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戦士 吉河 学 Lv.1

補則

この小説ではキャラクターの行動方針以外を全てダイスで決めております。

攻撃、回避、逃走、スキルの発動……などなど。

自分と相手のステータスから比を計算し、その値を成功値とします。100面ダイスを振り、成功値以下が出れば成功。成功値より大きければ失敗となります。



また、

1を『スーパークリティカル』、『超大成功』、『絶対成功』、『考えられる上で最大級の成功』。

2~5を『クリティカル』、『大成功』としております。


逆に、

96~99を『ファンブル』、『大失敗』。

100を『スーパーファンブル』、『超大失敗』、『絶対失敗』、『考えられる上で最大級の失敗』として処理しております。



前書き、後書き、活動報告などで『クリティカル』『ファンブル』の単語が頻出すると思うので補則説明をさせていただきました。



また、キャラクターの行動方針だけはダイスで決めない理由ですが、

そこまで運任せにしてしまうと『小説として成り立たない』、『人として考えられない行動ばかりする』という結果となってしまいます。

短編小説ならばそれも面白いのでしょう。

しかし、私が書きたいのは読者が面白いと思う作品ではなく、探索者たちが足掻く生き様です。そのために致し方ないことだと考えております、ご了承ください。

『サンプル番号7、吉河 学。ようこそバベルへ』


 いまだに収まらない動悸と目眩で、膝をつく。胃液がこみ上げるが抑えることもままならず、地面へと吐き出す。それだけじゃなく、柔らかい草むらでのたうち回る。

 だが、こうしているうちにも非情にも寿命が零れ落ちる。


『残り時間59分11秒』


「ふざけんなァッ!!」


 視界の右下で、止まることはないカウントダウン。睨み付けても、止まる気配はない。

 視界の上に意識を向ける。


『現在のレベル1。次のレベルまで残り100EXP』


 多いのか、少ないのか。それはまだ判断できない。

 しかし、わかるのは、レベルを上げない限り俺に待ってるのは、絶望と暗黒しかない死であるということ。

 ……もう、あんな苦痛を味わいたくはない。


「ステータスッ!」


 声を張り上げることで、自分を鼓舞する。今にも震えて泣き出しそうな心に活を入れる。

 そう、まずはこの言葉から始めるんだ。

 血肉に彩られる闘い溢れるこの厳しい世界を、俺は歩み始めるんだ。



 ────────────

 名前:吉河 学

 年齢:17歳

 性別:男

 種族:人間

 職業:戦士

 レベル:1/99


 体力:100/100

 魔力:10/10

 攻撃力:30

 防御力:30

 敏捷:20

 精神力:10

 幸運:10


 装備

 右腕:ロングソード(15)

 左腕:バックラー(15)

 身体:レーザーアーマー(10)

 装飾:


 スキル

 剣術1

 盾術1

 ────────────



 その数値は、多いのか少ないのかさえわからない。圧倒的な情報不足が生み出す不利的状況を、跳ね返すことができるのだろうか?


「くそ! くそくそくそ……くそッ!!」


 叫びつつ周りを見る、敵がいないかこの際いっそ人でも良い。経験値に変えられるものは、何かないのか!


 見つけた。


 少し遠くで水色の液体が跳ね回っている。……あれは、定番のスライムだろうか。

 剣と盾を握りしめる。なんとなく、なんとなくだが使い方は分かる。

 そこまで難しいものではない、剣は当てれば良いだけで、盾は防げば良いだけ。

 ……簡単だ、とても簡単だ。


 あと数歩で触れられる距離で近づいてから、やっとそのスライムは……球体をしていて、四肢もない身体を震わせた。

 ……目が存在しない相手と、目があっているかのような感覚。


「ウオオオオオオ!」


 叫び声をあげ、自分を奮い立たせる。剣の型も、何も知らない俺は、ただ剣を全力で振るった。

 スライムは避けようと身体を震わせる、が剣速に対して圧倒的に遅すぎる。俺の、叩き切るともいえないほど、上品ではない軌道を描いた剣は、スライムの体に当たった。

 何事も初めが肝心。……とても幸先が良い。


 真っ二つにスライスされ、ビクリと大きく震えたスライムは光となって消えていった。

 ……そこに残ったのは銅貨7枚だった。こうしてドロップアイテムやお金が残るのだろう。


 ──本当にゲームのようだ。


 視界の上を確認する。



『現在のレベル1。次のレベルまで95EXP』



 スライム1体で5EXP。つまりあと19体で俺は一時的な延命ができるということか。

 一応、時間も確認しておくか。



『残り時間57分34秒』



 およそ2分かかってスライム1体。間に合いはするだろうが、探す時間も考えるとギリギリか?

