表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/142

旅人 白鳥 恵子 Lv.1

バベルver1.1アップデート情報

称号機能実装

固有スキルと称号について詳細表示(通常折り畳み)

モンスターとスキル増量


サンプル20番までの方々のアイテム欄にお詫びの品(エリクサー1つ)を配布しました。

※エリクサー……体力と魔力を全回復させ、状態異常を治す薬。


『サンプル番号24、白鳥恵子。ようこそバベルへ』




最初に感じたのは膝の痛みだった。


先程まで受けていた、一度死ぬと言う苦痛。

動悸が激しく、身体が思うように動かない恐怖と、気絶する痛みと気絶さえ許さない痛みが断続的に続いていた。


私は膝をついた。


気持ち悪くて胸を抑えながらも周りを見渡すと……ゴツゴツとした岩が剥き出しで生えている。


「意味、分かんないんですケド……」


採掘場、なのかな?

そして死ぬ前に受けた説明を思い出す──


『これより現在のレベル×1時間後に、あなたはもう一度死にます。死にたくないのならば、必死になってレベルを上げましょう』


『レベルアップ時にカウントダウンをリセットいたします。99レベルになったとき、初めてカウントダウンは止まります』


確か、そう言っていた。そして今の私ならステータスを見れると言うことも、言っていた。


「えっと……すていたす?」




────────────

名前:白鳥 恵子

年齢:19歳

性別:女

種族:人間

職業:旅人

レベル:1/99


体力:68/68(104/104)

魔力:26/26(39/39)

攻撃力:11(17)

防御力:48(72)

敏捷:9(14)

精神力:11(17)

幸運:13(20)


装備

右腕:スピアー(攻20)

左腕:

身体:ローブ(防10)

装飾:幸運の髪止め(幸5)


スキル

槍術1

回避2


固有スキル

流浪▽

────────────




ステータスを見て思い出した。

ゲームをしたことはなくてよく分からなかったから、自動生成を押したんだった。……まあ、ギャンブルは好きだからね。そういうランダムに賭けるのも好きだし。


ゲームと言えば彼氏の隆昭たかあきくんが結構やり込んでるんだよね。

ゲームしながら百面相していた彼を見るのはとても楽しかったし、満たされた。私を抱きしめながらゲームをするのが好きだった彼の癖は、私にゲーム知識を植え付けてくれた。

……でも、もう彼とも会えないのかもしれないと、そう思うととても悲しくなってしまう。

私の初めての彼氏で、唯一の幼馴染みで、結婚を誓った仲で……唯一、嘘を吐かなくても良い人だった。


そんな彼から貰った髪止めが、ポケットに入っていた。

私は肩を越すくらいの長い髪を結う。簡単にポニテで良いだろう。


「守ってね、隆昭くん」


ステータスをもう一度よく確認する。

職業が旅人って言うのには、触れない方がいいのかな?……私、方向音痴なんだけど。


槍。

この、最初から持たされていた槍は、スピアーという名前らしい。今持っている武器はこれだけなので、大切にしたい。


「生き物を殺すなんて、出来るのかな……」


でも、そうして経験値を貯めないと死んじゃう。

死んじゃったら隆昭くんにも、会えなくなっちゃう。それだけは嫌だから。


「……固有スキル?」


流浪、と書かれているその隣の三角を押すと、説明文が展開された。


『装備品を含むアイテムの個数が5個以下でステータス1.5倍、切り上げ』


今持っているアイテムはスピアーと着ている白いローブと髪止めの3つだから、効果が適用されて、かっこの中に上昇した後の値が乗っている、のかな?


このアイテムのカウントに下着は適用されないんだね。

ちゃんと上下つけてるけど──これは元々つけてたやつだけど──異世界でも下着はあるのかな?というか下着はそのままとは言え、服装が変わってるのは如何なものかな!

着替えさせられたってことは無いにせよ、お気に入りのキャミソールがどこに逝ってしまわれたのか知りたい。




「……うーん、どうしよう。──ッ!?」


足音。それも靴音と言うのが近いかもしれない。

コツコツ、カツカツという音はまるで私の位置が分かっているかのように近づいてくる。

もしかして、この世界の人?

それともこの採掘場を牛耳る魔人とか……!?

や、でもそうか。採掘場なら炭鉱夫の人がいるはずだよね。なら、会ってみても大丈夫だよ、ね?


