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旅人 白鳥 恵子 Lv.3&4

なぜ3と4がくっついたのでしょうか。答えは最後に



『現在のレベル3。次のレベルまで240EXP』

『残り時間2時間59分58秒』

まず第一歩。羽リン──羽生えたゴブリン──が味方を殺して、多分レベル上げしている間に出来るだけ距離を取り私もレベルアップを目指す。

ざっくり言うと、それが私の大博打の内容だった。

まず羽リンは本当にレベリングしているのか不明、それにもしそうだったとして時間をかけると倒しにくくなるって言うことに繋がる。

そして魔物を一撃で倒せるかどうかの心配。刺突スキルが運良く初見の敵を即死って効果みたいだからそれでなんとかなったところだけど、そうとうに危うい橋を渡ってしまった。

……あれ?でもゴブリンに剣を持たせただけで初見の魔物扱いになったのかな?それとも即死の時だけ刺突スキルが発動していて、確率発動なのかな……?

危ない危ない、その可能性を考慮しなかったら狼にヒット&アウェイかましに行くところだった。

次に、寄ってきている魔物はどうやらゴブリンが8割であるということ。まあ、ゴブリンと言っても種類が豊富みたいだね。剣持ってたり弓持ってたりピッケル持ってたり。

そしてこの博打が上手くいってるだろう最大の理由は、羽リンの攻撃に一度も当たってないこと、かな。


「ステータス!」

────────────

名前:白鳥 恵子

年齢:19歳

性別:女

種族:人間

職業:旅人

レベル:3/99

体力:83/91(121/137)

魔力:34/41(48/62)

攻撃力:16(24)

防御力:64(101)

敏捷:26(39)

精神力:30(45)

幸運:17(26)

所持金:125ロト


装備

右腕:スピアー(攻20)

左腕:

身体:ローブ(防10)

装飾:幸運の髪止め(幸5)


アイテム

柏の壊れた弓(攻1)


スキル

槍術2

回避2

刺突2

威圧1


固有スキル

流浪▽


称号

頑丈▽

────────────


……MPも、減ってる。多分刺突スキルだよね。何回使ったかは忘れたけど、10回くらいだから、1回2MPかな。つまり即死効果は確率、使用宣言でMP消費ってことかな。でも2MPで即死効果付き突き……ごめんなさい。まあ、スキルが使えるなら良い方じゃない?

回復がいつするのか分からないけど、連発は出来ないな。回復する手段か別方法を考えないと。

「ギギィ!」「ギィギィ?」

本当に休む暇もない。ゴブリンが主だからなんとかなってるけど、にしても厳しいよここ。

さて、に踊りかかってきたゴブリンに目を向ける。今回は2体だ。

ボロボロの剣と盾を持つゴブリン、普通のこん棒を2本両手に持つゴブリン。こん棒両手持ちの方、他の魔物を倒したあとなのか返り血を浴びている。……油断はできないかな。

こん棒よりは剣の方が危ないよね。先に倒しちゃおう。一応初見の敵だから効くはず……!刺突。

まっすぐに突き出される槍、戦士くんは避けようとせずに盾で防ぐことを選んだ。その盾は金属製ながら手入れされていないようでボロボロで穴が開いてるところさえあって、その穴に穂先が刺さり、止まった。

「ギギッ!ギギィ」

嘲笑うように剣を振りかぶる戦士くんを見て、その後ろにこん棒を持ったゴブリンも見えて、勇気を出す。

槍を手放す。

そうすることで振り降ろされる剣の範囲から逃げる。そしてこん棒を降り下ろす前に接近、腕を殴るようにして方向を変えてすぐ戦士のところへと戻る。盾に足をかけて全力で槍を引き抜く、と盾がひしゃげつつ抜けた。

「──ふぅ」

怖かった。

槍が奪われなかったこととか、こん棒を逸らしたときにもう片手に当たったみたいで不発になったこととか、羽リンが足元に群がるスライムを鬱陶しそうにしながらも殲滅してることとか。

