表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/17

姫騎士の登場

 ギルド内の視線を一心に集めるなか現れたのは、気品溢れる佇まいを身にまとう美女。

 その美貌は、美の女神があしらえたと言っても過言ではない、静謐な輝きを放っていた。


 騎士を象徴するかのようなデザインの制服は、王国に三つしかない騎士学校のものである。

 それを見て、スアはようやく、彼女が自らと同年代の人物だと気づいた。


 ヴィーは驚いたように顔を固めている。

 少年の腕を掴んでいたことも忘れて。

 今が好機だと、彼はヴィーの腕を振りほどく。

 あっ、と彼女が気づいた時には、彼は足早にギルドの入り口へと向かっていった。


 扉へ足を運ぶ最中で一瞬、制服を着る美少女と目が合いかけた少年だったが、彼は努めて気づかないふりをした。

 周りの視線を彼女が独占している隙に、少年は人知れずギルドの外へと出るのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 冒険者ギルドの扉を開け放った瞬間。

 視線のほとんどが自身に向かうのを、少女は感じ取っていた。

 何をやるにしても、意識するしないに関わらず、その一挙一動に注目が集まるのを、彼女は少し煩わしく思う。


 この身は騎士へなるために捧げているのに、まるで一国の姫のように傅かれることもある。

 内心では納得が行っていない。


 付け加えるとするのなら、この少女にとってある意味で不幸なのは、彼女が本当に一国の王女であることだった。

 そうであるなら傅かれるのも、仕方がないことではあるのだが。

 それでもやめてほしいと、彼女は常々から感じていた。


 ここでもいつも通りかと。

 思考を切り替えた彼女の視線の先で。


(……? あれは……)


 見覚えのある顔を、王女は見つけた。

 国に七つ存在する侯爵家の一つ、リーヌ家の一人娘。

 勝ち気ながらも、同性から嫉妬を受けそうなほど綺麗に整った顔立ち。

 身に付けているものは、冒険者の装備にも関わらず、それを華やかに着こなすセンス。


(相変わらずオシャレな娘ですね……)


 堅物な自分にはないものを併せ持つヴィーのことを、王女は羨ましく思っていた。

 それだけに、そんなリーヌの一人娘が、自分たちと同年代ほどの少年の腕を掴んでいることに、内心で興味を隠せない。


 状況を確認する限りでは、どうやら彼がギルドの出入り口へと向かうのを、引き留めているらしい。


 すわ痴情のもつれかと。

 王女らしからぬ、オッサン染みた野次馬根性全開の考察をしながら、彼女はわくわくと少年の観察を始めた。

 目はくわっと見開いている。


 体格はそこまで大柄ではなく、身長も至って平均的。

 ヴィーの方へ向けられているため、顔はよく見えない。


 服装も、冒険者として普通の装備を身に付けているだけ。

 強いて特徴と言えるのは、少し灰かかった色の黒髪くらいだろうか。


 良く言えば無難、悪く言えば平々凡々で地味。

 それが少年への第一印象だった。


 とてもではないが、あのじゃじゃ馬を扱えるような男ではなさそうだが。

 王女がそう感じていると。


 少年がヴィーの腕を振り払い、こちらへと向かってきた。


 どくん。

 彼の顔を確認した瞬間、首筋にある紋章が、熱を持ってうずき出すのを、王女は感じ取った。


(なんでしょう……?)


 疑問に思いながらも、彼の顔へ向かう視線を外さ……。

 否、外せないでいると。

 ふいに、ほんの一瞬だけ目が合う。

 かと思えば、すぐに逸らされた。


 王女は少し、ムッとした。

 彼女はこれでも、社交界にて様々な年代、様々な性格の人々と交流してきている。

 そのため、相手の感情を読むのに長けると、僭越ながら自負していた。


 そんな彼女であるため、少年がこちらに関わりたくない、めんどくさいといった理由で、視線が合わなかったふりをした。

 いや、視線に気づかないふりをした。

 そのことを何となく理解したがゆえに、らしからぬ感情の発露を、思わず出してしまった。


 少年がこちらへ一度も振り向くことなく、ギルドの外へ出るまで。

 王女は一人、意地でも視線を外さなかった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「これはこれは王女様。本日はどのようなご用件で、当ギルドへお越しいただきましたか?」


 王女は、副ギルド長を名乗る、不健康極まりなさそうな男と対面していた。


 結局。

 彼女は少年を見送ったのち、ここへ来た用件を思い出し、受付へと向かい。

 受付の職員が、上の者を呼んで参りますぅ、と慌ててドタバタ奥へ引っ込んでいき、この男が出てきたのだった。


 手揉みして、露骨なまでに下手に出てきている男。

 自分の身体へと向かう、その粘ついた視線。

 自らの野心を取り繕うことなく、前面に出してくるその態度。

 それらを不快に思いながら、王女はなんとか話を切り出す。


「……人を紹介してほしいのですが……」


「ほう。人、ですか……」


 早く会話を終わらせたい。

 本音が相手にバレないよう、王女は努めていた。

 それでも、声のトーンが冷たくなってしまうのは止められない。


 そんな王女の様子には気づかず。

 あるいは、気づいていつつも、それを無視する厚顔を持ち、得意げに思案顔を見せている男が相手であったのは、不幸中の幸いと言えた。


「人、と申しますと、人材のことでしょうか?」


「エエ」


「左様でございますか。して、どのような人材でございましょうか?」


 肥え太って死相が見えるほどの男は、頭の中で、何人かの冒険者をリストアップした。

 それは、このギルド支部でトップクラスの実力を持つ者たちだった。

 王女からの覚えがよくなれば、このようなギルド支部の副長ではなく、さらなる栄転が待っている。

 男は血圧が上がるくらい張り切っていた。


 肥満体の、そのような取らぬ狸のなんとやらは、次の王女の一言で瓦解した。


「ギルド員ではない方で、ギルドの依頼を受けていたり、ある程度戦闘をこなすことが出来るような方を」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