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喪失者 白鳥 恵子 Lv.4⑥


優先順位を決めよう。

残り時間は20分を下回った。できる限り効率的に狩りを行いたい。


まず最優先は生存。つまりはレベルアップであり、ゴブリンの巣穴から突入後の脱出だ。

巣穴の大きさはわからない。しかも出払っているゴブリンたちが戻ってこないとは限らないことが先程証明されてしまった。


つまりは入ったらできうる限り最速で出なければならない。



それはいい。

じゃあ狩り方を考えよう。……落としたままであった虫アミを拾い上げ、ヒビの具合を確かめる。

んー、ん? ヒビが見当たらない。つまり耐久は1減ったけれど特に問題なく使えるってことかな。


人間的なステータスで考えると、体力が3割削られたけれど今すぐに死ぬわけではない。

って感じかな。耐久ってつまりは物の体力なわけでしょう?


うん、虫アミ君は前線へ復帰。頑張れ。



他は爆発の魔方陣とカンテラ用の油(瓶詰め)だ。

メリットとしては広範囲攻撃手段が手に入ること。

デメリットとしてはそれが完成するかわからないこと。どれだけ時間がかかるかわからないこと。完成したとして、使用したら私も巻き込まれること。


その辺の検証は残り20分ではできない。

それにアイテムボックスについて検証したいことも増えたが、時間はない。


つまりはゴブリンの巣穴へと入り、レベルアップに必要最小限な経験値を溜める。

そしたら一旦ここまで戻ってきて、検証をする。レベルアップの確認もしたいし。

そうして武装を強化……いや、最適化? したら再びゴブリンの巣穴へと潜り、全滅を目標に暴れる。


よし、決定。

右手に槍を持って、左手に虫アミを持って。早速突撃!




「……くさい」


巣穴に入った瞬間、思わず愚痴ってしまうほどの臭気。

じっとりと気持ち悪い湿気だけではなく、むわりと薫る臭いは腐臭というよりは性臭だろうか。

……ナチャーロ付近にいたゴブリンだけが予想通りで、もしかしたらトゥルーフ周辺のゴブリンは清廉潔白な奴らかもしれない、なんて幻想を捨てる。


ゴブリンはゴブリンか……。


出会ったゴブリンは躊躇いなく殺す。そして私が捕縛されたら即自殺。

もし苗床になってる女性がいたら、本人の意思を尊重する。


「地球にいた頃とは、ずいぶんと死が近くなったなぁ」


地球でも、すぐ近くに自殺はあったんだけどね。

電車に飛び込む人を目の前で見たこともあるし。一度線路に突き飛ばされたこともある。


自殺を考えたことは、一度しか無かったけれど、うだうだと迷って結局できなかったというのに。今じゃきっと迷いなく実行できる。

……ああ、隆昭君と出会ったのも、自殺しようと迷ってた時期だったっけ。


ああぁぁぁ……隆昭くんに会いたいぃぃぃ……!


なーんて余計なことを考えながら進むと、別れ道に辿り着いた。そしてそこには、3体のゴブリンがたむろしていた。

私の姿を認めると、1体が通せん坊するように立ちふさがり、残り2体はそれぞれ別の別れ道へと走っていった。


別れ道がある分岐点で見張りを立てる、なんて随分と頭のいい……。私の思うゴブリンってここまで知性があるとは思えないんだけど、まずは。



右手の槍を突きだし、ゴブリンの腹部に風穴を開ける。ダメージを受けて倒れかけているゴブリンに向かって虫アミを一閃。

しかしそれは空振りに終わる。アミが風を受けて、どうしても速度にムラが出てしまう。


「ギャァァ……」

「やっぱり生きてる」


もしかしたら槍の一撃で死ぬかとも思ったけれど、そんなことはなったようだ。だからこそ追撃したんだけど。

虫アミをポケットに仕舞いつつ、槍を構え、振るう。


コイツを倒したら逃げたゴブリンを追わないと。

仲間に合流する前に叩ければ楽なんだけど……!


ゴブリンは地面を転がり突きを避けた。そのまま剣を振るってくるかと思ったら、フェイントのようだ。大きくとびずさった。

……本当に時間稼ぎに徹するつもりみたい。に、しても、なんでこんなに知性があるんだろう。

こいつ、ゴブリンだよね?


槍の降り下ろし。意外なことに剣で防がれるが、その腹へと中段蹴り。……手応えは薄い。

咄嗟に飛んで受け流した?


「ちょっ……!?」


変な考察をしていたら対処が遅れた。

剣を振るおうと振りかぶった上で、その剣を離す。そんな奇行を行いつつ、私の腹へとタックルをしてくる。

動きづらくはなった、そして槍で攻撃できなくなった。けれど、それだけだ。

槍をポケットにしまうと、そのゴブリンの頭を掴む。限界以上に首を回してやると、ギ、ギ、ギ……ブリキの玩具みたいに動く。


限界を越えたらしい。

ゴキン、と大きな音と一緒に、ゴブリンの力が抜けきった。予想以上に時間をかけさせられたことにイラつく。

壁へと思いっきり叩きつけてやる。


「あーーー……くそっ」


柘榴を壁に全力で叩きつけるとどうなる?

飛び散る。


まあ、ようするに脳獎が飛び散り、私の足や、ローブにかかった。しかも叩きつけた音が反響して……敵が駆けつけてきた。

しかも、1体や2体じゃない。


……どうしようかな。

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