旅人 白鳥 恵子 LV.2
テスト期間で昼夜逆転のテンションだったんです(言い訳)
読み返してみて頭抱えたから推敲するの諦めちゃったテヘペロ☆
「これが、レベルアップ……?」
少しの違和感。気力が溢れてきたり、力がみなぎる訳ではないけれど、思いっきり運動した後にスポーツドリンクを飲んだような心地よさがある。
そうだ、とりあえずはステータスを確認しないと。
「ステータス!」
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名前:白鳥 恵子
年齢:19歳
性別:女
種族:人間
職業:旅人
レベル:2/99
体力:73/73(94/110)
魔力:31/31(47/47)
攻撃力:12(18)
防御力:54(86)
敏捷:16(24)
精神力:24(36)
幸運:16(24)
所持金:77ロト
装備
右腕:スピアー(攻20)
左腕:
身体:ローブ(防10)
装飾:幸運の髪止め(幸5)
アイテム
こん棒(攻10)
柏の壊れた弓(攻1)
スキル
槍術2
回避2
刺突1
固有スキル
流浪▽
称号
頑丈▽
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「頑丈って何よっ!?」
能力が上がってることとか!スキルもレベルアップしたり新しいのが増えてたりすることとか!称号が追加されてるとか!色々確認したいことはあるけどまずその称号の名前をどうにかして!
……はぁ。
頑丈の説明文を開く。
『とにかく固い人に捧げられる称号。防御力5%上昇』
この怒りはどこにぶつければいいの?ああ、もう。次にあった魔物は容赦しない、それで手を打とう。……滅多刺しにして『狂人』とかの称号がつかないようにしないと。はぁ。
もういいや、能力が上がってること。レベルアップで能力値が上がるのは分かってたけど……前回のステータスを覚えておけばよかったなぁ。どのくらい伸びたのか分からないや。
そしてスキル。スキルもレベルアップしたり新しいのが増えてたりするね。槍術が2になってるから上手く扱えるようになったのか、上手く扱えるようになったからレベルアップしたのか。それはよくわからないけど、分かるのはちょこっと成長したと言うこと。
そして新スキル『刺突』は、どういうものなんだろう?説明が折り畳まれてるわけではない。うーん?
とりあえず使ってみようかな?
ゴブリンがぴょこりと顔を出す。もっと可愛い顔だったら喜んだのに。
私がさっきまで溜めてた怒りをぶつけるべく睨み付けるとゴブリンは震えて転んだ。……そこまでされると傷つくよ?この世界は私のことが嫌いなの?
もう一匹ゴブリンが顔を出したけれど転んでる味方に駆け寄った。そして震えるゴブリンを抱きしめて「なんでこんな酷いことするのよ!」とでも言いたそうに私を睨むゴブリン。
なんだろうもう嫌になってきた。
「刺突」
ゴブリンに槍を突き出す。声を出したら身体の動きに若干補正が入った気がする。
倒れてない方──ゴブリンBとしよう──の顔を狙った槍は、赤い螺旋を描きながら眉間を捉え、ゴブリンBの頭上半分を消し飛ばした。
「えっ」
「……ギィ!?」
いや、そりゃ茶番してたら相方が爆死したんだもんね、ビックリするよね。技を放った私もビックリしてるもん。
「ギィ……?ギィギィ!」
震える身体でゴブリンAは死体に擦りよった……何度揺さぶろうと、彼──彼女?──は目を覚まさない……。
「ギィィィィィィィ……ギィィ、ィイ……ッ!」
ゴブリンの、悲しい叫び声が森に響く。どれほどの者が彼──彼女?いや、ゴブリンAは多分彼──の声を聞くのだろうか?そして、いったい誰が、彼の願いを聞き届けてくれるのだろうか。
「ギィッ!ギィ……ギィィ……ッ!」
溶けていく彼女──ゴブリンB、死んだ方──の身体。光の粒となって、彼女の身体が消えていく。
彼──ゴブリンA、茶番してる方──は必死に光の粒を掴もうと虚空に手を伸ばすが、その手は何も掴めない。
次々に彼女が消えていく。彼に止める方法は何一つない。ずっと泣き叫ぶことしかできない。
「刺突」
私の放った一撃は、ゴブリンAの頭を狙ったが。槍を掴まれて止まった。……爆散させた威力はなんだったの?