 ……刻一刻と迫り来る死の恐怖に背筋が凍る。必死で見ないフリをして、周りを見る。


 また遠くにスライムを発見した。

 1体だけだ、スライムは群を作ったりしないのだろうか。……いや、一撃で倒せたとは言え、スライムにだろうと殺されるかもしれないんだ。

 慎重に、それでいて大胆にいかないといけない。


 盾を握る。

 HPは全快であるから、一度くらい攻撃を受けてみるのも良いかもしれない。盾で防ぎながらだったら即死ってことはない、はずだ。

 少なくともこの賭けに勝つと、俺はこれ以降楽に狩りができる。ここは命を賭ける価値がある。


 盾を握る手が震える。しかし、その震えが命取りになるかもしれないと深呼吸で抑え込む。

 じりじり、とスライムに近づいていき、こちらを認識した辺りで盾に身を隠す。

 知性が低いのかもしれない。どちらにせよ、予想通り、スライムは飛びかかってくる──


 対した衝撃もなく、スライムは盾にぶつかり、跳ね返される。

 ……正直、そんなものかと思った。

 案外簡単にレベルが上がるのかもしれないと浮かれかけては、すぐに自粛する。

 油断大敵だ。


 スライムに向かって剣を振り下ろす。

 グニュグニュしたゲル状の感覚は相変わらず、しかし、何か固いものを切った感覚があった。

 スライムはその身体を一瞬で水へと変化させ、小さな水溜まりを作った。その水溜まりには同じく銅貨が7枚沈んでいた。


 銅貨をポケットに乱暴に突っ込むと、違和感を感じた。

 念のため、1度取り出してみる。

 ポケットに入れた銅貨は14枚のはずが、1枚の大きい銅貨と4枚の小さな銅貨へと変化していた。

 ここから導きだされるのは銅貨の他に大銅貨? があり、価値としては『10銅貨=1大銅貨』だということ。

 それと、ポケットに入れておくとお金は勝手に両替ささるということ。


 この世界の物価がわからない限りは、貨幣に意味はそこまで無い。

 せめてパンの値段でも分かるといいんだが……。

 再びポケットにお金を仕舞い、気持ちを切り替える。早いこと、次の獲物でも探さないとな。


『現在のレベル1。次のレベルまで90EXP』


 あと18スライム分。

 レベルアップが最優先目的だが、早いところ剣や盾にも慣れないといけないな。

 剣は振り下ろしただけ、盾は身を隠すように持っていただけだ。命がかかっている以上、技術を上げて損はないはずだ。なんならスキルレベルが上がってくれれば良いんだが。


 周りを見ると……どうやら、近くにスライムはいなさそうだ。

 しかし木がちらほらとしかない、林とも呼べないようなこの平原だが、向こう側に進むと森があるらしい。先に行くほど木が多くなり、最後には幹が邪魔で見通しが悪い森林へと変わる。


 ゴブリンと言えば森、森と言えばゴブリン。

 行ってみるか?


 ……しかし、俺はレベル1。勝てるかどうかもわからない。

 もう一度周りを見てみる。

 近くに村などはなく、人は見えない。スライムを探してももう見つけることはできない。

 非情にも時間は進み、それだけ俺の寿命も縮んでいく。……思い出すのは死の恐怖。


「行こう。無理だったら逃げて、スライムを倒そう」


 頬を叩き、気合いを入れたあと森へと歩を進める。




 右下の残り時間が55分を切ったころ、やっと生き物の鳴き声が聞こえてきた。


 身を低くして辺りを伺う。

 ……地面にはピンポン玉よりも一回り大きいくらいの石があった、これなら投げやすそうだ。完全な球体では無いものの、使い捨てには勿体ないほどしっくり手に馴染む石だった。


