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ダンジョンコア 魔宮 日向 lv.1③

遅れました!

 マップが表示される。

 2Dの、見下ろし視点はほんとうにゲームのようで、『設定』を散々にカスタムしたこともあって使いやすい。

 俺は、そのウィンドウを眺めつつ、まだ少し検証をすることにした。検証厨もびっくりなほどの動きをしてるが、この世界で頼れるのは俺とナズナだけ……ナズナも神々に贈られたことを考えるの、実質信じられるものは自分だけなのかもしれない。


 俺以外に不可視の設定をして、ステータスウィンドウを表示。

 SPの項目に注目。そのポイントを割り振る。

 剣術、槍術、体術、弓術、斧術、棒術、爪術……など、様々な武器スキルが現れる。

 他にも回避、隠密、威圧、下級魔法、中級魔法、魔眼などなど、様々なアクティブスキルも現れる。その数100は越えるだろう。


 ──絞り込み、とか。


 今持ってるSPでとれるスキルを優先表示し、後半に灰色でSP不足で修得できないものを表示するように変更する。


 ──さらに絞り込み。『偽装』『並列思考』『思考遮断』系のみを表示。


 ステータス偽装……1SP

 偽装……1SP

 並列思考……3SP


 ギリリ、と奥歯が音をたてた。ぼんやりと考えていた計画が、第一歩で頓挫した。

 どうせあの神のことだ。俺の思考を覗いているんだろう。

 もしそうだとしても、遮断系のスキルがあれば、並列思考で考えている全ての思考を読み取ることは不可能だと仮定したら? 神々を殺すための兵隊作りのアドバンテージに、なる、はずだったのに。

 いや、こう考えよう。

 神々が油断してる間に神殺しの軍団を完成させる。そうすればなにも問題はない。


「マスター、どうしたの?」

「……いや、ダンジョンの構成を考えていたんだ」


 ナズナが俺の目を、覗き込んでくる。

 その純真な目を見ていると、神殺しに巻き込んでいいのか、迷う。……味方を選り好みしてられる場合じゃないって言うことは、わかってるんだが。


「よし、決めた」


 とりあえず今は、ダンジョン防衛だ。




 今の構成は入り口、小部屋(森)、ダンジョンコア、住居。その4つが直線で繋がっている。

 配置変更を使用して小部屋とダンジョンの間を、広げる。ダンジョンコアは入り口と繋がっていないといけないので、その間に通路と小部屋を配置する。配置変更を10秒いないに終わらせたことに安堵する、消費DPは最小限になった。

