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悪役令嬢、百合に目覚める  作者: クロロフィル
第一章ー悪役令嬢、お姫様と暮らすー
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【番外】魔物討伐者プロフィール

 こんにちは。えっと、私のプロフィールですか?

 別に構いませんが、特に優れたところはありませんよ。


「嘘ですよ、ヴィーナ様は凄いんですよ!」


 ユアは黙ってください。それで、まずは何が知りたいのでしょうか?


「ヴィーナ様の好きな人!」


 そうですね。強いていうなら……、この子(ユア)でしょうか。


「えっ……!? 本当ですか!?」


 ええ、当然でしょう。それに後は妹のことも好きです。ああ、ユアのことではないですよ。

 えっ? ユアとの関係ですか?

 ユアは……今はまだ……その、い、妹のようなものですね。

 あれ、どうしてユア落ち込むのですか? 今はまだ……ですよ?

 ああ、すみません。話を戻します。ええ、ユアは実妹ではないですよ。実妹ではね。

 ……誘拐なんてするわけないでしょう。

 

「王国からは多分誘拐だと思われてますけどね、ヴィーナ様」


 ユア、小さい声で不名誉なこと言うのはおやめなさい。

 私を社会的に殺すつもりですか。

 ……いえ、もはや死んでるようなものですが。

 とりあえずユアは大切な人です。多分、今は世界で一番。


「……えへへ」

 

 あ、そうです。それよりインタビュアーさん、聞いてください。私よりもユアの方が凄いですよ。


「いやいや、そんなことないです! ヴィーナ様の方が凄いです」


 そんなことないわよ。だってほら、貴女は国一番の魔力保有者じゃない。それに可愛いし、料理も上手いし、誰にでも優しいし、頭もいいし、何よりやっぱり可愛い。


 昨日もユアの作ってくれた夜ご飯が本当に美味しくて、それを一口食べるたびに味の感想を不安そうに聞いてくるんですよ。本当に美味しいのですが、どうやら自信がないみたいです。えっ、インタビュアーさんには食べさせませんよ。今は私だけの特権なので。

 それでですね、ええ、まだ続きますよ。

 はい? 私の話ですか?

 私の話なんて今はどうでもいいではないですか。


 それで、えっとどこまで話をしました……?

 ああ、そうです。ユアのご飯が本当に美味しいというところまででしたね。本当に今まで食べたどの食事よりも美味しかったです。


 しかも、それだけでなくてユアは可愛い。ほら、どうです。凄い可愛いでしょう


「ヴィーナ様、す、少し恥ずかしいです……」



 照れるユアも良いですね。こういう女の子な姿もまたいいですよね。私はほら背が無駄に高いので。

 この子はーーえ? ああ、私ですか?

 私は164センチですよ。もう少し低い方が良かったのですが。

 スリーサイズですか? 流石にそれは答えるわけないでしょう。

 魔法を覚えた切っ掛けですか? そうですね、昔近所の人に教えてもらっただけです。

 ユアも同じですよ。

 私の得意魔法ですか? ありませんよ。


「そうそう、ヴィーナ様が本当に凄いのはそれです! ヴィーナ様には魔法の得意苦手がないんです! あらゆる魔法を平等に使いこなすことができるんですよ。しかも、即座に魔法の構築式をその場その場に応じて魔法陣に編み込むことができる! このようなことが出来るのは現時点ではリリファル家の『英雄』アルカトロスとヴィーナ様だけなんですよ!」


 ユア、持ち上げ過ぎよ。お父さ……ごほん、アルカトロス様に比べれば私は未熟です。それに私が出来るのはそれだけでしょう。


「そんなことないですよ!」


 いえいえ、あります。


「ないってばー」


 いいえ、ありますよ。


「むぅ……」


 そう膨れても可愛いだけですよ。


「そ、そんなに褒めてもーー」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 その日の夜。


「フ、ザケンナァああああああああああああああああああ!!!」


 運ばれてきたビールを一気に飲み欲し、げぷっとゲップを漏らしながら叫ぶ女性は、魔物討伐者の広報担当の女性、ミス・グレムリン。

 グレムリンはジョッキを掲げて、店員に「もう一杯!」と怒鳴り、それに気の弱そうな店員の子がびくっと震え、「か、かしこまりました」と応えた。


「おいおい、荒れてんな。今日はどうしたんだ?」

 