 っと、そんなことはどうでもいい。鳴き声の正体だ。

 ギャアギャアと叫ぶその緑の体皮をした身長120センチほどの小人は、腰に布を巻いただけの格好でこん棒を振り回し、踊っていた。


「……まさしく、ゴブリンと言った外見だな」


 つい、感想が口を出た。

 意外と通ったその声は、ゴブリンの耳にも届いたらしい。こちらを見てはまたギャアギャアと騒ぎだし、不用心に近づいてきた。

 つい焦ってしまい、腕だけでなんとか石を投げつけてしまう──


 しかし、当たることはなく明後日の方向へ飛んでいく。

 石は木へとぶつかると、軽く揺らす程度だったが、問題はそこじゃない。その木からスライムが這いずり降りてくる。


「……マジかよ」


 ゴブリンがこん棒を振り回すが、俺は大きく下がることで避けれた。


「反撃だ。くらえッ!」


 横凪ぎに払った剣はゴブリンの腹へと滑り込み……骨に当たって止まってしまう。大量の血が溢れだすが、一撃で命を刈り取ることはできなかったようだ。


 俺にこん棒が迫る──


 ギリギリで剣が抜け、後ろに転がり無様な姿を晒すものの避けきることができた。

 攻撃を食らいかけたことに、心臓が遅れて悲鳴をあげ、うるさいくらいに鳴り響く。

 戦闘中だ、黙ってろ。剣を持ち直し深呼吸することで無理矢理に抑え込む。


 スライムも近づいてきた、どちらを先に片付けるか……スライムならば二度も倒しているし、余裕で倒せるだろう。

 しかし、ゴブリンが確実に残るから攻撃はしてくる……また避けきれるかはわからん。

 じゃあ、ゴブリンを攻撃してみるか? 当てれるのかも、確実に倒せるかもわからん。倒せなければ2体から集中砲火の可能性がある。それだけは避けたい。

 悩んでる暇は無いみたいだ。

 ゴブリンがまた迫る。仕方ない、リスキーだが、先にギャアギャアうるさいゴブリンを片付けよう。


 瀕死のゴブリンの動きは遅い。

 ゴブリンの動きに合わせ、俺は真っ直ぐに剣を突き出す。

 刃が欠けるといけないから柔らかいところを狙う、ということを思いだし眼球を狙ってみた。


 緊張で手が震えたからか、いまだ慣れないからか……狙いは逸れ、眉間に突き刺さる。肉を刺す感覚と共に、ゴブリンはこん棒を落とした。

 どうやら絶命したらしいな。


 スライムが飛びかかってくるが、およそ距離感を掴めていない動きだ。俺に届くこともなく地へと落ちる。

 スライムだったら余裕で狩りができそうだな、と盾を突きだしスライムを地面と挟んで押し潰す。

 シールドバッシュと言うんだったか? 忘れた。


 液体を潰すのは無理があったのだろうか。するりと移動したスライムは盾の範囲から外れてしまう。

 そのまま飛びかかってくるスライムを半身になり、最小の動きでかわす。

 おおっ、今のはイメージの通りに動けたような気がする。だが、もっと敵の動きを見てかわすように心がけよう。

 俺の振るう剣が着地したばかりのスライムを捉え、その身体を両断する。


「はぁ、はぁ…………ふぅ……」


 深呼吸して、少し落ち着く。

 よし、なんとか戦えた。

 初めての敵、初めての複数相手。それに初めての武器持ちの相手。

 初めて尽くしの中ではよく動けていた、と自分を褒め称え、良かった動きを思いだし、悪い動きを見つけ出す。


 イメージトレーニングを手早く終え、ドロップアイテムを拾う。

 ゴブリンは大銅貨1枚に銅貨8枚、それに使っていたこん棒が落ちたままになっていた。

 スライムは相変わらず7銅貨。

 銅貨をポケットに突っ込み、こん棒を迷ったあげく腰に吊るす。ベルトの間に物を入れておくのは、中々慣れない感覚で、少し邪魔だが、売るとお金になるかもしれない。

 もしかしたらゴブリンの討伐部位かもしれない。ゴブリンの経験値を確かめるため、視界の上を確認する。


『現在のレベル1。次のレベルまで65EXP』


 スライムは1体5で、3体倒したから15。つまりゴブリンは1体で20か? 実にスライム4体分。

 命の危険があったから、良いのか、悪いのか……。


『残り時間50分47秒』