「こんにちは、お嬢さん」


灰色のコートを着た、綺麗な紅い髪をした彼は私に左手で握手を求めてきた。


さらさらと風で流れた髪からは火の粉が散るようで、幻想的な異世界の風景に目を奪われた。次に目に入ってくるのは当然顔だ。はっきり言うと上の下。

整った顔立ちをしているけれど、隆昭くんと比べると見劣りするし、外国の顔立ちは正直私に合わない。


さらに目線を下げるとコートが目に入る。

さっきちらりと見ただけじゃ分からなかったけれど、何かの生き物の鱗が使われているらしい。

本物の体皮のようなコートは、私のもつ槍程度では傷ひとつつかないのだろうと察した。


さらに下に向いてズボン。普通。


靴はアーミーブーツだった。まるで軍人のよう。


「ああ、左手で失礼。……お嬢さんの名前は?」

「あ……わ、わたしは恵子っていいまふっ」


握手のために手を触れさせたら、痛くはないけど力強いその手に握りしめられ声が上擦ってしまった。

顔が熱くなる。


「俺は拓郎っていうんだ、サンプル番号5、君の先輩だよ」

「サンプ……えっ」

「サンプル番号。地球より無理矢理送られてきた哀れな探索者。……君の番号を教えてくれないかな?」


迷う。

……教えて良いのだろうか?彼は、信頼できるだろうか?

答えなんてどこにもない。


「さ、サンプル番号24ですっ」

「24、か……ごめん、少し待っててね」


彼は右手を耳に当てて空を見上げた。……そこでいまだに握手したままなのに気づいてさらに顔が熱くなる。


『サンプル番号24との対話に成功、サンプル番号20から23への接触を急ぐこと』


その、誰に向けたのかわからない言葉を聞いて、サンプル番号がある人全員に会いに行くんだなとはわかった。

きっと、仲間がいるとことも。


「……お互いに時間は無いから手っ取り早くいくよ。──ステータス」


いまだに私と手を繋いだまま、彼がステータスを開くと私の目の前にもウィンドウが浮かび上がった。

まさか相手に触れながらだと勝手にステータスを覗ける──ッ!?




────────────

名前:横山 拓郎

年齢:21歳

性別:男

種族:人間(奇形)

職業:双剣士・魔法剣士

レベル:100/99(成長限界)


体力:1423/1586

魔力:678/678

攻撃力:765

防御力:801

敏捷:1466

精神力:724

幸運:629

所持金:2,414,042,066,252ロト


装備

右腕:黄衣の王剣(攻400+風)

   混沌千面剣(攻600+被呪い)

左腕:生炎精の聖剣(攻400+火)

身体:ドラゴンコート(防300+火)

   鎖蛇の帷子(防400)

装飾:魔封じの腕輪(精350)

   魔王死霊華(敏150+被呪い)

   磁石式ピアス(幸5+通信)


アイテム

【閲覧不可】


スキル

剣術18

体術18

回避19

呪い耐性14

魔法耐性11

物理攻撃耐性15

威圧15

剛胆12

属性付加9

自己再生7 etc.



固有スキル

奇形の業

両利き

魔法剣の理

魔導砲


称号

邪神の加護

殺戮者

剣豪

────────────




なにこの数値。

というかレベルが100/99っておかしいよね、成長限界ってあるからそこがカンストなんだろうけど。

職業が2つあることとか固有スキルも4つあることとか称号があることとか。色々と聞きたいことはあるんだけど……一番目を引くのが体力だった。


だって。現在進行形にスゴい勢いで減少していってるから。


「レベル80以下のサンプル番号持ちと接触しているサンプル番号持ちには呪いがかかる。それがこの体力ってわけ。だから俺も君も時間がない」

「な、なんの目的があって……?」

「レベルが最大まで上がった人もいると教えることが1つ。レベル100まで高めた俺たちは同胞を探し味方に引き込む目的があるってのがもう1つ。……ステータスを見せて参考にさせることと少しのコツを教えることの3つかな」


たった1分くらいで彼の体力はもう3桁にまで落ちた。

急に彼が吐血したが、何事も無かったかのように話すので、私も内心すごく焦りながらそれに合わせる。

すこしでも情報がほしいから。


「レベルが7か8になるまではスライムかゴブリンだけを相手にするべきだよ。ゴブリンに関しては剣士職や弓職に魔法職までいるからレベル5くらいまでならすぐに上がると思う」


彼がまた吐血する。体力は700を下回った。


「ぁー……つら。狼やグレムリン、小さい悪魔は推奨レベルが10なんだ。下手に喧嘩を売ると即死するよ、君の先輩たちの大半の死ぬのはレベル10以下だ」


何か質問は?と聞かれる。彼の顔色が悪くなってきている。

そろそろ離れた方が良いんじゃ……。


「あの、この種族の奇形って……?」

「これだよ」


彼は右腕を捲る。

そこにある右腕の形がおかしかった。


肘先から2本に枝分かれしていて、まるで右腕だけ2本ついているかのような錯覚に陥る。


そして、初めて見た化物の姿に恐怖する。


「攻撃手段が増えるんだよねぇ」


ケラケラと笑う彼。

彼は、私がその右腕を恐れていると理解しているのだろうか?気づいているのだろうか?