運が、よかった。いや、運が良ければそもそもあんなハプニング起きてないか。

リベンジしよう。決まれば有利になるのは私の方だもの、刺突。

また戦士くんが盾を構えてきたけど、その盾はさっき私の蹴りでひしゃげてしまっている。そこに私の鍛えた(?)刺突が突き刺されば……盾ごとゴブリンの頭を吹き飛ばすことくらいできる。

というかやっぱり即死なんだね、刺突ってすごいスキルだね。

両手のこん棒による二回攻撃を半身になって避ける。その際に穂先をゴブリンの頭にめがけて突き上げるが、上を向くように顎をあげることでかする程度の傷しか与えられない。

そんな反撃をしていたから。横から突進してくる羽リンを避けられない──

金属音。

乙女の柔肌は紅い三叉槍でさえも弾いた……ように思えるが刺された脇腹から出血している。包丁でざっくり指を切ってしまった感じの出血。そこそこ痛いけど、これくらいで済んで良かった。

なんか羽リンでさえも驚いたような顔してるし?

この世界に来てから、初めて痛いと思った。私の防御力ってどれだけ高いんだろうね。こん棒持ち君を諦めて逃げる、羽リンを相手にするのは少しどころじゃなく厳しいから。だから羽リンの攻撃で痛みを感じないレベルまで上げてからじゃないと攻撃しない、それでいこう。

少し離れたところにピッケルゴブリンがいたので、物は試しと刺突を使わずに槍で突いてみることにした。

走っていたからか、このゴブリンがすごいのか、頭を狙って放った一撃を首を傾けるだけで避けられてしまう。その後、私に向かって振り回されるピッケルをなんとか避ける。

「……やるわね」

「ギギィ」

きっと、お前もな。って言ってるんだよね、うん、わかるよ、わかる。でもごめんなさい、これ戦いなの。刺突。

腰に当たった刺突はゴブリンの肉を抉り、お腹に穴を開けるだけではなく上半身と下半身を分断した。グロテスクな光景に思わず騒然。吐いたりしないのは慣れたからだろうか?

「ギィィ……」

「え、まだ生きてるの?」

上半身だけになったゴブリンはもはやピッケルさえも持つことができないのに私に這いずり近づいてくる。

「さよなら」

足元にやってきたゴブリンの頭めがけて足を踏み下ろす。バキャァ、と嫌に軽い音と共にゴブリンは絶命した。……あれ?ゴブリンの死の間際に見えたのってローブの中の私の下着?

わーほんとに死んでるのかなー確認のために何回か踏んでおかなきゃー。

羽リンの方を見ると、意外なことにこん棒両手持ちくんを瞬殺できずにいた。2箇所ほど傷を負い瀕死なものの、こん棒くんは死に物狂いで連撃を放つ。羽リンは避けてから三叉槍を突きだしても当たらない。

やっぱりあのゴブリン強かったんだ!

でもいい、こっちは別の敵を探さないと。

「グルルル……」

獣の唸り声?声が聞こえたのは私の右手側。そっちを見ると綺麗な白い毛を持った大型犬くらいの大きさの狼がいた。でもその白い毛は赤く染まっている部分もあり、狼は足を引きずりながら私に近づいてくる。

「足を怪我してるんだったら勝てるかも……刺突!」

当然のごとく外した。というか避けられた。なんで足引きずってるのにそんな速度出せるのかってレベルで避けられた。多分ステータス差が空きすぎてるんだろうなぁ、ってことは避けきれないか。

うん避けきれないね、乙女の柔肌を傷つけることも出来ないけど。逃げよ。

その後ウルフから逃げてゴブリン2体、鉱夫ゴブリンも2体、剣と盾持ち──戦士ゴブリンとしよう──を1体倒した。刺突が6回かかったけれど、2発しか食らわなかったし、ただのゴブリンに関してはもはや一撃で削りきれるまで成長していた。

ああ、途中で羽リンが突撃してきたけど回避して反撃してやったら普通に避けられた。まだまだ倒せそうにないね。当然逃げたよ?