 右下を確認する。意外と時間が経っている。しかし、ゴブリン3体ほど倒せば延命できるともなると、少しだけ余裕が生まれる。




 木の影から1体のゴブリンが顔を出した。

 とっさに身を低くすると……よかった、気づかれなかったらしい。


 ゴブリンはそのままお仲間の──死体はすでに光の粒となり消えた──血溜まりに近づき臭いを嗅いでいるらしい。

 なるほど、血の臭いで寄ってくるのか。しかし、予想通りに知性は低いらしい。

 身を低くして臭いを嗅ぐゴブリンに向けて、全力ダッシュ。急に剣を構えた人間がドタドタと走ってくるのは驚いたらしい。


 隙だらけだ。


 振り下ろした剣がゴブリンの肩口から入り、袈裟切り、だったかな? として振り抜いた。

 ゴブリンはまたしも一撃では倒れないらしい。普通の人間なら死んでいてもおかしくないはず──と考えてステータスのHPの項目を思い出した。


 ゴブリンが反撃をしてくる、これもどちらかというとゲームのターン制に似ている気がする。

 盾を構える、こん棒程度なら受け止めて……受け止めきれるはず!

 ガイン、と衝撃。


 少し左手が痺れるものの、痛みはそれほど感じなかった。これはきっと受け止めきれたのだろう、と勝手に決めつける。

 剣を仕舞い、こん棒を手に取り強く握りしめる。

 せっかく手に入れた物だし、折れてしまってもまたこいつが落とすだろうと、フルスイング。

 掠りはしたものの、手応えがない。当たらなかったみたいだ。ちくしょう、流石に余裕出しすぎてるのかもしれない。


 そしてゴブリンもこん棒を振るうが腰が入っていない。

 初心者の俺の方が野球の才能あるぜバカ野郎、さっさと経験値になれってんだ。


 身体を捻り、全力で振るった二度目のフルスイングがゴブリンの顔面を捉えた。まるでトマトを床に落としたような気持ち悪い音がしたと思ったらゴブリンは二、三度バウンドし力尽きた。

 そこにはまた1大銅貨と8銅貨が残るばかりだ。……こん棒? サヨナラホームランしたときに折れたよ。


 はぁ、疲れた。

 正直もう帰って寝たい。


 ……あれ?


 家に帰れないのはまだしも、寝れないんじゃないか?

 だよな? だって睡眠時間が6時間だとしてもそれが出来るようになるのって7レベルに上がらないと無理だよな? そこまで最長で21時間かかるとしても多分その前に睡魔は来るだろう……。

 やばい。

 とてもやばい。

 さっさとレベルを上げないと寝ることすら出来ないのか……ッ!?




 また獲物を探して森を歩く。

 そろそろ町かどこかを探したいところではあるが、それは3レベルくらいになってからでも遅くないとは思う。


 そう思う理由は2つ。

 まず1つは身分証が無いこと、面倒事で時間を食いそうだ。

 そして2つ目、この世界に冒険者ギルドがあるとしたら登録するとして、その説明でも時間を食うことだろう。

 食い物や宿探しだってそうだ、言葉が通じるかもわからない以上、余計に時間はかかるだろう。余裕ができてから向かおう。


 だから今は、このゴブリン2体を倒してしまおう。


 ……木の影からそっと覗く。

 2体のゴブリンは地面に木の枝で何かを書いているようだ。何を書いているかは分からないが、こちらに意識が向いていないならチャンスだ。

 剣を抜こうとして気づく。あいつらは向かい合わせに座っている、片方を攻撃しようと後ろに忍び寄ってもおおよそもう片方にバレるだろう……。

 なら、石でも投げて気を引くか。少しでもダメージになればいい。なんなら目にでも当たってくれないものかね。

 小さな石を4個ほど、拾う。イメージするのは散弾銃だ。


 息を整える、気分は甲子園のマウンド…… オラァッ!


 投げた石ころは3発が背中を向けているゴブリンに当たり、1発は当たることなくどこかへ飛んでいった。

 悲鳴をあげるゴブリンBと、困惑しつつも俺の姿を認めてこん棒を振り回してくるゴブリンA。


 俺が剣を抜くよりもゴブリンAの方が若干速い──


 剣を抜くのを諦め、足をひっかけるようにして払う!

