表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/142

旅人 白鳥 恵子 Lv.9 ④

今回少し短いです

ご主人様(マスター)……」

目を開ける。私の膝枕で寝ているクロノスが寝言を言ったみたい。

おはようございます、まずは時間の確認から。


『残り時間1時間26分58秒』


ざっと3時間、目を瞑って休むだけのつもりだったのに少し寝てしまったみたい。うん、でも敵もいない。特に異変も無い、大丈夫そうだね。

クロノスの頭を撫でる。寝ていてもにへらっ、と嬉しそうに微笑むクロノスはとても可愛い。思わず頬が緩んでしまう。

「ん……ご主人様(マスター)?」

「あ、ごめん。起こしちゃったかな」

「んーん」

半分寝たままのクロノスは、私の膝から退いてくれたけれど、木に寄っ掛かってまた寝てしまったみたい。

そうだよね、赤ちゃんだもんね……。


クロノスを起こさないように立ち上がる。そしてポケットから槍を取り出して手元でクルクル。続けて弓も取り出す。……へぇ、ポケットの中身って共有なんだね。右ポケットに突っ込んで左ポケットから取り出すってことが出来るんだね。何か活用できそう。

例えば──


弓を構え、弦を引く。体から魔力の抜ける感覚と共に青白い矢が生成されたので狙いはそこそこに手を離す。

結果を見ることもなく弓をそのまま左ポケットに突っ込み走る。そして走ってる間に槍を構え、刺突を放つ。多少無理矢理でもスキル補正があり、レベルアップしたステータスもあればこれくらいできるみたい。


「キィィ……!」

猿みたいな声が聞こえる。ぷかぷかと宙に浮いている小さい人間は皮膚がシワシワで角もあれば尻尾もある。悪魔ってこんな感じだよねって姿をしていた。

そしてその悪魔を隠すように燃え続ける花がある。

矢は悪魔に刺さり、私の槍は花を突き刺した。それにしても燃える花ってすごいね、見た感じ火の魔法っぽいし花が萎れることもなければ嫌がってるそぶりもないし。

「キィィ!」

燃える花が蔓を伸ばし、突き刺そうとしてくる。赤い螺旋エフェクトもあるから刺突スキルがあるみたいだね。余裕をもって避ける。

小悪魔が火の玉を撃ってきた、刺突を避けたあとの体勢と魔法のスピードは、避けられそうにない。せめても、と身体を捻り急所に当たらないように努める。


──破裂。


脇腹をかするように当たった火の玉は、その瞬間に爆発して私を近くの木へと叩きつけた。流浪が無いから防御力も激減してるし、体力でさえも減ってる。

……ああ、つらいなぁ。現状無理なレベル上げなんだとは思うけれど、こうでもしないと休みながら経験値を稼ぐなんて出来ないと思う。それに地下には隆明くんとの、思い出の髪留めもある。行かないといけないっていうことは分かるけれど、逃げ出したいほどにつらい。身体中が痛い。

……耐えれて、あと2発かな。いや、あと1発食らった時点で死を覚悟するべきだと思う。なら──


槍に魔力を流し込む。するといつもの赤ではなく、青いエフェクトが灯る。それはリザードマンの3回攻撃のようで。

走る。燃える花の攻撃を避けてそのまま悪魔に攻撃を与えられる範囲まで走る。スキル名が勝手に発音する。

「三段突きッ!」

突き刺す、突き刺す、突き刺す。

引き戻す動作が無くなり、突きだしたら時間が消し飛んだかのように突き出す前の体勢に戻っている。3発当てたあとも重要だ。

槍を右ポケットへと入れつつバックステップ、左ポケットから弓を取り出す。近距離なら狙いはそこそこでも当てられる。

「キィィッ!!」

怒濤の4連撃でも、倒しきることは出来なかった。

私がやってるのは魔力を使ったスキルのごり押しと、ポケットっていう四次元空間を用いた両手持ちの効率化だ

弓を構えるのは左手だけで出来る。その後に矢を持って弦を引くけれど、矢は魔力で代用できる。

そして槍は右腕だけで攻撃出来る。左手はあくまで補助だ。

槍を仕舞うという行為を「矢をつがえる」という行為に似せてるから……屁理屈だよね。実際に出来ちゃってるから良いんだけど、相当な賭けだったね。


燃える花の蔓を避ける。ここまでは良い、さっきも出来たから。

目の前に迫る火の玉に対して、私は足へと魔力を流し込む。

──加速。

自分でも制御しきれない速度で横っ飛び。勢いがありすぎて木にぶつかってやっと止まる。これもスキルの力。

弓を仕舞い、槍を取り出す。また右半身を引いて構える。

「三段突き」

小悪魔を突き刺して殺した。引き抜こうとするけれど上手く外れなかったので放置。すぐに死体は消えるだろうからその時に拾えば良い、と割りきって弓を取り出す。

蔓が刺突を放つ。

小悪魔を倒すのに意識を割きすぎていて、燃える花の攻撃に気づけなかった。弓を叩き落とされる。


蔓の刺突と、火の魔術の2連撃をそのまま受けてしまう。けれどその魔術はさっきの小悪魔の数分の1程度の威力だったので痛みも感じない。

槍を手に取る。すでに小悪魔の死体は消え、お金だけが残っている。槍を手元でクルクルと回す。

三段突きスキルで、丁寧に3回刺す。さっきの小悪魔よりも固い?そこまで深く刺せないけど、ダメージ通ってるなら何回か刺せば死ぬよね?


威力が低いなら無理に避ける必要もない。その代わり避けさせもしない。防御力が高いなら手数よりもダメージ増幅スキルの刺突を使い、突き刺す。そこでまた火の魔術を使ってくるけれど左手で握りつぶす。これにはびっくりした様だ。そのまま刺突をもう一度刺し、殺す。

燃える花がお金と何かの種を残した。

『てれてれててててん』


いつぶりだろう?

頭の中にファンファーレが響く。

そして、お金や弓を拾おうとしたときにボコォと、地面が泡立つ。槍を構えて警戒するけれど、現れたのは地下への階段だった。

まだ、私は進まないといけないらしい。


『残り時間1時間25分1秒12…』


『現在のレベル10。次のレベルまで9388EXP』

『残り時間9時間59分59秒』



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