体力が300を下回っていることに気づいた彼は、やっと数歩私から離れた。


「さて、行くとするよ。ここまで来て死にたくはないしね。……それじゃあお嬢さん、レベルが80越えたら、また」

「あ、ありがとうございました!」

「どういたしまして。……『転移石』」


彼がポケットから取り出した青い石を握る。すると彼の姿が陽炎のようにぼやけ、瞬きした瞬間に消えていた。

……残るのは私と、彼の吐いてできた血溜まりだけ。




「えっと、確か時間が……」


視界の右下を確認。


『残り時間51分21秒』


大体10分経っていた。

最初に3分ほど自分のステータスを眺めたり髪を結ったりしていたから彼と話したのはほんの5分ほどだ。

それなのに1500近くあった体力が300まで削られる。今の私で換算すると5分で10回死んだことになる。

そこまでして私にアドバイスをくれた彼に感謝する。


『現在のレベル1。次のレベルまで残り100EXP』


そして、視界の上。

残り100EXPは、最初から変化していない。……そりゃ、何も倒してないんだから仕方ないかもしれないけどさ。


「よし、頑張ろう……!」


槍を持つ。彼が言ってたことを鵜呑みにすると。

『スライムかゴブリンを倒せ』

『狼や悪魔をみたら逃げろ』

……だっけ?




歩くこと数分。

採掘場(仮)から木がたくさん見えていた場所へと向かっていた。


予想通り森みたい。

木の影でよく見えなかったけど、身長1メートルくらいの小人が見えた気がする。


「あれがゴブリンかな?」


皮膚が緑色だったし、そうなのかもしれない。


近づくと、鼻を摘まみたくなる臭いがした。お風呂に一週間入らなかったらこんな臭いになるんだろうかと思いつつ元凶を探すと緑の小人だった。

こいつをゴブリンとしよう。えい。


ぐさりと気持ち悪い感覚。目をつぶったまま突きだした槍の穂先は見事にゴブリンの脇腹を捉えていた。


「ギィギィ!!!」


ゴブリンが殴りかかってくる。反撃だーと言っている気がした。

ゴブリンを突こうとするものの、さっきの気持ち悪い感触、生き物を殺す忌避感からか外してしまう。


ゴブリンの振り回すこん棒が数回身体に当たるが、たいした衝撃もないのにゴブリンが逆に体勢を崩した。

そこを何度目かの突き刺しが捉えた。


呆れるほどにぐだぐだだった。

けど、なんか本気の戦いっぽかったと自分を褒め称える。


『現在のレベル1。次のレベルまで残り80EXP』


あと4体分かぁ……勝てるかなぁ。


「……なにこれ」


さっきまでゴブリンが振り回していたこん棒がそこに落ちていた。

あとは1枚の大きい銅貨と8枚の銅貨。

これがお金なのかな?さっきの彼にその辺のことも聞きたかったな。


とりあえずこん棒を持っていこう。

アイテムはこれで4個だし。でもこん棒は手で持ってないといけないからめんどくさいなぁ……ポケットに入ったりしないかな。


「えぇっ!?」


思わず叫んでしまうほどの驚愕映像。

だって、ポケットにこん棒を半分くらい入れたらこん棒が飲み込まれて消えたんだもん……。

ポケットの上から叩いてみてもそこには何も無い。ステータスを確認してみるとアイテム欄にはこん棒がしっかりと書かれている……?


「これ、アイテムボックスってこと?」


ストレージ、インベントリでもなんでもいい。

四角い立方体の世界でクラフトするゲームを思い浮かべる。あれはやらせてもらったこともあるし、スマホに入ってる。

恐る恐るポケットに手を入れる……けど、私が飲み込まれることはない。そこで「こん棒」と念じると指先が固いものを掴んだので引き抜く。


「取り出せた……」


なんとなくだけど使い方は分かった。もう一度こん棒をしまう。中々に便利な機能を見つけてしまったようだ。




『残り時間47分39秒』


ゴブリン1体に対して4分?

