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憧れの異世界で冒険者になる。  作者: autumn
第1章 厄災まみれの転生者
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第6話 苦戦

vs親玉

階段を上った先で目に写ったのは胸元を庇いながら(うずくま)る少女の姿だった。そして、その傍には破れた服を持つ体格の良い男の後姿があった。


「やめて・・・お願い・・・」


「くっくっくっ、そう怯えるなよ。これから楽しくやろって言うのによ」


「いや・・・いや・・・お父さん・・・お母さん・・・助けて」


「もう、いない奴に助けなんて求めてよ~可愛いねぇ~」


「チッ・・・気分悪い・・・」


そんな光景を見てしまい、思わず舌打ちして悪態をついてしまった。それが聞こえたのか男はゆっくりと振り返り疑問の表情を浮かべ問いかけてきた。


「誰だおめぇは?ヤズとマイスはどうした?」


「さぁね。下で寝てるんじゃないか」


「なに言ってやがるガキが」


「本当の事を言ってるんだ・・・よっ!!」


そんな会話をしながらもお手製のスリングをゆっくりと回し徐々に速度を上げていった。そして、不意をつくつもりでいたスリングを男目掛けて放ったがあっさりと避けられしまった。


「くそ・・・やっぱり正面からじゃ当たらなかったか」


「あぶねぇーな!このガキが!」


「うるさいなー。黙って当たっとけよ」


そう言いながら右手の短剣を逆手に構えた。諸刃の短剣であれば順手でも良かったのだが、片刃の短剣だったため逆手に構えた方が上手く使えると感覚が告げていたのだった。そして、確率はわからないが一撃でも当たれば麻痺させることが出来るのでそれに賭ける事にしたのだ。


「おい、ガキ・・・てめぇの持ってるのはマイスの・・・マイスを殺りやがったのか!」


「だから下で寝てるって言っただろ。二度とは起きないけど・・・なっ!!」


時雨(しぐれ)は勢いよく駆け出した。一撃だけ当てるのであればどこでも良かったので間合いに入った瞬間に適当に斬り付けたがあっさりと防がれてしまった。


「ちっ・・・防がれたか」


「ガキが調子に乗りやがって!殺してやる!」


「そう簡単に殺られてたまるかよ」


「うらぁぁぁぁぁ!!!」


男は大声を上げながら剣を上段に構え斬りかかってきた。時雨(しぐれ)はその攻撃を真横に飛んで避けたが追撃で横凪ぎに剣が振るわれてきた。咄嗟に短剣を剣の軌道に合わせて下から上へ斬りつける形で弾き返した。その際、体勢が整わない状態での反撃だったので吹き飛ばされてしまった。


「っつ!!あっぶねー!!しかし、重い一撃だったな・・・」


「ちょこまかと・・・鬱陶しいガキだ」


「・・・」

『鑑定してみるか』


[大地のタルワール]

レア度:B+

属 性:地

※刀匠ムガルの鍛えた片刃刀


男を睨みながらも武器を鑑定してみるとただの剣ではなく銘が刻まれてあり、属性も付いた武器であった。そこから考えると自分が持つ武器よりも格上な武器なんじゃないかと考えられた。そんな攻撃を何度も受けるわけにはいかないと判断して反撃に出た。


「早々に決めさせてもらうぞ・・・」


「てめぇの攻撃なんか当たるかよ!」


「なめるなよ!」


時雨(しぐれ)は勢いよく地面を蹴り、男の懐へ潜り込んだ。その際に短剣で斬りつけるのではなく体術の掌底を男の顎先を狙い打ち込んだが(かわ)されてしまい、逆に反撃でアッパーが顔面を狙って打ち込まれてきた。それをなんとか体を()ることで(かわ)し、その()ることで生れた回転を利用して斬りかかった。


「これなら・・・どうだ!」


「チッ!ちょこまかと!!」


時雨(しぐれ)の攻撃は一撃も当たることもなく躱されていた。だからと言って男の攻撃も時雨(しぐれ)には当たることはなかった。そんな攻防を30分以上続けていた。


「チッ・・・ガキがしぶといんだよ」


「おっさんも頑張るねー・・・」

『このままじゃ埒があかない・・・どうする』


そんな膠着状態が続いていた時、男に向かって何かが飛んできた。その何かは男に当たるがダメージとはならず男の気を反らす程度に留めた。男に当たり地面に落ちた何かを見ると時雨(しぐれ)がスリングで使ったチーズの塊だった。


「いてっ・・・なんだ?」


「・・・」


「女~やってくれたねぇ~そんなに待てないのかぁ?このガキ殺ったらすぐに相手してやるからなぁ」


「・・・い、いや」


「ぐふっ・・・ぐふふ」


男は少女の方を向き、気持ちの悪い笑みを浮かべていた。しかし、それが男の隙となった。時雨(しぐれ)がそんなチャンスを見逃すはずもなく一瞬のうちに間合いを詰め、男の喉元を切り裂くために横凪ぎに短剣を振り抜いた。


「・・・隙あり!!」


「なっ!!・・・っつ!!」


「チッ!これも(かわ)すのかよ!」


「ガキがぁーーー!やってくれ・・・がぁ・・」


「でも、完全には(かわ)す事ができなかったな。おっさん」


「ぐっ・・な・・なめ・・・」


「じゃーな・・・おっさん」


最大のチャンスに振るった一撃は狙った喉元を捉える事ができなかった。しかし、男の反応が遅れてしまい浅く顎先を斬り付ける程度になった。時雨(しぐれ)の持つ短剣の効果で男を麻痺状態にすることができた。そして男は立っているのもやっとの状態でいたが、ついに膝をつき呂律(ろれつ)も回らなくなってきていた。それを見かねた時雨(しぐれ)は男にとどめを刺すのだった。









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