しください。




