第7話:迷子
ギリギリ木曜日です。水曜日は投稿してないので土曜日に
『城下町にて』
「おい勇者!早く降りてこい」
まったく何故階段を降りるだけでこんなに時間がかかるんだ。
まず、俺は元々城下町に行こうと思っていた。なぜなら、もうすぐ奴が帰ってくるからだ。
勇者が町に行く理由は分からないが、勇者は旅に出るまで存在は秘匿とされ、城内から出られないだろう。なので、姫様とも一緒に旅をするから少しだけ奴のことを知るために城下町に連れてきたのだ。
勇者は城から出ようとすると止められるのは、簡単に予想がつく。だから城壁ごと隠蔽結界で囲い、土魔法で壁に階段を作ったから、登って降りるだけなのに降りるのが遅すぎる。
「むっ、やっと来たか」
「てめぇ!手摺り《てすり》くらい作れよ!」
まったく騒がしい奴だ、そんなものは自分で作れば良かったのに。
「では行くぞ」
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この王都は凸型で突き出た所に王城がある。そして北を除く箇所にそれぞれ門があり、南門と城門までを繋ぐ道と西門から東門までの道が大通りになっている。その大通りで地区が分けられている。今回、用があるのは南東の商業区だ。ここは宿屋や酒場、冒険者ギルドなどの冒険者地区でもある。
俺と勇者は、普段沢山の屋台が開いている大通りを歩いている。
「さぁさぁ、見てって!オークの串焼きがなんと中銅貨1枚だよ!」
「オランジの搾りたてジュースが今だけ銅貨5枚だよ!」
「そこの少年よ。この幸運の壺が中銀貨1枚のところ。特別に!銀貨8枚にしてあげるぞ」
「それで勇者よ。お前は何を探しているんだ?」
「へっ?お、俺はある調味料だ」
むっ?この美味しそうな匂いは?
「ふーん、まぁいいや。おい店主、これは何だ?」
「へい!これはオークの串焼きだ。この秘伝のタレがめちゃくちゃ美味しいタレで、これ無しだと臭くて食えねぇぐらい味が変わるタレを使ってるんだ。どうする?一本中銅貨1枚だぞ?」
たまに平民の料理も宮廷料理に負けてない時があるからな。食べてみるか。
「じゃあ3本買うからおまけしてくれ」
「おう。じゃあ中銅貨1枚と銅貨8枚でどうだ?」
「ふむ、ではそれで取引成立だな」
まぁ、美味しくなかったら勇者に食わせれば良いか。
「毎度あり!ほれ、熱いから気をつけろ」
「おい勇者、一本やるから食え」
「勇者?」
むっ、失念していた。
「味はどうだ?勇…タよ」
勇者じゃダメだな。勇者の名前ってあってるよな?
「美味しいけどこのタレ……ってか俺の名前は優人だ!」
ふむ、毒は無しと。ユートか、惜しかったな。
「では食おう。むっ!?」
このタレは何だ!?香ばしく胡椒や唐辛子より断然美味しいし、この肉も脂が滴っていて柔らかい。確かに臭みもなくなっている。宮廷で使うよりも美味しくないか!?
「むっ、もう終わってしまったのか。では勇…ト、行くぞ」
「お、おう」
そして屋台や店をほとんど巡った。平民のアクセサリーは木や魔物の素材で出来ていて、宝石を使っていないのに美しく。服などは貴族の方が良かったが、料理や飲み物は全然負けていなかった。ずいぶん前に姫様と来た時は…
ーーーッ!?
覚えていない…!?俺が姫様との記憶を忘れている!?なにか魔法の干渉を受けたか?
「きゃっ!」
なんだ?
「すまない、少しだけ考え事をしていて」
「あっ、大丈夫です。驚いただけですから。痛っ」
怪我をさせてしまったな。
「見せてみろ」
「えっ?でも」
「いいから」
膝が擦りむけただけか。
「キュア」
「あっ」
「よし。ではもう行くぞ」
「あのっ、お礼をさせてください」
「いや、こちらの不注意が招いたことだ。気にするな」
「いえっ!それでも」
「どうする?ユー……ト?あれ?」
まずい。勇者と抜け出して勇者が行方不明だと確実に家に害が及んで姫様にも会えなくなってしまう。
「じゃあユートっていう黒髪黒目の男を探してくれ。俺の連れだがいつの間にか消えていた」
あれ?確か、トイレに行ってくるとか言ってて、その後に……あっ、移動しながら売っていた物を買って、その後また他の屋台に…
「まったく迷子になるとはダメだな。取り敢えず日が落ちる前に見つからなくても冒険者ギルドで待ち合わせな」
「はい!分かりました」
「そういえば俺はサバトだ」
「サバトさんですね。私はスインと言います。では探しましょうか」
「あぁ」
貨幣のレート
銅貨<銀貨<金貨<白金貨
銅貨10=中銅貨1
中銅貨5=大銅貨1
大銅貨2=銀貨1
銀貨10=中銀貨1
〜繰り返し〜