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旅人 白鳥 恵子 Lv.8 ③

クロノスを抱き抱えて道を進む。

そろそろクロノスの事情を聞きたいし、私の事情を話さなきゃとも思ってるんだけれど……まだ少し怖い。

不思議な話だとも思う。

家族として暮らす夢まで見てるのに、まだ私情を言い合えないなんて。



『GAAAAAAAAA!!!!』


森の奥からリザードマン、だと思う声が聞こえてきた。それに伴ってもう少し高い魔物の声も聞こえてくるから2体かな。

クロノスも戦えそうだし、最悪即死攻撃を連打して倒せば良いから……行ってみよう。


『ガァァァ?』

『ピ……ッ!』


クロノスが私の腕から降り立つ。そのままバウンドするかのようにジャンプすると、声の聞こえた方向へブレスを放った。森の木にも火が当たってるけれど、燃えないのはさっき確認してるからね。この木って何で出来てるんだろう?魔力とか?


「……えっ?」


クロノスのブレスが、吐いた炎が晴れる。その先の光景に驚き、槍を下ろしかけてしまう。

その先にいたのはクロノスと同じ赤ちゃんドラゴンだった。


『ガァァ?ガガァッ』

『ピィィ!』


クロノスがその赤ちゃんドラゴンへと飛びかかりその爪を振るう。同じ仲間のはずなのに、クロノスは嬉々として殺そうと害意をぶつけた。相手の赤ちゃんドラゴンも嘲笑うかのようにクロノスへと爪を振るった。


『GAAAAAA!!!!』


爪が赤ちゃんドラゴンの首に迫り、撥ね飛ばそうとしたところで横からリザードマンの大きな刀がクロノスを吹き飛ばした。

……どれだけ強くなっても、体格差で吹き飛ばされるほどの衝撃を食らう。

でもあれ、不思議と痛くないんだ。


『ピィ。……ピィィ!』


クロノスがぽてっと地面に着地した。まだ飛べないみたいだけど、その翼で体勢を立て直したみたい。

そのクロノスが、私に何かを伝えようと鳴くけれど、生憎とスキルが発動しなくて分からなかった。だから少しだけ考える。

私がクロノスだったら、この場で何を頼むかな。さっきの2対1で私がクロノスに何かを頼むとしたら……片方の相手?

それだとしたら、たぶんリザードマンを相手にすれば良いのかな。違ってたら謝ろう……。


リザードマンへとちょっかいをかける。槍で何度か突こうとすると避けられ、斬ろうとしてくるのを横っ飛びで回避する。そしてクロノスから距離を開けようとする。


『ピィピュイ』


ありがとう、かな?合ってたみたい。

……てことはやっぱりクロノスの目的は同種を殺すこと?それとも、ただのレベル上げ?


『GAAAAAAAAA!!!!』


リザードマンが迫る。ドシンドシンと、2メートルを越える巨体が走る度に揺れるので、警戒して槍を構える。

いい加減クロノスと話をしないと、そう決意しながら。


振るわれた大きな刀に青白い光が点っている。スキルだろうか?警戒しながら1発目を槍で受け止め──引き戻す動作がない、すぐさま2発目の衝撃が槍を経由し両腕に響く。

3発目も来るだろうと予想した瞬間すぐさま回避行動、予想通りに放たれた3発目は地面を叩くだけに終わった。私は刺突スキルを発動させる。


穂先が滑る。金属音もしたから弾かれて、まったくダメージを与えられなかったみたい。


舌打ちしたい気持ちになるけれどそんなことよりも、せめて攻撃の通りそうな場所を探す。間接?それとも眼球でも狙ってみようかな……?


どうやら敵も同じことを考えていたみたい。大きく振りかぶって私の防御を越えるつもりみたい。腕をぐちゃぐちゃにされたことを思いだし、心がスッと冷え込む。

リザードマンの踏み込みに合わせてバックステップ、刀の間合いじゃ届かないはず──フェイント!?


リザードマンが踏み込んだ足を軸に跳ぶ。その予想外な跳躍で私への距離が大きく縮まった。

空中にいる私には回避の術がない。



「滅槍グングニルッッッッ!!!!」


私がしたのは空中で無理矢理避けることじゃない。リザードマンがどんな攻撃をしても、私の体力を一撃で削りきれないと知っているからこそ、攻撃をするんだ。

リザードマンの刀が私の腹を捉えると同時に、リザードマンの左肩への槍の穂先を当てる。当てるだけで良い、だってあとは黒いもやが殺ってくれるから。


「かっは……ッ」


ひゅーんって飛ばされた私はすぐそこの木の幹へ衝突。肺から空気が漏れると同時にファンファーレが聞こえて、気絶した。



『残り時間5時間22分34秒61……』


『現在のレベル9。次のレベルまで6287EXP』

『残り時間8時間59分59秒』






ニタリ、と口元を歪めてコルァは笑った。

笑わずにはいられなかった。当然だ、なぜなら探し始めて数時間でレベル上げに最適な土地を見つけられたのだから。


「ヨくやッタ、ケんゾクたちヨ」


コルァはその手に持った紅く輝く、綺麗な三叉槍でゴブリンを刺し殺した。瞬きする間におおよそ5体が刺殺され、次に瞬きすると4体が轢殺に似た潰れ方をした。


ググッと背中に生えている1対の翼に力を入れるが、その身を浮かせることは叶わない。それこそが自身のスキル『堕天の血』の副作用であることは理解していたが、試さずにはいられなかった。

ゴブリンだった自分が、空を飛ぶ。

それがコルァの夢であり、リトルラグエルという下級天使では叶わぬ願いだった。きっとこの先の進化であれば、とコルァは槍を強く握り締めた。


1時間ほどかけて歩くと森を抜けた。

人間の街を避け、時おりいる冒険者を避け、ゴブリンだろうと魔物なら殺して進む。そんなことをしていたら予想の/倍近くの時間が経過していた。

しかしそれは必要経費だ。今見つかって冒険者に袋叩きにされては復讐が叶わない。慎重に慎重を重ねている現状に意味はあるのだと精神を落ち着かせ、目の前を見る。



そこは1つの湖だった。


「ダンジョン、カ……」


そう、ダンジョンだ。魔物と同じく自然に現れるそれは魔物も人間も食らう恐怖の対象だ。

ダンジョンの最下層にはコアと呼ばれる宝石があり、それを飲み込むと強くなり、進化を迎えることが出来る……そう言っていたのは誰だっただろうか。思い出せない。


「ツヨく、ナる」


そう、俺は強くなる。リトルラグエルなんかではなく、もっともっと上を目指し強い種族へと進化してあの少女を殺すのだ。それが番であったあの同胞への手向けとなる。



コルァが湖に手を向け、ぼそぼそと口の中で詠唱を唱える。

その瞬間水が重力に反しせり上がり、槍の姿を形作る。その出来立ての槍を後ろから忍び寄っていた蛇へと射出した。




────────────

種族:リトルラグエル

名前「コルァ」

レベル:6/30(成長限界で進化)


体力:333/333

魔力:138/144

攻撃力:87

防御力:134

敏捷:96(101)

精神力:129

幸運:17


装備

右腕:三叉槍(攻80+火)


スキル

槍術4

回避3

強打2

自己再生3

下級魔法(水)2


固有スキル

強行軍▽

番の加護▽

堕天の血▽

────────────


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