~プロローグ~
建御雷之男神との出会い ~そして異世界へ~
・・・嘘だろ、おい。
そう思ったのも目の前に迫る大型トラックがいたからだ。
信じてはいなかったが不思議なもので死に直面したらこれまでの人生の出来事が本当に思い出されていった。
これが走馬灯か・・・
そんな事を考えているうちに痛みとともに視界が暗転した。
時田 時雨 30歳の最後の日となった。
・・・のはずが、朦朧とした意識のなか目を開けてみると見知らぬ庭園に立っていた。
「どこだ、ここは」
辺りを見渡して見ると日本庭園の様な趣の場所があった。松や藤に茶屋があり、そこに着物を着た人が座っているのが見えた。話を聞こうと近くまで行くと声をかけられた。
「お主・・・意外と早くこちらに来たな」
そんな訳のわからない事を言われて俺は立ち止まってしまった。
「なにをしておる。早くここに座れ」
そう言われ隣に座ることにした。
「さっきのはどう言うことだ?」
「なんじゃ、忘れたのか?お主とは一度会ったことがあるのじゃぞ。まぁ、会ったと言ってもお主の夢の中でじゃが」
そんな事を言われても記憶にはなかった。ましてや、夢の中でなど言われても忘れているに違いなかった。
「覚えがないな」
「まぁ、しょうがなかろうな。では、どうじゃ。今年の初めに神社で何か願い事をしなかったかの?」
「確かにそれは・・・した覚えがある」
「そうじゃろ。その日の夜にわしとお主は夢の中で会ったのじゃ。そして、その時に約束したのじゃ」
「約束・・・あっ」
「うむ、思い出したかの」
「異世界が本当に実在しているのなら・・・死んだら行きたい。と願った気がする」
「その通りじゃ。お主が死んだら異世界へ行かせてやろうと約束したのじゃ。だからお主をわしの庭へ招いたのじゃ」
「じゃあ、俺は異世界に行けるのか?」
「そうじゃ。約束だからの。しかし、ちょっとばかり誓約して貰わねばならん」
「・・・誓約とは?」
「そんなに難しい事ではない。今から行ってもらう異世界で邪神の眷属を倒してほしいのじゃ。」
「邪神の眷属・・・それはどれくらいいるんだ」
「詳しい数まではわからん。しかし、見かけたらでよいのじゃ。少しでも数を減らさんと厄介なことになるのでの」
「まぁ、ノルマ等あるわけじゃなければそれくらいは構わない」
「おぉ、やってくれるか。ならば大したものはやれんが、わしの加護を授けよう」
「それは助かる。夢にまでみた異世界だからな。今まではネット小説の中での作られた世界だとしか思っていなかったし・・・」
「そうか、そうか。しかし、そのネット小説のようにチートな技能は授けられんぞ。まぁ、わしもこれでも軍神だからの。戦うための加護くらいは授けられる」
「確か願い事をした神社は建御雷之男神が祭られてたな」
「そうじゃ。だからお主には武神(小)と鑑定(小)を授けてやるからの。あとはこの飲み薬をやろう」
「この、飲み薬は?」
「他の神からちょっと拝借してきたのじゃ。自動翻訳のスキルを得れるじゃろ。あちらの世界に行ってから飲むのじゃぞ」
「あぁ、わかった」
「あと、あちらの世界に行けば自分のステータスを見ることができるはずじゃ。しかと確認するのじゃぞ。では、行って参れ」
「ちょっ、まだ聞きた・・・」
まだ聞きたいことがあったが足下が突然に明るくなり、光に包まれてしまった。
「なんじゃ、何か言っておったの。まぁ、よいか。」
「建御雷之男神様。よろしかったのですか。敵がどのような者か話されなくても」
建御雷之男神の座っている後ろの茶屋の中から男が現れてそう話しかけていた。
「異世界に憧れ、異世界へ行きたいと願う変わり者じゃ。そんな奴を選定して送ってやったのじゃ。あとは己で何とかするじゃろ。それにわしの加護も授けてやったのじゃ、簡単にはくたばらんじゃろ」
「建御雷之男神様がそう仰るのであれば、これ以上は何も申しません」
そう言うと男は茶屋の中へ消えていった。
「時田 時雨・・・武運を祈っておるのじゃ」
こうして時田 時雨は異世界へと行くことになった。