 もう一度マップを見直す、どこか間違えていたらやり直すことになる。


 入り口、小部屋(森)、小部屋、小部屋、大部屋、ダンジョンコア、住居。


 ……大丈夫そうだ。

 当面はこの配置で防衛していくことになるだろう。そして掘削したマスを残らず領域化する。

 たったこれだけで246DPを消費した。一瞬で消えていく数値に、恐怖が込み上げてくるが、気合いで抑え込む。



 次は戦力……眷族を召喚する。

 スライムを5体。ゴブリンを15体。ファンガスを5体。

 ──いや、スライムとファンガスは6体ずつにしよう。合わせて330DP。残り1424DP、大丈夫、まだたくさんある。


 そして変更。

『ゴブリン召喚魔法陣』を20DPへ振り直す。これが徴収されるのは日付変更時だが、毎日減ってくので厳しくなったら変更しないとな……。


「大体、こんなもんだろ……」

「できたの? 見たい見たいっ」


 俺は設定を少し弄って、ミニマップ用ウィンドウをナズナにも見えるように再表示する。設定って便利……。


「わっ、随分大きくなったね」


 ナズナは俺のとなりで、寄りかかってくる。手元のウィンドウを見るために仕方ないとはいえ、近すぎませんかねぇ。無防備すぎるとも言えるが。

 ムクムクと沸き上がる性欲を、抑え込む。そんなことしてる時間はまだない。


 ……いつか、余裕が持てたら──。


「よ、よし。ボスを作るか」


 頭を振って、煩悩を振り払う。

 ゴブリンを5体、スライムとファンガスを1体ずつ残し、その他の眷族たちをダンジョン内に放つ。

 そしてまずはゴブリンたちに命令を下す。


「お前らはダンジョンの外にでて、様子を見てこい。弱い生き物を見つけたら殺さず連れてこい。5体でまとまって行動し、何かあればすぐ戻ってこい」


 斥候として、訓練もなにもしてないから不安だが、これで何かが連れてくれればいい。

 ダンジョンに人を呼び込むのは、宝か、実害のどちらかだ。今は後者に賭ける。


「さて、スライムとファンガス。お前たちには進化してもらう」


 ぷるぷる震えるスライムと、哀しそうな顔をした1メートル大のキノコに告げる。

 拒否権もないことだし、侵食を選びDPを注ぐ。



 生まれたのは、赤く変色し、ボウッとライター並の火を出したスライム。

 ニタニタと気味悪い表情をし、白い胞子を笠から振り落としているキノコ。


 ──スライム・レッド

 ──ファンガス・ドラッグ


 それが新しい眷族の種族だった。


「スライム・レッド……お前は『ベス』と名付ける」


 さっそく属性魔法持ちの魔物を手にいれたのは順調だ。それが例えスライムの、火傷させられるかも微妙な火力でも、十分だ。

 でも、レッドって。スライム・レッドって。

 赤いよ? 確かに赤いけどスライムベスでよかったじゃん。スライム・ブルーとかスライム・イエローもいるのか? スライム・シルバーを倒すと経験値がたくさん手に入るのか?


「ファンガス・ドラッグ……お前は『オオバコ』と名付ける」


 タイマって名前にしようと思ったけど、やめた。確かに麻薬で人生壊した人の顔してるけど、眷族な以上、大切にしてやりたい。

 さっきナズナが教えてくれたんだが、オオバコの放つ胞子ってガチもんの麻薬らしい。他にも精神汚染系の魔法を使える個体もいるらしい。

 想像以上に有能な眷族を手にいれたようだ。


「ベス、オオバコ、よろしくな。……ホブゴブリンも一旦来てくれ」


 名付けた眷族たちを軽く撫でてからダンジョン内に放つ。オオバコを触ったあとの手はきちんと拭っておこう。なんか怖いし。

 入れ違いになるように、亜人走りをして躍り狂うホブゴブリンが現れる。俺と目が合う、ホブゴブリンが口を開く、俺は耳を塞ぐ。


「グギャァァァ‼」

「うるせえって言ってんだろ」


 知性がねえのかこいつは……俺の顔見る度にギャアギャア騒ぎやがって……。


「お前を『ハウル』と名付ける。叫ぶな、もう行け」

「ギャアアア!!」

「うるせぇ」


 こいつ叫ぶなって意味を理解してないのか? あ、いや、でももう行けって命令は理解してるしわかってて叫んでんのか……。

 はあ……とりあえずは、ダンジョンとしての形になっただろ。あとは俺とナズナのスキルを獲得して、数ターン待ちって感じかな。

 寿命は残り23時間30分を切った。とはいえチュートリアル報酬で100ptはあるから実質的には、残り3日か。


「召喚できる魔物が増えてるな」



────────────

 スライム・レッド200DP

 ホブゴブリン500DP

 ファンガス・ドラッグ700DP

────────────



 進化に必要だったDPとぴったり一緒だ。つまり直接召喚なら元眷族分は節約になるな。だが眷族たちは、時間さえかければ、DP使わずに進化するらしいからな、侵食は必要最小限にしよう。


「ナズナ、ほしいスキルとかあるか?」

「え、スキル? うーん、『生活魔法』くらいかな~」

「生活……?」

「うん、体を綺麗にする魔法とか、消臭する魔法、あとは小さな火種を作る魔法があるんだよ」


 それは、確かに必要かもしれん。これからダンジョン暮らしなわけで、湯船に浸かれるのは、当分先のことになるはずだ。臭いは、確かに気になる。


 生活魔法……1SP


 SPに余裕のあるナズナに取得させる。どうせ俺が取ったところで、魔力ないから使えないしな。ははっ。


「ナズナ、生活魔法使ってみてくれ」

「わかった、やってみる……『クリーン』!」


 ナズナが俺へと手を向ける。その手のひらから小さいあわが幾つも出てきたかと思うと、俺へとぶつかり、身体を爽快感が駆け抜けた。


「……お、おお! 予想以上に良い」

「そう? マスターが喜んでくれてよかった」


 はしゃぐ俺を、暖かい目と微笑で見つめるナズナは、心からそう思ってるようには見えなかったが、気づいてないふりをした。

 あって数十分程度、まだまだ信頼されるとは思っていないさ。出会いが出会いだったしなぁ……。


「よし、他にもほしいスキルがあったら言ってくれ。俺も自分のスキルを選ぶ」


 ──絞り込み。『思考』『召喚』『創造』『強化』系で1SPの物を優先表示。


 身体強化……1SP

 思考速度上昇……3SP

 並列思考……3SP

 召喚術……3SP

 死霊術……3SP

 強化魔法……3SP

 劵族創造……5SP


 思いの外、スキルを獲得するのがきついことがわかる一覧だった。そして身体強化を取ろうにも、俺自身が戦うことになったらダンジョンの敗北だ、取る意味はないだろう。

 ……貯蓄するか? 正直、並列思考を取るために溜めておくのはありだが、熟練度なんかがあるなら早急に取って鍛え上げたい。それにいつポイントを獲得するかもわからないしなぁ。


