旅人 白鳥 恵子 Lv.8 ①
今回少し文体(というか段落?)を変えてみました。
今まで通りの文字びっちりが良いのか、こちらの段落多めが良いのか、是非とも感想や活動報告などにお書きください。
また、要望があればダイスログを公開します。
「ステータス」
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名前:白鳥 恵子
年齢:19歳
性別:女
種族:人間
職業:旅人
レベル:8/99
体力:95/163(143/245)
魔力:39/81(47/122)
攻撃力:53(80)
防御力:108(171)
敏捷:59(89)
精神力:66(99)
幸運:33(50)
所持金:1,508ロト
装備
右腕:スピアー(攻20)
左腕:
身体:ローブ(防10)
胸当て(防20)
アイテム
手斧(攻15)
短弓(攻20)
スキル
槍術3
体術1
投擲1
回避4
隠密1
威圧1
魔物語1
武技
刺突2
滅槍グングニル2
首折1
従魔ペット
クロノス▽
固有スキル
流浪▽
歪な器▽
称号
頑丈▽
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まずは!
まずは上から順に見ていくけど……。
ぁー。防御力が流浪無しで3桁になってるね。本当に特化型、しかも一人だと厳しい系だ。今からでも方向修正できないかな?
そしてロト……つまりお金が1000円越えた訳なんだけれど。
1ロト、これが最低単位みたいだね。そしてポケットから取り出すと小さな銅貨1枚となる。9ロトまでは特に変化無いけれど、10ロトを取り出そうとすると大きな銅貨1枚へと変化する。11ロトだと大銅貨1枚と小銅貨1枚。
つまり5円玉がないってこと。あ、50円玉も無いみたい。50ロトと念じたら大銅貨が5枚出てきた。
さて次、100ロトと念じてみると……小さな銀貨が1枚だけ出てきた。500ロトでも小銀貨が5枚。500円玉も無いんだね。
うん、予想通り1000ロトだと大きな銀貨が出てきた。
この世界は財布に手を突っ込んで取り出したい金額を念じれば良いだけだから、一々数える地球よりは楽だからね、5枚で区切る必要性が薄いんじゃないかな。
店……受けとり側は地球のレジみたいな機械でもあればすぐに数えられるわけだし?個人同士ならステータスを確認すれば良いわけでしょう?良いね、異世界って。魔法とか便利すぎるね。
ええと、つまり……
1ロト→小銅貨
10ロト→大銅貨
100ロト→小銀貨
1,000ロト→大銀貨
10,000ロト→小金貨?
100,000ロト→大金貨?
なのかな。これが分かっても物価が分からなければ意味がないんだけどさ!
パンの値段と宿屋の1泊の値段、それから……市民の月収とかも知りたいかな。まあそれは後回し。
見たくないものは飛ばして固有スキルへと飛ばされた『歪な器』を開いてみるけれど……うん、変わらず説明文は黒く塗りつぶされてるね。
はぁ。
……はぁ、武技の『首折』ってリザードマンにした実験だよね?
なにも、たった1回でスキル認定しなくても良いのに。というか発動技……パッシブスキル?が武技として区分されたんだね。
まあ、ステータス上で変化しただけだから対した意味もないんだけど。
スキルの使い方や効果は理解できてないけれど、まあ、また何かしらの時に理解できるだろうから今は放置。変に推理して大失敗が怖いもんね。
魔力も大分減ってきたかな。回復しないと。
『……ピィ!』
「うん、忘れてないよ?」
リザードマン倒したあとポケットに手を突っ込んでお金をチャリチャリさせてたもんね、クロノス的には置いてきぼりくらってたんだもんね?
わしゃわしゃーっと撫でるとクロノスは気持ち良さそうに目を瞑る。可愛い。
「クロノスのステータスも見せてもらうよ?」
『ピィーピッピ!』
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種族:ベビーファイアドラゴン
名前:クロノス
レベル:2/5(成長限界で進化)
体力:175/175(192/192)
魔力:160/160(169/169)
攻撃力:160(166)
防御力:150(161)
敏捷:188(194)
精神力:190(197)
幸運:1(5)
スキル
爪術1
回避2
体力自動回復2
武技
下級魔術(火・風・光)1
変身魔法1
ドラゴンブレス2
裂壊1
固有スキル
繰り返す者5
称号
従魔▽
虐げられし子▽
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あれ?今回は私にも表示された。もしかしてクロノスが許可すれば私にも表示されるってこと?
