第2話:姫様に魔法具を作って渡そう
「ルールは殺しと魔法はなし。それでは模擬戦を開始する。始め!」
「「「ウオォォ!」」」
はぁー、めんどくさ。なんで姫様が見てないのにこんな事しないといけないんだよ。
それに俺は姫様を今日1回も視界に収めてないから、影からこっそり見て満足したいだけなのに。
始まりはあの時に、勇者が突っかかって来たからだ。
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『城内訓練所にて』
訓練所は勇者の実力を観ようと、騎士や兵士でごった返していた。
「はぁ〜」
こいつら汗臭いし、人混みは嫌いだが、姫様はここで一緒に訓練してるかもしれないから探さないといけない。
サヴァトはシルヴィアがいたら知っているルーガの所へ向かった。ルーガはこの訓練所の責任者で、シルヴィアと訓練出来る、数少ない実力者の1人だ。
ようやくルーガを見つけたが、肝心の姫様は居らず、勇者と戦っていた。
「はぁ。おいルーガ、シルヴィーは?」
ルーガに姫様がいるか聞くと、勇者が睨んできた。あ"?なんだよ勇者、睨むなよ。
「おぉ、これはサヴァト様、シルヴィア姫はついさっきまでいましたよ?今はこの勇者様がいらっしゃってます」
チッ、一足遅かったか。もう帰ろうかな。
「おいそこのお前」
「あ"?なんだよ?」
そういえばお前って言葉、久しぶりに聞いたな。
「何故シルヴィアをそんな風に呼んでいるんだ。ふざけてるのか?」
なんだこのクソ勇者、姫様を呼び捨てとか用が済んだらペットに喰わせてやろうか?それに姫様は幼い頃から俺だけにそう呼ばせてるんだよ。そうあれはまだ俺が人見知…
「それにその態度。なんだよ期待はずれみたいな顔にため息、お前よりは強いわ!」
…えっ?は?なに?見た目からして戦ったことも無くてナヨナヨしてるのに?
「ぷっ、くっ、アッハッハッハ!」
「な、何がおかしい!」
「いや、気にしなアッハッハッハ」
「ふざけるな!決闘だ!」
「えっ?嫌だよ、忙しいのに」
まったく、なんでお前のために時間を割かないといけないんだよ。
「ユート様、ここは抑えてください。あなたではまだ足下にも及ばないので。サヴァト様もです。訓練しないのなら戻ってください。」
「そうだな、シルヴィーもいないし戻るか」
「足下…にも…」
勇者はルーガの言葉にショックを受けていた。あ〜ぁ、ルーガ。正直なのは良いがそれを本人に直接言うのか。面倒くさい展開になる前に逃げるか。
「って、おい!待てよ、逃げるな!俺と戦え!」
勇者は俺の前に回り込んで、出入口に行かせないようにしてきた。嫌だよ雑魚の相手なんてめんどくさいし、姫様を探さなければ。
「ふむ、そうですなー。そこまで言うのなら模擬戦をしてみてはどうですか?そしてサヴァト様の実力を見た方が良いのでは?勇者様はまだ魔法が使えないので剣だけですが」
えー、初級魔法位は使えるでしょ?
「勇者様とサヴァト様の模擬戦か〜」
「やっぱりサヴァト様の圧勝かな?」
「いやいや勇者様も頑張るだろうし」
「でもサヴァト様って次期宮廷魔導師だろ?剣って使えるのか?」
「馬鹿野郎、知らないのか?騎士の中でも実力は上位の方だぞ」
「剣も扱えて魔法も扱えるから実質この国で一番じゃないか?」
不味い、兵士達の雰囲気が…
ではサヴァト様、木剣です。とルーガが言いながら渡してきた。
いらねぇし、余計な事するなよ。
「ふん、ボコボコにしてやる」
「ルールは殺しと魔法はなし。それでは模擬戦を開始する。始め!」
「「「ウオォォ!」」」
勝手に始まったし。面倒くさ。
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『優人視点』
あいつはボコボコにしてやる。俺の正ヒロインをあだ名で呼びやがったし、こっちを見てため息をつきやがった。剣術はやったことないけど取り敢えず剣道を真似れば良いだろ。
「そっちから良いぞ、勇者様」
チッ、舐めてやがる。
「後悔するなよ!」
ぜってぇボコる!
「メェー「勝者サヴァト様!」
ーーーッ
み、見えなかった。結果は惨敗だった。木剣を上に振り上げたらその間から剣先が喉に触れていたのだ。つ、強すぎる。
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『サヴァト視点』
弱っ!?なにがしたかったんだ?全く、本当に時間の無駄だった。それに姫様もどこにいるか分からなかったし。
どこにいるか分かれば…ん?どこにいるか……分か…れば?
「すまん、急用が出来た。訓練頑張れよ!」
忘れない内に、この画期的な魔法具を作らなけれ…
「あら、サヴァト。あなたもいたの?」
ーーーッ
こ、この声は!
「私も勇者様の訓練に触発されまして、訓練をしようかと思って、着替えてきましたの」
き、キター!!!!ナイス!勇者!いい足止めを喰らったお陰で姫様を見つけれた。
「実は俺もでして、久しぶりに一緒に訓練でもしませんか?」
「えぇ、昔とは違うのでお手柔らかに」
いえ、全然変わってませんよ、姫様。その白銀の鎧とツヤツヤキラキラの金髪が陽の光を反射して1層輝いて見えます。まさか!姫様は美の女神か!?いや美の女神より美しくしいだろ。女神なんて信じてないがな!あぁもう可愛いな。鼻から出血多量であの世に行きそうだ。
「サヴァトいきますわよ!」
「はい!いきそうです!」
マジで可愛いし美しい。
「サヴァト!」
はっ!
「す、すみません。少し考え事に呆けておりました」
「全く、しっかりしなさい。では改めて、いきます」
その後サヴァトは、シルヴィアの鎧姿のインパクトにより、マジックアイテム作成のことをすっかり忘れてしまったのだった。