あ、違う、アイテムボックスのこともあるからざっと2分かな。


「それでも少し時間かけすぎだよね……もっと早く倒せるようにならないと」


気合いを入れてまたゴブリンを探す。

彼の言ってたレベル10を早く越えたい一心で前へと歩を進め、またゴブリンを倒す。




バカの一つ覚えで槍を突きだす。

しかし穂先はゴブリン当たらずに反撃されるが、槍で受け流して転ばせる。チャンスだと思って槍を降り下ろすも転がって回避されてしまった。


「……はぁ、はぁ」


すでに何度打ち合っただろう?

槍で突こうとしては外し、相手のこん棒を避ける気もなく身体で受け止め、足を攻撃されて転ばされては痛みもなく、槍を払うように振っても当たることはない。

ゴブリンが私をバカにするように突っ込んでくる。


「いい加減にしてッ!」


槍でこん棒を受け流す、払うようにして私の脇へと勢いを流して振り向くこともなく槍をただの棒としてぶん回す。

こんなところ隆明くんに見せられないなぁ、それともカッコいいと言ってくれるかな?と思っていたら手応えがあった。

偶然にもゴブリンの頭を捉えた槍は、そのまま木の幹にぶつかりゴブリンの頭を叩き潰した。


「うわぁ」


ニチョォ。槍に赤い糸が引いてる。

これゴブリンの血だよね……うわぁ……。

厳しい現実から目を背ける。


『現在のレベル1。次のレベルまで残り60EXP』

『残り時間41分39秒』




「もうやだ疲れた。……少し休憩しよう」


最初の場所に戻って、適当な岩に腰を下ろす。ゴブリン2体を倒す。言葉にすればたったそれだけなのに、なんでこんなにも厳しいの。


ステータスを覗くと体力が意外と減っていた。攻撃されたのも大体10発位だったから、1発1ダメージかな?

この防御力でも狼や悪魔なんかには一撃で倒されてしまうのかもしれないと思うとやるせない。


「伸び幅はありそうだけどなぁ」

「ギィ……ギィギィ……」

「──っ!?」


これ、ゴブリンの鳴き声?でもせっかく森から採掘場まで戻ってきたのに……。

森の方を見てみても何もいない。じゃあどこから……?


「ギィィィ!」


──後ろ?

振り向くと安全第一とかかれたヘルメットにピッケルを持ったゴブリンがいた。


そして私に向かって走ってきている。……ピッケルが重いのか足は遅いみたいだけど。

槍を突きだす。最初に比べたら随分とマシになってきた動き。……やっぱり反復動作の練習が一番なのかもね。


ガシッ、と槍を掴まれる。

振りほどこうにも、ゴブリンの方が力が強いらしく、手が離れることはない。

さっと、血の気が引く。どうしよう、武器を捨てる?でも殴るなんて槍よりも下手だろうし……ッ!?

ゴブリンが突き飛ばすようにして手を離してくれた。体勢が崩れるけど武器が奪われるよりは!?


ゴブリンののばした手の先には、魔方陣が浮かび上がった。泥団子のような塊が私に向けて発射される。



低い音。

着てきたローブが元より無かった勢いを削いでくれた。身体の痛みよりも精神にダイレクトアタックされてしまった。

距離をとる私と、果敢にピッケルを振り翳すゴブリン。正直逃げてしまいたいけれど、逃げたところで寿命が私を殺しに来るだけ……。

もう泣いてしまいたい。


「隆明くん……っ」


彼の名前を呟いても、救われるわけではない。

しかし、確実に心の負担を軽くしてくれる。彼に会うため、再開するために私は戦うんだ!

迫るピッケルを槍で打ち払い、そのまま石突をゴブリンに当てる。目を狙ったつもりだったんだけど、避けられてしまい右頬を抉った。


「ギィィィィ!!!」


そのがむしゃらな一撃は避けられない。

ローブに小さな穴を開けるが、皮膚に当たると金属音を響かせ弾く。

痛くないのは嬉しいんだけど……乙女の柔肌に当たって、金属音……?


再び振るう槍とピッケル。

数度打ち合い、時に打ち払う。

突きをかわされスイングを下がってかわす。


ゴブリン相手に槍の稽k……特訓をしてる気分になってきた。


お互いの得物が同じタイミングでお互いを捉える。

しかし私の身体は金属音と共にノーダメージ、ゴブリンは脇腹から出血。

ねえこれ私って防御特化?盾とか持って肉盾するべき?これでも女子大生だよ?ふざけてるの?


邪念の篭った一撃を外し、まっすぐなピッケルが当たって私の肌に弾かれる。ゴブリンは逃げようともしないんだな、と思いながら槍を突き出す。

果敢に責めるゴブリンは、突き出された槍に自分から刺さる形で致命傷を負い、絶命した。


「……長く苦しい戦いだった」


これ元ネタとかあるのかな?