……もしかしてだけど、クロノスって『裂壊』を隠すために急かしてたのかな?リザードマン戦で使ってから急かさなくなったもんね?なるほど、そういうことだったのね。
さて、気を取り直して洞窟の中を進む。
いまだに洞窟ってことは地下3階……?いや、地下4階も洞窟スタイルの可能性があるよね。
とりあえず上の階層に戻ってはいないからクロノスの直感ナビゲートで進む、とそこは行き止まりだけれど、宝箱があった。
罠確認するけど……うん、なさそうだね。きちんと蓋の裏に爆弾が仕掛けられてないかも確認してオープン。
「回復薬、かな」
どっちだろう?どっちでも嬉しいけれど出来れば魔力の方が良いかな。ポケットイン!
結果は……『回復薬(体20)』。
「クロノスは体力減ってなかったもんね?」
『ピィ~』
というわけでぐいっと。まずい。薬草の味がする。
少し引き返して分かれ道を進む。
そこにいたのはカタツムリ。殻を背負ってノロノロと動くそいつの大きさはやはり50センチ大。気持ち悪いです。
槍を構えて……スキルを使わないことにした。
魔力を温存しないと、回復手段が無い現状、防御しか出来ない私的にはクロノスに頼りっきりにさせてもらいたいね。
リザードマンにへし折られた腕を見る。さっきの回復薬もあってか、槍を扱っても痛みは感じないレベルになったけれど、それでも違和感は残ってる。早く宿で休みたい。
『グモォ!』
え、カタツムリってそんな鳴き声するの……?
と思ったらカタツムリの体が淡い光に包まれた。私の槍で与えた傷が回復していく。
「回復魔法ね、ほしいかも」
貰えたりしないだろうけど。
クロノスが攻撃のために接近して──カチッ。
何かのスイッチを踏んだようで、私とクロノスは咄嗟に横っ飛びで回避した。した、けど……何も起こらない?不発?クロノスも警戒して周りを見てる。
先に動いたのはカタツムリの方だった。私に向かって何か黄色い液体を吐き出してきた。
余裕をもって避ける。
じゅわっ、と洞窟の床から煙があがってるところを見ると、あれは酸、なのかな?まあ、当たらないようにしないとね。
私が槍で攻撃したが、2回とも殻にこもられて防御力を越えられない。クロノスは殻を突き破って爪で引っ掻いているけれど、その度に回復されてお互いに決定打を与えられずにいる。っと、酸を吐き出されるけれど半身になって避け、太刀打ちで殴ってその反動を利用し石突きでまた殴る。……うーん、どっちも殻に当たったか。今の良いコンボだと思うんだけどね。
バックステップでクロノスのブレスを避ける。カタツムリが丸焼きになるけれど……あー、少しお腹すいてきたかも。私もついに魔物を食べないといけないかもしれない。
あ、カタツムリが回復魔法を使ったけれど火傷の痕がまだ残ってる。これってクロノスの攻撃力が回復量を上回ったってことだよね?まだ勝ち目はあるね。……いや、クロノスの『裂壊』や私の『グングニル』なら苦戦しないだろうけどさ。
カタツムリがクロノスに酸を吐き出すけれど、それは当たらない。クロノスって本当に運が悪くなってるの?ってレベルで強いよね。
槍で殴るけどまた殻にこもられる。そこでクロノスが炙る。
私に酸を飛ばしてきても避けられちゃうよ?……避けて殻にこもられてまた避けて。
ああ、なんか飽きてきちゃった。
スキルの温存ってめんどくさいんだね。穂先が殻で滑る。飛び退くとそこにクロノスのブレスが浴びせかけられる。
また回復された。けどその回復中を狙って攻撃する、流石に殻ににこもることは出来なかったみたいだね。クロノス、止めはお願い。
……クロノス?
そっちを見ると酸で溶かされてでこぼこの地面に躓いてブレスを明後日の方向に撃つクロノスの姿が。
って、うわ。カタツムリがお構いなしに酸を吐いてきた。なんとかよけれたけどそれは無くない?……というか、回復しない?魔力切れかな?
回避して反撃。そのあと攻撃を掻い潜って一撃。
クロノス?……ああ、でこぼこの地面に戸惑ってるところを天井から石が落ちてきて閉じ込められてるよ。
──そのあと、クロノスが自力で脱出してブレスを吐くまでに10回はカタツムリに攻撃し、15回はカタツムリの酸を避けきりました。
いつから私は槍と回避の練習をしていたんだろう?
この世界に来てからずっと、か。悲しい。
『ピィ……』
「今回はちょっと運が無かっただけだよ、次頑張ろ?」
『ピィ』
クロノスを励ましてどんどん進む。
小部屋とでも言うべき洞窟の中にしては若干広い空間に出た。そこにいたのは1人と1体……いや、あれは明らかに魔物だろうから2体、かな?
