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第59話 激闘? アステル対ルーナ

本日2話目です。

「そういえば親方。数日前にルーナの斧が殆ど完成してたって言ってましたけど、グランセルには戻らないんですか?」


 最終調整だけならここじゃなくても出来るはず、ならなんで店に戻らないんだろう? 不思議に思って聞いてみた。


「ああ、それはな、工房を借りる条件として残った材料でもう1つ聖武具を作らなけりゃならなくなったのと、職人の指導をやらされてるんだ」


「それは大変ですね」


「まあ、好きでやってる事だから苦にはならん。次の聖武具はドイルに打たせようと思ってるしな」


 僕の質問に親方は楽しそうに答えた。


「親方、武器代いく…ら?」


「必要ない」


「ダメ、ちゃんと対価は払…う」


 親方がヒラヒラと手を振りお金は要らないと言うとルーナさんが首を振って食い下がる。


「対価は貰ってるだろ? 斧に使ったオリハルコンを差し引いても100kg近いオリハルコンが残ってるんだ。作業代には充分すぎる。作業を手伝ってくれた奴らにも充分な対価は行き渡ってるから気にするな」


「あれはあげた物、だから…別」


「それこそダメだろ? ルーナが命懸けで持ち帰った物を俺がただで貰うわけにはいかん、この話はこれで終わりだ」


「…むぅ」


 話し合いは親方が押しきり、ルーナさんはしぶしぶといった感じに引き下がる。


 馬車が走ること30分程、着いた場所は幅2km、奥行き1km程の土の地面が広がる広場、どうやら正騎士団の訓練施設のようだ。そこでは正騎士の人達が実績訓練、連携訓練、基礎体力訓練等をやっていてあちらこちらから揃った掛け声が響いてくる。



 広場の端には騎士証が飾られた大きな建物があり、親方に連れられてその建物に入ると、正騎士さん達と騎士団の職員さんらしき人達が談笑したり忙しそうに働いたりしていた。


「ダルクスを呼んでほしいんだが」


 親方は騎士団の職員さんらしき女性に声を掛け、誰かを呼び出した。


 職員さんが建物の奥に入って行き数分経つと、建物の奥から親方と同じくらいの年齢の身長2m以上ありそうな立派な顎髭を生やした体格の良い男性が歩いてきた。


「ファゴット、ワシも暇ではないのだ。急に呼び出すな」


「すまんなダルクス、ちょっと訓練場を借りたいと思ってな」


 急に呼び出すなと文句を良いながらもニヤリと口元を緩め拳を付き出すダルクスさん、親方はその拳に拳を合わせて返事をする。


 どうやら結構仲の良い間柄のようだ。


「で? 急に訓練場が使いたいってのはどういう事だ?」


 ダルクスさんの質問に親方は僕達の方を親指で差し、事情を説明する。


「ほう、神剣と聖戦斧の勝負か、面白そうだな」


 ダルクスさんはニヤリと笑いながらこちらに視線を送り━━


「よし、訓練は一時中断、全員集めろ!」


 近くに居た騎士団員に指示を出す。


 このダルクスさん、どうやら正騎士団の団長らしい……


 その後ダルクスさんに連れて行かれたのは外の広場ではなく、高い壁に囲まれた200m四方の広さの闘技場の様な施設。壁の上には客席らしきものもあり、騎士団員らしき人達がどんどん座席に座っていく。


 いつの間にか国王様や宰相のエルガー様、ギルベルト様、ドイルさんも施設内にやって来て1番良い席を確保している。



「ここなら少々派手に暴れても周りに影響を及ぼさん、おもいっきりやれ」


 僕達の意思はそっちのけでどんどん話が進む。


「はあ……勝手に勝負するって事になってるけどどうする?」


「…ん、いつもの手合わせだ…と思っておもいっき…りやったら良い…よ」


 いつもの手合わせか……そうか、そう考えればそんなに気負う事もないな。


 ルーナさんの言葉で一気に気が楽になり、いつもの調子でルーナさんに胸を借りる事にした。


「よし、準備は良いな。聖武具と神武具の使い方は同じだ。武具に心を集中させると使える者には頭の中に勝手に使い方や聖句、神言といった言葉が浮かぶ。やってみると良い」


 えっ!? そんな簡単な事で良いの? 心を集中……ん? どうやるんだろ?