隆明くんがたまに言ってるからオタク用語なんだろうなーとは思ってるけど。


ゴブリンの死体が消え、お金が残ったので拾う。

血溜まりに落ちているのにこの銅貨にはまったく血がついていない。なんでなんだろう?異世界七不思議の一つだ。あと六つはまだ知らない。


『残り時間35分12秒』


時間を確認して気づく。

さっきの炭鉱夫みたいなゴブリンを相手に5分ほど槍の稽k……特訓をしていたみたい。

この世界に来た時に比べると大分、槍の扱いには慣れてきた気もする。いつか槍以外にも武器を使ってみたい。弓とか。

アーチェリーとかね、親友の雫がやってるのを見て憧れてたんだよね。雫からコツとか聞いておくべきだった。


「武器って、作れないのかな」


敵から奪うのが手っ取り早いんだろうけど、弓を使うゴブリンなんているのかな?

あ、彼がいるって言ってたっけ?そもそも彼の名前なんだっけ。


作るだけ作ってみようかな……ほら、編み物とか得意だったし行けるよ!


「……やァ!」


手持ちの槍を使い近くの木から枝を切り落とす。刃が痛まないか心配だ……後で手入れの仕方も覚えないと。


「しならない、けど……いけるのかな……」


弓を作ろうとしてるけど、手に入れた枝はまったくしなることがない。少し力を加えてみたらミシミシって音がした。

と、とりあえず形にしよう。

槍を短くもって刃先で形を整える。時間制限もあるし急いで、なおかつ丁寧に。




10分後、上手く形にできた!


「おぉ……私って、器用なんじゃない……?」


少し浮かれる。

弦はその辺にあった蔦を利用した。矢はまだ無いけれど、初めて作った私の作品に愛着がわいた。

びよんびよんと、蔦を弾く。張りは良し!

ぐぐっと力を込めて引いてみr──あぁっ!?


「折れちゃった……」


やっぱりしならない木は問題なんだね。次作るときは弦のこともしっかり考えよう。


「あ、この弓でアイテム5つ目だ……」


ステータスを開いてみると装備左手に「柏の壊れた弓(攻1)」が増えていた。

──ん?なんか、ステータスに違和感?

あ、流浪の効果はまだ出てる。アイテムが5個ぴったしはセーフなんだね、良かった。もしダメだったらこん棒を捨てないといけなくなってたね。


『残り時間23分6秒』


さて、最後にゴブリンを倒してレベルアップしちゃいましょうかね!


「頑張ろう……っ!」


またこの採掘場でゴブリンを相手にするか、森に行くかで迷う。けど採掘場の、見える範囲に動く影はない。

……だったら森かな。


森に入る直前に、水色の液状が地面を這っていた。あれがスライムなんだろうなぁ、と思ってるうちに逃げられた。



森を進む。

足場が悪くて、どうも進んでいるとは思えないけれど、とりあえずまっすぐ進む。そして出口が分からなくなるくらいのところまで来たら印をつけてさらに進む。


木に私がつけた以外の印はあるか。

ゴブリンはいるか。

見たことのない生き物はいるか。

……そればかりを探して警戒しながら先に進む。


やっとのことでゴブリンを見つけたときには、もうクタクタだった。

早くレベルを6くらいまで上げて仮眠したいね。3時間でも、寝れれば十分だと思うから。


「やァ!」


槍を突き出す。

ゴブリンの腹部を綺麗に捉えたその一撃も、この世界では致命傷では無いらしい。

疑問と少し納得がいかない気持ちを無理矢理押し留めて槍を引き抜く。もはやゴブリン相手に回避は考えない。どうせ金属音と共に乙女の柔肌が弾いてくれるから。


「なんなのよッ!」


石突をゴブリンの喉へと突く。

……が半身になって避けられてしまった。なるほど、そうやって避けると良いのね。

私も真似して半身に……なれなかったね。横に振り回すこん棒を半身で避けようとするとかバカじゃないのかな。

自分で自分を貶すと同時に「もうしない」と心に決める。


「これで、止めッ!」


ゴブリンがこん棒を振りかぶる。しかし私の穂先が額を切り裂く方が早かった。ゴブリンはそのまま崩れ落ち、数枚の銅貨へと変化した。


『テレテレテテテテン』


そしてファンファーレ。ごまだれ。

思わずびっくりして槍を構えちゃった。



『残り時間11分32秒24……』


『現在のレベル2。次のレベルまで150EXP』

『残り時間1時間59分59秒』

8月18日、改行追加。微修正。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