視界の上をちらりと見てみると残り経験値が30まで減っている。これなら、と思わないでもないけど、羽リンも双棒ゴブリンとか首なしゴブリンとか倒してるからね……。

地力の差のせいで向こうの方が討伐数が多い、レベルアップをしたのかは分からないけど、倒せるようになるんだろうか?



そこで、面白いゴブリンを見つけた。

なんと、ゴブリンの頭が光っているのだ!ハゲなのは他のと一緒だからなんとも言えないけど、ホタルみたいに黄緑に、私と目が合うと赤色におでこを光らせていた。あれ、あの……ヘルメット着けた猿みたい……。

ってうわわ、他のゴブリンが集まってきた、あの赤い光ってゴブリンを呼ぶ効果があるのかな。ってことは黄緑は回復?そんなわけないよね、ははは……。

「刺突ぅぅぅ!!!」

即排除。敵、増える、やだ。

ひょこりと避けられる。……意外と、早い?下手すると狼並の早さかも。そして発光体は……背中向けて逃げ出そうとして──って、えぇ!?逃げるの!?

槍で払う……よし、転ばせることはできた。けど側転っぽい感じでくるりと体勢を整えられる、なにそれかっこいい。

発光体が殴ってくるけど、そんなへろへろパンチ当たんないよ。拳を振り抜いてる後なら当てられ、ない、まって羽リン来ないでー!?

いった!痛いんだけど!左腕!二の腕ー!

やったなこの、右足の顔狙い蹴り。外れ。

サマーソルト気味に左足で顎狙い蹴り上げ、外れ。

蹴り上げた足をそのまま踵落とし!これも外れ。

でも羽リンがバックステップで若干距離が開いた。

ざっと40体はいるだろうゴブリンたちが私と羽リンを囲うように近づく。羽リンを私よりもゴブリンの掃討を優先した。私も一点突破して逃げよう。

羽リンが三叉槍を振り回したことでしゅんころされたゴブリンの死体が私の方に飛んでくるけど当たらなそうなので無視して刺突。

ゴブリンの頭を貫いた槍を抜く勢いで石突を後ろから近づくゴブリンに当てる。

あた、当たった!よし、私の突きはゴブリンの右目を捉えたようで、不快な断末魔と共にゴブリンが絶命する。

そこに飛んでくるゴブリンの死体。見なくてもわかる、羽リンだろう。


『テレテレテテテテン』


ごまだれ。

羽リンの方からも『ぱんぱかぱーん』って聞こえてきたからレベルアップしたみたい。最悪。


『残り時間2時間38分55秒37……』


『現在のレベル4。次のレベルまで398EXP』

『残り時間3時間59分59秒』



「ゴレガ……チガラカ……!」

知らないよ!ああ、もう!周りに敵が多すぎる!

見てもあるのは基準のわからない数値だけだ、とステータスの確認は諦める。


ゴブリンへ普通に槍で攻撃。刺突が無くなっても倒せるかの確認は必要だしね、MP節約のために!

万が一にも刺突が働かないように剣のように穂先で切り裂く。正確にゴブリンの首筋を切り裂いた私の槍を止めることはしない。そのまま次のゴブリンへと意識と穂先を向ける。

やっぱりレベルアップはすごい、ゴブリンが絶命したか何て経験値を確認すれば分かることだ。もしかしたら羽リンにも──いや、まだ、だめだ。

私を取り囲むゴブリンの数は多い、少なくとも10は越えてるだろう。だけど、勝てる気がする。

突いて払って蹴って投げて刺して払う。5体のゴブリンを殺す。後半の2体はステータスに変化があったのか、身体が軽かった。ゴブリンの死体を吹き飛ばしつつ戦うと、自然と私に向かう攻撃は減っていく。今は、もう、逃げ道が出来た。

逃げるの?本当に逃げて良いの?