 ゴブリンは受け身も取ることができず持っていたこん棒が折れる悲痛な音。よし、偶然だがこれで攻撃手段も防げた。


 落ち着いて剣を抜き、倒れたゴブリンに差し込む。

 左胸を、人間なら心臓のあるはずの位置を刺す。剣をまだHPは残っているようでバタバタと暴れるので剣を抜くと距離を開ける。

 風切り音、ゴブリンBが思ったよりも近くにいた。

 まずい──


 ゴブリンのスイングを、ギリギリのところで避けることに成功する。

 が、助かったと油断していた俺は返しで振り上げられるこん棒に対して回避行動が取れない。

 だが相手がゴブリンだったことに救われた。距離感が掴めていないのか、胸元と顎先をかするもののダメージにならない。

 そしてゴブリンBに切りかかろうとしたところで、瀕死のゴブリンAがタックルを仕掛けてきた──


 ヘロヘロタックルにこちらもタックルを、当て返すことで跳ね返す。ゴブリンAは転がりながら吹き飛ぶが……死にはしない、もしかしてダメージとして認識されていないのかもしれない。

 ゴブリンBに向け唐竹割り……つまりは単純な振り下ろしだな。


 ゴブリンはそのまま真っ二つ、とはいかず腰付近までばっさりと行き、止まってしまった。

 いや、しかしゴブリンは絶命したようだ。ならば良い、残りの瀕死もすぐにあの世へ送ってやる……。


 効かないと理解できないのか、理解できていても仲間の仇を取ろうとしたのかは分からないが、ゴブリンはまたもヘロヘロのタックルを仕掛けてきた。


 俺へとぶつかる前にゴブリンへ強く剣を振り下ろし、唐竹割りにした。先程とまったく同じに振るったつもりだったのに剣は首もとまでしか切れず、止まってしまう。

 ……ゴブリンは絶命しているから別にいいが、イメージだと股下まで綺麗に真っ二つなんだが、何がいけないんだろうなぁ。


 2体分で3大銅貨6銅貨、それと折れたこん棒……。


 なぜ折れてない方が残っていないのか!

 くそ、バカにしてるのか……ッ!?


『現在のレベル1。次のレベルまで5EXP』

『残り時間45分39秒』


 15分で95経験値。ゲームなら遅い方だろうが、現実リアルなら断トツの速さだろう?

 そうに違いない。そう思わないとやってられないだろ。


 あとスライム1体程度か、一旦森を抜けよう。

 そして15分ほど休んだらスライムを倒してレベルアップだ。


 森を抜けるまでに1体のゴブリン、2体のスライムを見つけたがバレないように逃げて平原へと戻ってきた。

 ここまでで4分59秒……ほぼ5分丸々使ってしまうが気にしない。時間は40分も残されている。

 剣が欠けていないかを確認し、盾も一応撫でてみる。


「手入れの道具も必要だな」


 村、もしくは商人を見つけないといけないと頭のメモ帳に書き込む。

 ゆっくりとストレッチをして、寝そべる。真っ昼間で眠気は無いが、動く気力が無くなってしまう。


「あぁ……日向ぼっこなんて、いつぶりだろうな……」


 勉強しなくていい。だが、常に死が隣り合わせな生活。

 今までの自分は恵まれていたのだろうと思うが、どこかその思考に納得できない自分がいて、苦笑いしてしまう。


「はぁ……」


 俺はこの先、生きていけるのだろうか。思うのはその事ばかりだ。

 チュートリアルだが何だか知らないが、説明されている間、手動生成しているの間にずっと考えていたからすぐにレベリングに移れた俺ではあるが、どうやらまだ全てを受け入れられたわけではないらしい。


 この世界の常識もない、お金もほぼ無い、そもそもまだ人にさえ会えてないんだ。

 そんなないない尽くしだというのに、持病さえ抱えている。

 ……俺は、生きていけるのだろうか?


 スライムの這いずる音。まっすぐに近づいてくるあたり、どうやら俺には気づいているらしい。

 どうせ一撃で終わる。俺は盾ももたず、剣を抜いた。


 一閃。

 真横に薙いだ剣はしっかりとスライムの身体を切り分けた。手元に残るのは7銅貨。


 そしてファンファーレ。


『テンテケテッテッテー』


 なんと軽快なリズムだろう? 糞くらえ。


『残り時間30分8秒78……』




『現在のレベル2。次のレベルまで150EXP』

『残り時間1時間59分59秒』

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