「ね、マスター決まったよ」

「お、なら──」


 そこでビービーというけたたましいアラート音が響いた。それは設定で俺が決めていた、侵入者の合図だった。


「──なら、まず侵入者を撃退してからだな」







 手が震える。動悸がする。今にも逃げ出したい。逃げ場所なんてない。

 俺にできるのはただ、侵入者を撃退することだけ。


 ぱんっ、と両頬を叩くと若干の痛みと共に勇気が訪れる。

 ウィンドウをポップさせる。どこにカメラが仕掛けられていて隠し撮りしているのか、詳しく見て回ったわけじゃないからわからないが、ダンジョン入り口付近の映像がリアルタイムで見れるようになった。

 ナズナがじぃ、とこちらを見ていたので、設定を弄ってナズナにもウィンドウが見えるように設定する。……ついでだ、ナズナをサブマスターに登録。権限は……大体半分くらい与えておこう。


「敵さんはゴブリンが……五体かな?」

「みたいだな。──ホブゴブリンを含むスライム総員に告ぐ。『侵入者を撃退せよ』! 続いてファンガス・ドラッグ含むファンガス総員に告ぐ。『眷族を援護せよ』」


 俺は倍以上の戦力を一度に当てる。下作に思うかもしれないが、逃げられたら増援呼ばれて詰みだし、ポイントが足りなくて俺が死ぬ。

 ゴブリン一体でも召喚するポイントがもったいない現状だと、最初から最高戦力で被害を最小限に抑えたほうがいい、はずだ。

 ……くそ、戦略ゲーをもっとやりこんでおくんだった。


 別ウィンドウでミニマップを表示。

 眷族を青色で、侵入者を赤色で表示する。また、領域化されてるマスを薄い色で表示。……そうだな、灰色にしよう。

 ミニマップ上で確認しつつ、ナズナと二人で、見守る。

 眷族と侵入者が、接触した──


 先頭を走っていたホブゴブリンがゴブリンを見つけた瞬間、あの忌々しい咆哮をあげた。侵入者のゴブリンたちは、怯えた様子でこん棒を構え、逃げ出そうとするが、遅い。

 ファンガス・ドラッグ率いる部隊が胞子を飛ばす。その効果はまだ見たことがないから興味はあるが……なんで眷族のスライムたちはそんなに大きく後ろに下がっているんだろうか?


 薄く黄色く見える胞子を吸い込んだ侵入者と、一番槍ホブゴブリンに、変化があった。

 二体のゴブリンは身体を痙攣させながら倒れた。毒……いや、麻痺か? 正直断定はできないが、ファンガスの胞子は敵を止める効果があるみたいだな。後衛職だろうと予想していたが、やはりだ。

 一体のゴブリンは逃げたようだが、他は酷いな……。名前から予想してたが、やはり薬物系か? 涎を垂らしながら歩こうとしては足をもつれさせ、立とうとしてはブリッジしているゴブリンたち。


「ファンガス部隊は再び胞子を出して撤退! ファンガス・ドラッグはもう何もするな!?」


 慌てた指示を出す。

 やばい事体が起きている。ファンガス・ドラッグの胞子を吸い込んだうちの一番槍ハウルが、白目剥きながらこん棒を振り回し始めた……。幻覚を見ているようで、壁を殴りつけては味方の方へと近づき、怯えたように後ずさっては麻痺してる敵ゴブリンを叩き潰した。

 フレンドリー・ファイアだけは勘弁な……?


 狂戦士ハウルが暴れ始めてからたった十数秒で決着はついた。

 まず、唯一胞子を吸わなかったゴブリンがハウルに噛み付かれ、絶命。

 ハウルはファンガスの胞子を吸い込み麻痺してぶっ倒れた。スライム部隊に回収させる。

 残っているのはもはや戦闘なんてできる状態にないゴブリンが三体。ベスによって焼肉にされた。ダンジョン内で火を使って酸欠も勘弁な……?


「死体は回収…… よし、上手くいったみたいだな」


 ゴブリン5体討伐で100pt。死体5体分で1pt。合計で101ptの戦果で、こちらの被害はハウルが昏倒しただけ。つまり無傷ってこと。


 こうして、俺は上々の成果で、初のダンジョン防衛を、成功させた。


ダンジョン勢力

201pt

344DP

レベル1  0/100EXP


ナズナ1人

スライム5体。スライム・レッド1体

ゴブリン15体。ホブゴブリン1体

ファンガス5体。ファンガス・ドラッグ1体


ゴブリン1体/60分 →翌日から『ゴブリン1体/30分』へ変更


※『劵族』が一般的ではないようなので『眷族』に変更しました。

が、SPで修得できるスキルは『劵族創造』です。ダンジョンモンスターとの差別化のためです

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