ゴブリンとスライムしか倒せない私には、この森を出てレベルが上げられるのかという不安が残る。狼は倒せないし小さな悪魔だって倒せるかも分からない。それよりだったらこの森全てのゴブリンが集まってると思わせるほどのこの群れをちまちま狩り続けた方が、生きていられるんじゃないか。

答えはすぐに出せない、だから少し距離を開けるだけに留める。

羽リンが見えないけどすぐ見つけられる場所で、攻撃できないけど視界の端には移る場所へ。


『ヒット&アウェイ』

それが私の目標で、1回のヒットでゴブリンを絶命させられる。途中何度も危うく攻撃をもらいそうになるけれど、回避スキルのお陰か無理に身体を捻ることで避けられた、

残り時間を見ることはせずに戦う。時間に余裕があると知っても油断し、余裕がないと分かると焦る。それなら確認しない方が良い。いきなり死ぬことになったとしても、それは敵の不意討ちをくらうのと同じことだと納得させる。


『現在のレベル4。次のレベルまで18EXP』


気づけば、私の周りにはゴブリンの死体から溢れ出た血で、小さな水溜まりが出来ていた。その数およそ10。

私のローブにも血がかかっている。そりゃそうか、あれだけ機械的に刺し殺していれば、返り血も浴びるよね。

「……もうやだ、こんな戦い」

日本に帰りたい。彼の腕の中で、平和すぎる光景を目にしながら眠りたい。

まだこの世界に来てから半日も経っていないだろう、けれど、その時間がグロテスクで、精神が折れかけていた。



『キィィ!キィ……キィィ?』

黒板を引っ掻いたような不快な鳴き声。落ち込んでいる気持ちに無理矢理活を入れ、視線を上げると、ヨコシマさんに警告されたのは正しくこいつだろうという、小さな悪魔が浮いていた。

その藍色っぽい黒い体皮はテカっていて森のなかじゃなければとても眩しくて見ることは出来ないんじゃないかと思う。

口からは小さな牙が覗き、バサバサと音をたてて羽が風を切る。クルリと一巻きした豚の尻尾のようなそれの先は槍のように広がり、先端は尖っている。

はい、以上描写終わり!

「刺突」

『キィィ!?』

慌てたようにバサバサと上昇、すれすれのところで穂先は尻尾にさえ当たらない。

ノイズ。きっとその表現が正しいような音。

目の前に魔方陣が浮かぶ。びっくりして身体が硬直するがすぐに回避行動をとった、が、遅かった。

風の塊だろうか?半透明な物がぶつかってきたのは分かったけれど、それだけしか分からなかった。

避けることが出来るだろうか?あと、何発耐えられるだろうか……。

「……ここで、死にたくはないけどね」

もう一度、攻撃を仕掛けてみよう。それでダメなら逃げる、大丈夫きっと倒せる。死にはしないよ。

「ヤッ!」

私の突いた槍が、悪魔の首へと真っ直ぐに突き刺さる、と思われたその瞬間、悟った。

──避けられる。

羽を使って後ろへと飛ぶ、そうして空いた若干の時間で身体を捻れば、多分、避けられると思う。

『──キイ!?』

閃光がはしる。

私の髪を留めていた髪留めが、光って、そして壊れた。結っていた髪が解けてしまったが、その光は悪魔の目を焼いたようで、回避を封じた。

「──通らない、なんて……」

そう、結果は、槍が弾かれて終わった。傷をつけることも、出血させることもできなかった。

足元に落ちている髪留めの残骸を拾い集め、ポケットへ突っ込む。

悪魔がいまだに目を押さえている間に、私は逃げることにした。


「レベルが上がったら、街へ行こう……装備を整えないと、ずっとこの森にいることになっちゃう……」

ゴブリンは簡単に見つかった。槍で払うように側頭部を殴り付ける。木にべちゃっと当たってゴブリンが死んだ。



『テレテレテテテテン』

レベルアップ。私の心は、もう折れてしまったのかもしれない。

唯一の隆昭くんのと繋がりが壊れた。

でも、今の状況では、泣くことさえ許されない。


『残り時間3時間17分38秒04……』



『現在のレベル5。次のレベルまで735EXP』

『残り時間4時間59分59秒』

いい加減リトルラグエルから逃げながらゴブリン倒すだけの描写が厳しいからだよ!!!!


あと髪留めは壊す気なかったんだけどね、ダイス目だからね、仕方ないね。

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