 グレムリンと一緒に飲むのは同じ広報の同僚だ。


「どうもこうもないわよ、何よあれ! あのヴィーナとかいうクソガキは!! 何かあればユアユアってよぉおおおお!」

「ふーん、姉妹仲いいんだな」


 優雅に酒の味を楽しむ同僚を睨み、グレムリンは運ばれてきたビールをまた一気に飲み干し、叩き付けるようにテーブルの上に置いた。ヴィーナというのは数日前に"妹"と一緒にこの街にふらっとやってきて、住み着いた少女。平民にしては珍しく、魔法を使えることから没落貴族ではないかという噂が流れている。


「仲いいなんてもんじゃないわよ! 終始ベタベタしてたのよ!? インタビューの邪魔だって何度も言ってるのに、ずっとずーっとよ! しかも挙げ句の果てにはインタビュー中にも!」


 グレムリンはまた店員に怒鳴り、新しい酒を持ってこさせた。今度はビールではなく、カクテルだ。


「そのせいでこの時間帯まで! クソ! 大体なんであんな小娘が魔物討伐者になってるわけよ!? いくら魔法使えるからって魔物の前に出すなんて危険じゃない!」


 また酒を一気に呷る。


「ははは、今日は本当に飛ばしてんな。ま、それには同意だがな」

「ったりめえよ! これが呑まずにやってられっかってもんですよ!」

「でもよ、魔物討伐者に関しては本人から立候補したらしいぞ」

「はぁ!? でもね、だからって普通やらせる!? ほんっとこの街の大人連中はだらしないんだから」

「……今ここでそんな風になってるダメな大人代表のようなお前が言っても全く説得力ないぞ?」

「あん?」


 またグレムリンに睨まれ、同僚は目を逸らす。


「大体な、どうしてこの街には魔法使える奴が他にいないのよ!」

「それは仕方ないだろ。魔法なんてのは貴族の特権みたいなところがあるわけだし、使える方が稀だろ」

「ふん、そんなのは知ってるわよ! でも他の街にはいるでしょ! そいつらをタクラスにも連れてきなさいよ!」

「それは貴族領の街だけじゃないかな。少なくともこんな山奥の街には来るわけないさ」


 冷静に言葉を並べる同僚に、グレムリンは軽く舌打ちする。


「んなこたぁ、分かってんですよ!」


 グレムリンは同僚の肩に腕を回す。むにゅと豊かな胸が押し付けられ、一瞬どきりとするが、よく考えれば今更この女性相手にそういう感情は湧かない為、同僚は一つ溜息をつく。


「お前、今日は本当に荒れてんなあ。そんなにあのヴィーナって子のインタビューは嫌だったんだな」

「ああ!? 嫌に決まってんでしょ! 聞きたいことがまだまだあったのにまったく!」


 ごくごくごくごくと酒を豪快に飲み干し、またテーブルに叩きつけた。


「あ、おい、酒切れてるわよ! つーか、そういうそっちはどうなの? 今日は確か何度目かのあのゴミクズ野郎のインタビューだったでしょ!」


 また怒鳴り、酒を持ってこさせるグレムリン。非常に迷惑な客である。ちなみにグレムリンの言う『ゴミクズ野郎』というのは、カンクルのことである。


「どうって、普通だったが」

「はん、つまんねえ返しね。大体あんたはよ、いつもいつもーー」


 そこからグレムリンの長々な説教(愚痴も含む)が始まった。

 やれ仕事には真面目に取り組めだの、やれ日常生活がだらしないだの。酒による説教が始まる。


 だが、それには慣れてるのか同僚は、説教を聞き流しながらも一口、酒を飲む。


(もうこのまま流しとくか。今日のこいつはめんどくさいし。それにしても……、やっぱり仕事終わりの酒は美味いな)


 そうして日々は過ぎてゆく。






ミス・グレムリンの魔物討伐者プロフィール


『ヴィーナ』

年齢、17歳

性別、女

誕生日、不明

身長、164センチ

体重、不明

スリーサイズ、不明

好きなもの、ユア

得意な魔法、なし

苦手な魔法、なし

推定討伐者ランク、A+



とにかくユアさんの話が長かった……。次はもう少しきちんとお話を伺いたい

Byミス・グレムリン

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