「ギィィッ!!」
ゴブリンは立ち上がる。その手にこん棒を持って。彼女への意思を胸に抱いて。
──ゴブリンの身体が光に包まれる。まるで、死んだ彼女が彼を祝福しているかのように。
ミチミチという肉を無理矢理引き千切るような音。そして大きく膨れ上がるゴブリンの身体。
恵子は知らないが、これは魔物の進化であった。
ただのゴブリンが、愛する番を殺され、怒りで限界を越えたのだ。
「ギッ……ガァ……!……ゴロジデ、ヤヴゥ……!」
「喋った!?」
光が収まったとき。そこに立っていたのはもはやゴブリンではなかった。
リトルラグエル。
ラグエルという上級悪魔の子供、その力は下級悪魔ほどでしかないが、ゴブリンからの進化としては異例の大出世であった。
ゴブリンの100センチほどの小柄な体格は160センチまで成長し、青年ほどの大きさとなり。緑がかった体皮が黒く、しかし威嚇するような赤黒さへと変化している。
次に目につくのは羽だ。灰色の、けして大きくはない2対の羽。
おおよそ飛ぶことは出来ないだろうその翼に、彼はなれていないのかピクリとも動かすことが出来ていなかった。
「ナゼ!ガノジョハ、シナナゲレバ、イゲナイ!」
その日駆け出しの冒険者の溜まり場である始まりの森に、堕天使となりいくつもの街を滅ぼす存在が生まれ落ちた──。
「……えぇ?」
どうしよう、なんかすごい、茶番が洒落にならなくなってキラーパスされた感じ。ま、まあ、倒す?それしかないよね?てか私に倒せる?レベル2!私まだレベル2だよ?神様たちふざけてない?
というかあのゴブリンが持ってたのこん棒だよね?こん棒だったよね?
……なーんで紅く輝く綺麗な三叉槍になってるのかな。
あれか、倒してその槍を奪えって言うことなのか。倒せません無理です。
逃げる?でもギッラギラに光る目は私を捉えてるし……防御特化でもあの攻撃なら一撃食らうだけでも不味そうだしなぁ。
……あーあ、横山?横寺?よこしまさん?ヨコシマさんでいいか、助けに来てくれないかなー。
──そして、緊急事態発生。周りに耳をすませてみる。
ギィギィというあの不快な感じはゴブリンの鳴き声。そしてネチャリネチャリと近づいてくる水音はスライムかな?さっき見かけたときはあんまり音しなかった気が……まあ、なんかの魔物。
そして狼の遠吠えも聞こえてきた。
次々に顔を出す魔物の群れ。……もうどうやっても勝てる気がしない。
「……えっ」
羽生えたゴブリンが近づいてきたゴブリンを三叉槍で刺し殺したんだけど!?
フレンドリーファイアの文字が頭で踊る。でも、言葉を話せるほどの知性を持つ魔物が仲間を殺すかな?誤射って訳でもなさそうだし。
──思いつく1つの大博打。成功確率なんて合ってないようなものだし、私が賭けるのは自分の命。
でももし、羽生えたゴブリンがこのまま他の魔物を殺すとしたら……。
でも、良く言うでしょ?「1%でも可能性があるならそれに賭ける」って。
まず疑問1。私の攻撃でゴブリンが1撃で倒せるのかどうか……これは刺突で威力を増しても一撃なのかは分からない。一回掴まれたしね?
そして疑問2。私が何回羽生えたゴブリンの攻撃を耐えられるか……そればっかりは分からないけど一撃死ではないと希望的観測をしておこう。
さて、そんなこんなで立てた作戦はこちら。
「なんとかしてあの三叉槍を奪う」
まあ、これが出来たら苦労しないよね。このなんとかしてってのは羽生えたゴブリンを倒すって方法もあるけど、私は攻撃力低いからなぁ。
そして羽生えたゴブリンが……長いから羽リンにしよ。その羽リンが味方を倒してる間に逃げる。これは多分敏捷的に厳しい。
だったらさ。レベルアップすれば良くない?
羽リンが突っ込んでくる。
その突き出される三叉槍に向かって私は──その辺にいたゴブリンを盾にする。
首根っこを捕まれた名も無きゴブリン君は槍に貫かれ絶命した。……これ経験値入るかなぁ?
まあ、ゴブリン1体くらい誤差だよ。誤差誤差。
私も槍を握る。ついでにポケットからこん棒を取り出して握る。
……これさ、二刀流~とかやったら当たる気しないけどさ。刺突の補正がかかる動きを両腕同時なら当てられるんじゃない?
