異世界前の現代生活
おい!あのポップく、、
久しぶりに会う仲間に抗議の声をあげつつ中に入る扉を開けたのだが、予想外の空間に抗議の声は途中で途切れた。
扉の奥に待っていたのは会社を任せていた友人と、全く知らない顔が10名程。
皆しっかりと正装しており、その全員が勢いよく開けた扉と中途半端に掴まれた腕の痛みをアピールしながら入ってきた俺を見ていた。
ビルの入り口から部屋の中に至るまで続く俺が馴染む要素がないこの空間と雰囲気に、上げた手をゆっくりと下ろしながら友人の元へそそくさと駆け寄る。
えーっと、、どういうことでしょうか、、?
俺が扉を開けた瞬間から口を押さえて笑いを噛み殺している友人に怒りを抑えながら小声で話しかけると隣の空いていた席へ座るように促され、友人は呼吸を整え咳払いをして俺に説明してくれた。
…話を要約すると今日ここに呼ばれたのは俺が仙人モードの時に浮かんだアイディアを基にした事業の報告兼食事会で、今まで謎だった会社の発起人を紹介する為の集まりとの話だった。
いや、それなら話してくれていたらちゃんと俺も正装で来たのに!と抗議をすると、面倒くさくなって絶対来ないだろ?と言われてしまった。
そりゃまぁその通りなんだが、だからと言って短パンサンダルが初対面って。。
皆の視線が突き刺さる中でこれ以上の抗議は時間の無駄だと理解して静かに隣の席に座る。大人しく席に着いたのを確認した友人が隣で俺の紹介を始めているなかで俺はこの場からどう逃げ切ろうか思案する。
とりあえずあのポップ君は後でその着メロに合わせた歌をあえて渋めの声で耳元で口ずさんでやろう。いや、スマホにハモりを入れて両耳からのフルサウンドを楽しませてやろう。右手の痣を鍵盤代わりにして、間奏部分も楽しませてやろう。
その後はあの綺麗なスタッフの子にトイレの場所を聞いてトイレに行って窓から出るか。多少壊したところでこんなもんほぼ拉致みたいなもんだから後で事情を話せば許してもらえるだろう。ったく、こんな面倒な集まりなんかに呼び出しやがって。、あ、そういえば明日の昼は庭の選定頼まれてたな。あそこの爺さん仕事終わりにビールとか飲ませてくれるからあの現場好きなんだよなーけど爺さんの笑顔とは真逆の強面のおっちゃん達がいつも傍にいんだよなー。一回爺さんと呑みながら意気投合して騒いでたら物凄い顔して睨んでたなー。爺さんと庭の池で水掛けあって遊んでたのが気に障ったんだろうなー。でもくそ暑かったしなー。あ、そういえばさっきのポップ君に顔といい雰囲気といいかなり似てるな。もしかして従兄弟とか兄弟?なら爺にスマホの扱い方仕込んで強面とポップ君の両耳の横で爺さんと合唱してやろうかなー。さすかにぶちギレられるだろうなー。よし!そうしよう!爺さんに連絡して明日の朝から色々仕込んで行こう。あー楽しみだ………
いつの間にか俺の紹介と報告会終わってました。