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旅人 白鳥 恵子 Lv.17 大討伐⑥

この子なんで魔物500体くらい蔓延る森で特訓を始めるんだろう……

 さて、リザードマンを私刑に処す前に、能力値をガン見しておこうかな。

 どれくらいの強さで殴ればいいのか。どれくらい殴っても耐えるのか。なんなら、鑑定のレベル上げにもなるからね。


「鑑定」



────────────

種族:リザードマン


体力:200/200

魔力:40/40

攻撃力:100

防御力:120

敏捷:95

精神力:90

幸運:60


装備

曲刀(攻撃40)


スキル

剣術4

回避3

自己再生2

五月雨切り2

────────────



 何度か鑑定をかけて、情報をまとめ直したらこうなった。

 鑑定って一度に見れる情報量に限度があるみたいなんだよね。多分レベル依存なんだけど、『鑑定2』だと6~8行しか表示されないから、3回ほどかける手間がかかっちゃった。

 時間かかったせいでこっちの能力値も見られちゃったみたいだけど、逃げられなければ、別に良いよね。


 踏み込んで、手始めに一発アッパーを打ち込んでみる。槍の攻撃力が無いせいで、その防御力かたさがよくわかる。

 さって、一発でいくら減ったかな?

 ──鑑定。



体力:171/200



 私の攻撃力は149だから、防御力120を引いて29ダメージ、かな?

 ってことは三叉槍の攻撃80で殴れば149+80=229の攻撃力。防御力を引くと109ダメージってことか。なんだ、意外と単純な計算で動いてるんだね、世界って。


「刀なんて使わないでさ、一緒に殴り合おうよ!」


 何とかして奪い取るか、武器を壊すか…… あの曲刀って持ってないから奪い取るのをメインにいってみようかな。


 リザードマンの踏み込みに合わせて足を払う。転ぶかと思ったけどなんとかバランスを取られたみたい。そのまま振るわれる刀を──パシッ。

 やったらできちゃった真剣白刃取り。そのまま奪い取ろうとするものの、思いの外握力が強くて取れない。仕方ないので刀の腹を蹴りつける。うっすらとヒビが入ったかな……? 程度のダメージしか与えることができず、仕方なしにバックステップで距離をとる。


 それから数回、空振りをしつつ刀を壊そうとする。

 私がへにゃちょこパンチをしては避けられ、反撃されそうになるも先ほどの白刃取りを警戒され全て直前で距離を取られている。

 リザードマンはどうやら逃げようとしている。けれどただのリザードマン相手に、1対1で逃げられるほど私はバカじゃない。昨日、一昨日では苦戦していた相手だってことを、忘れてしまいそうだ。

 私から視線が外れた瞬間に三叉槍を取りだし、わざと掠めるようにして振るう。その後は見せつけるように手元でクルリと回してポケットにしまう。


 じれったいことだろう。……うん、私もじれったい。


 でも、遂に! 遂に!

 私が放った回し蹴りがリザードマンの刀をポッキリと叩き折った!

 使い物にならなくなった得物を捨てると、リザードマンは私の見よう見まねのファイティングポーズを、見よう見まねで、真似た。つまり素人目にもわかるほど、全然なってない。

 泥試合が始まる。



 右ジャブ。左ジャブ。

 シュッ、シュッ…… 私のパンチが繰り出されるけれど、相手も楽々と回避している。そしてリザードマンの大振りの右ストレートやラリアットを、私も楽々と回避している。

 お互いに『体術』は低いのに『回避』は高いから当てることができない。

 今なら何のスキルを使わないでも理解できる。

 ──このリザードマン「俺、いま何してるんだろう……」って考えてる!


 リザードマンが大振りのストレートを構えると同時に、私も踏み込んでいた!

 これは、まさか……ッ!?


 ズシャア! ゴシャア!


 私の拳はリザードマンの右頬を捉えていた。しかし、同時にリザードマンの拳が私の頬を捉え……防御力に弾かれていた。

 さ、さすが乙女の柔肌……暴力で従えようとする男をはね除けた……?

 リザードマンがゆっくりと倒れた。死んだわけではないし、体力は半分くらい残っているみたいだけど、もう心が折れたらしい。


「グゥ、ギャァァ……」


 貴重なリザードマンの五体倒置。今から殴り殺すって、なんか可哀想な気がしてならない……。

 んー……でも折角のレベル上げだし、もう少し頑張ってほしいな……。


「ヒール」


 リザードマンに触れ、回復魔法を使うと、みるみるうちに傷が塞がっていく。

 敵に回復魔法を使われて、リザードマンは諦めた顔をしながら立ち上がった。弄ばれてると思ってるんだろうか、大体それであってるけど。



 いくらかコツが掴めてきた気がする。

 シュッ と突き出した拳はリザードマンの頬を捉えた。そしてさらに大振りになった相手の拳はさらっと避ける。

 大振りにならないように、できるだけ体の回転もくわえて打ち出すこと。ジャブで牽制して相手の動きを予測しやすくしてからストレートを打ち出す。あ、他にもこんなもとか。見よう見まねだけどッ!


 パァン!


 と良い音がして私のアッパーが決まった。

 リザードマンはそのまま倒れ、荒い息のまま動かない。


「ヒール」


 またも倒れたリザードマンに回復魔法を使う。

 魔法全部もレベル上げしたいけどね、さすがに時間がないかもしれない。

 けど、横寺さんがやっていたみたいに、武器に魔法を纏わせる方法が真似できれば、相当な戦力上昇になるはずだよね。魔力回復薬を体にかけながら、そんなことを考える。

 ……そうだ、体力の回復は魔法に任せて、回復薬は魔力だけにしよう。そうしたら節約に、なるよね。



 ふらり、ふらりと体を揺らし、今にも倒れそうになりながらも必死に拳を突き出すリザードマン。その表情は必死で、ただただ私を殺そうと、せめて一発でも殴ってやろうとしているのがわかった。

 スキルレベルが上がったのか、私のパンチはほぼ全てリザードマンに当たるようになってきた。けれどそれだとすぐにリザードマンが瀕死になり、魔力を使い果たしてしまうだけ……。

 これはちょーっとよくないかなぁ。


「うわ、っとと」


 回し蹴りを背中にくらってしまった。ダメージは無いけれど、たたらを踏んでしまう。

 そしてリザードマンの追撃を避けようとするけれど、少し体勢が悪い、このままだと避けれるけど転んでしまう。それなら、とわざと当たる。

 当たる瞬間に軽く跳び、衝撃を最小限まで抑えることで、すぐさま反撃に移れるようにする。


 数秒の滞空が終わり、着地した瞬間にリザードマンへと駆け出す。がむしゃらに突き出された拳を逸らし、鳩尾へ一発打ち込む。

 カハァ……と空気が漏れる音を頭上に感じながら、私はそのまま上段で拳を振るう。その拳は掠めるようにして顎を捉えた。

 白目を剥いて、リザードマンが倒れる。

 うん、この世界でも脳震盪って、起きるんだね。というか魔物にもキチンと脳はあるんだね。


「ふぅ……ちょっと休憩……」


 流石に少し汗をかいちゃったからね。

 私は飲み物を持っていないことを、すごく残念に思いながら、近くの木を背もたれに休むことにした。すでに大討伐のことなんてすっかり忘れてしまっていたけれど、魔物がまったく現れないのが悪いよね?

筆が乗った & 9月更新回数稼ぎのため、次回更新はちょっと早めの9月25日19時!


感想、ブックマークなど、おまちしております

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