出来ればダメージ2倍だしね!
「刺突!」
やはり少しの補正がかかる。そして突き出された槍を避けたゴブリンはこん棒に頬を鋭角に殴られる。
あ、やばい。初手からミスった。ここで一撃で倒せる予定だったんだけど。
飛びかかってくるスライムを避けて、ゴブリンの反撃をかわして、羽リンの三叉槍は外れる。
私の動きも大分マシになってきたんじゃないかな!!
「これでとどめになりますように。刺突」
また槍を避けられてこん棒だけ当たる。これさ、槍だけの方が強いんじゃない?こん棒を投げ捨てる。
そしたらまたさっきから殴ってるゴブリンに当たった。あの子はこん棒に愛されてるのね。
羽リンがその辺のゴブリンを刺し殺した。……予想だけど彼もレベルアップを目指してる。きっと、街を襲うため。
彼より先にレベルアップして倒さないと……。まあ、最悪ヨコシマ君がなんとかしてくれるよ。
刺突を避けられるけどそのまま振り払う形でゴブリンのこん棒を払い、石突で刺突。ゴブリンは息絶える。
次の目標はさっき飛びかかってきたスライム。魔物なら羽リンの近くに何十体もいるんだけど私のそばにいるのは存外に少ない。そうじゃないと対処しきれてないし。刺突。スライム爆散。意味わかんない。
休む暇なく来たのは懐かしき炭鉱夫のゴブリン。ピッケルを添えて。刺突。
私の放つ突きは炭鉱夫ゴブリンの左肩を抉る。しかし無事な右腕で反撃を放ち……金属音。正体は乙女の柔肌。
ってちょちょ、羽リンも攻撃してきた!?
三叉槍に私の槍を当て、払う。それだけだとまだ私に当たるのでなんとか避ける。そのまま羽リンから逃げるように距離を取る──けどその前に炭鉱夫くんに止めだね。刺突。
よし、炭鉱夫くんの顔面に槍が突き刺さり消える。そのまま戦線離脱。羽リンも近づいてきていた弓持ちゴブリンやスライムを突き刺して殺しているからか、私を積極的には追ってこない。
はやく、はやくレベルアップしないと……!
「え?」
すごい場違いな生き物発見。
それは白くて耳の長い生き物の代表格、ウサギさんだ。スライムをニチャリニチャリと食べてるから可愛いとは言わないけど場違い。
魔物、だよね?倒していいんだよね?あ、でも声を出すとバレそうだから刺突は無し。当たれー……!当たれー!
私がひっそりと近づいて……一気に槍で突く。しかし背中に眼があるのかと言わんばかりの速度でかわされる。それだけでも驚きなのに私とウサギの緑色の目が合ったと思ったら……ウサギが残像を残す速度で逃げた。
「倒したらすごい経験値になったんじゃないかな……?」
まあ、それは置いといて。レベリングに戻ろう。羽リンはまだこちらに来ていないけど槍を構え直した。近くの魔物に一撃放ったら即回避!と唱えながら目の前のゴブリンに刺突。
私の放つ刺突は吸い込まれるように剣士ゴブリンの眉間へと刺さり……いや、貫通した。カラン、という音と共に剣が落ちた。絶命した、のだろうか?
もしかして刺突って初めて戦う魔物に対して即死?私の思ってた使い方とまったく違う?あれ?
って羽リンが目の前に!この流れさっきもやったよ!
三叉槍が私の皮膚をかすった。そのくらいギリギリで回避が間に合う。二の腕にかすった暴力と死の気配に冷や汗がどっと吹き出して逃げる。
逃げた先にいるのはスライム。重力に負けて雫型ではなくフライパンの上に落とした白身みたいな形のスライム。刺突。
白身は一突きで地面の染みへと早変わり。
『テレテレテテテテン』
ファンファーレ。まったく計算してなかったし、見てなかったけどどうやら150EXP溜まったらしい。羽リンは炭鉱夫ゴブリンに三叉槍を避けられているところ。
つまりステータス確認くらいなら出来そう。
これでレベル3。一体何レベルくらいまで上げたら羽リンを倒せるんだろう?それか倒さずにもなんとか逃げる方法を探したい。
『残り時間1時間41分32秒24……』
『現在のレベル3。次のレベルまで240EXP』
『残り時間2時間59分59秒』