「あの、心を集中させるってどうやるんですか?」


「なんだ? 1度は発動させたんだろ? その時にどうやったか思い出してみろ」


 ……あの時は追い詰められてヴァーリにすがるように頼んだ感じだったよな……


「……ヴァーリ、力を貸してくれ」


 僕は心を落ち着かせあの時と同じようにヴァーリに心を預けるように声を掛けた。


 すると、神剣ヴァーリは淡い光を放ち僕の体の中に力が流れてくる。僕はその力を今度はヴァーリに返すように魔力を操作した。


 ヴァーリの輝きはだんだん強くなり、その光は僕の全身を包み込む。


「凄い、凄いよ。全身に力が漲ってる」


「アステル」


 溢れる力に感動している僕にルーナさんが声を掛け聖戦斧を構えた。


「行くよ」


「…ん」


 一拍、僕は一足飛びにルーナさんの懐に飛び込み袈裟斬りにヴァーリを震う。


 ルーナさんはその攻撃を聖戦斧で弾き上げ、そのまま体を回転させて真横に聖戦斧を振るう。


 僕はそれをバックステップで躱し距離を取る。


 ……凄い、いつもなら攻撃を弾いたりせずに軽々と躱すルーナさんが初めて武器で受けた。それにルーナさんの攻撃もいつもなら手加減されても殆ど反応出来ないまま寸止めされてたのに振り切った攻撃をちゃんと躱せた。


 今日はちゃんとした手合わせになりそうだ。



「アステル、今度は私の…番。舞え…シルフィード」


 ルーナさんが静に聖句を唱えるとルーナさんの背中に半透明に輝く6枚の羽の様な物が現れた。


 おおっ! 綺麗だ……ルーナさんがまるで妖精のようだ。


 一瞬その姿に目を奪われた僕。その羽はルーナさんの背中を離れ不規則に飛び、前後左右上下あらゆる角度から僕に襲いかかってくる。


「くっ……!」


 羽の様なものは切れ味の鋭い刃のようで、なんとか反応は出来て躱したり剣で受けたり出来るけど……少しずつ僕の体に傷が増えていく。


 防御で手一杯で反撃のしようがない……


 そこへルーナさんが踏み込んで僕の腹部に蹴りを入れる。


 僕は後方に飛んで威力を軽減させた……けど、あれが斧の攻撃だったり飛んだ方向に羽で待ち伏せされてたら、そこで勝負は終わってた……やっぱりまだまだルーナさんに本気を出させるのはむりか……でも!


「ルーナ、もう1つ神言が浮かんだんだ」


「…ん、私も、もう1つある…よ」


 言葉を交わし、僕はヴァーリを両手で持ち腰の横で水平に構え、ルーナさんは6枚の羽を自身の前に集めた。


「斬り裂けヴァーリ!」


「穿…て、シルフィード」


 ヴァーリを横一線に振りきるとヴァーリの刀身から光斬撃が飛び出し真っ直ぐルーナさんの向かって飛ぶ。


 一方、ルーナさんの聖句と共に6枚の羽が激しく回転を始め、風を纏った1本の矢のごとく僕に向かって飛んで来た。


 攻撃は互いの中央で激突し、一瞬の拮抗の後、轟音と共に弾け飛び衝撃波が建物全体を揺らす。


 もう一手、そう意識を向け、次の攻撃に移ろうとしたその時、僕の周りの景色が歪む。


 あれ? おかしいな……力が入らない……


 攻撃を受けたわけでもないのに体から力が抜けて、僕はその場に倒れた。


「アステル、大丈…夫?」


「うん、たぶん大丈夫……ちょっと力が入らなくなっただけだから……」


 地面に倒れ込む寸前、ルーナさんが僕を受け止め静かに寝かせてくれた。


「急激な魔力消耗による虚脱じゃな」


 客席から下りてきたエリーさんが僕の様子を見てそう判断を下す。


 ……魔力消耗の虚脱? 初めて聞く症状だな……あ、でも前に使った時は1振りで気を失ったんだっけ……


 自分的には結構な時間戦ってた感覚だけど、実際は1分も戦ってなかったらしい。


 今の僕じゃ、まだまだヴァーリの性能を上手く使いきれないって事か……もっと修行しないとな。


 今回は気を失う事はなかったけど、立てる様になるまで15分、まともに動ける様になるまで2時間程掛かった。


 僕が回復するまでの間に、今度はルーナさん対エリーさんの手合わせ……というか、殆どガチの戦闘が始まり、施設内に居た殆どの人が恐怖を味わった。


 2人の戦闘は凄まじく、ルーナさんは聖戦斧シルフィードの能力を余すことなく発揮し、エリーさんは滅多に見せない全身を竜鱗で被い、尾を生やした半竜化とも云うべき竜人形態で人外の力を見せつけ、騎士団長のダルクスさんの予想を裏切り滅多な事で壊れない施設が戦闘の余波であちらこちら亀裂が入り今にも崩れ落ちそうになったところで2人が戦闘を終わらせた。


「物足りぬのう、今度はもっと広い場所かダンジョン辺りでやるのじゃ」


「…ん、そうだ…ね」


 この後施設の復興に多大な税金が投入されたのは言うまでもない……

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