サイズが50センチほどのカマキリがいる。そのカマキリを愛おしそうに撫でる1体の骸骨。まるで骨格標本を動かしているようなそいつは、アンデッドと呼ばれる種族なのだろうか?
……一回魔物図鑑、みたいなものがよみたいかな!!
先にカマキリの方が私たちに気付いたらしい。顔を上げて睨みつける時に、首元についているチョーカーから──チリリン。と鈴の音が響く。
その音で私たちに気付いた骸骨が黒いマントを翻らせて腰に「滅槍グングニル!」吊り下げている剣を抜いた。
……チッ、黒い靄は出てない!不意打ちにも似た感じで攻撃したのはあの骸骨がリザードマンを越えるくらいに強くて、とても危険な存在のように見えたからだ。あいつも、神話名を持つスキルを、持ってるのかもしれない。
骸骨の口がパカリ、と少々滑稽な音を立てて開く。さて、ブレスが来るか。それとも破滅を呼ぶ歌でも歌うのかな?とりあえず槍拾う為にもダッシュ。
『霧隠タルンカッペ』
マントがバサリと音を立てて靡く。
風も吹いていないのに、まるで強風の中であるかのように騒ぐ。荒れ狂うマントが、大きく伸びた印象を受ける。……いや、これがスキルなら、きっと本当にマントが伸びているんだろう。
けれど。けれど、だ。
マントが伸びたところで何が変わるというのか?
グングンと伸びたマントがこの小部屋を覆うように、ドーム状になったかと思うと……敵が消えていた。
逃げられた?ってことはあれは転移スキル?いや、霧隠と言っていたし、隠密系のスキルかな。クロノスの方を見ても辺りをキョロキョロしていて、敵を見失ったようだ。
「クロノス、一旦引こ──ガキィン!──えっ!?」
「ピ?──ガァン──ピァッ!?」
二人同時に奇襲を受ける。あいにくと私たちの防御力を下回っているみたいだけど、風切り音さえもなく、乙女の柔肌が弾く金属音しか無いってのは……非常にマズイ。
これじゃあ一方的に攻撃される。ダメージが無いとはいえ、見えない敵に攻撃され続けるのは、精神的に参ってしまいそうだ。それに逃げれるとも思わない……。
とりあえず武器を……!ポケットから出した手斧を振りかぶるけれど当たらない。槍まであと一歩のところで蹴飛ばされたのか、槍が明後日の方向へと転がる。
クロノスがシャドーボクシングの様に空中に向かって切り裂こうと攻撃するけれど、その爪が敵を捉えることはない。
まずい、完全に敵のペースに陥ってる……。
また金属音。右肩を狙われたらしく、肩パンされた様な衝撃がある。けど不思議と、痛みはない。異世界って不思議。地球に帰して。
クロノスは空中に攻撃を続けていると、偶然にも相手の武器に当てられたらしい。クロノスの爪が虚空とぶつかり火花を散らす。
そんな戦闘を横目に見つつ、槍を掴む。同時に、また槍を遠くへ飛ばそうと……蹴ろうと?しているだろう敵へと手斧をフルスイング。
手応えなし!読み間違えた。
クロノスがまた虚空へと攻撃を仕掛ける。フェイントを織り混ぜて敵の位置を誘導し、敵の位置を予想と戦術で割り出そうとする赤ちゃんドラゴンの一撃は、確かに敵を捉えていた。
耳元で声がする。霧隠と詠唱していたその声だから、あの骸骨のものだろう……。
『この状況ではこちらが不利か……ならばこれはどうかな?
霧隠タルンカッペ』
詠唱後、骸骨が現れる。武器も持たず、ただ悠然と歩くその姿に違和感どころか不信感しかないけれど、さっきよりは大分良いはずだ。
ポケットに手斧をしまって、槍で殴りかかる。が、気づいたら骸骨が私の後ろにいた。
……当然の空振りである。
すぐさま穂先をそちらにむけるが……そこに骸骨はいない。
クロノスは骸骨を盾にするようにして現れたカマキリを倒そうとしたみたい。
二体を巻き込むようにしてブレスを放つ。が、骸骨は火の中でも悠然と私たちに向かって歩いてくる。カマキリは更に後ろへと下がり、攻撃を避けたみたいだけど。
骸骨はまた口を開く。
『この圧倒的なレベルの差が分かるだろう?諦めてくれないか』
「……そんなの無理に決まってるでしょッ!」
石突で一番避けにくそうな胴体へと突きを放つ。刺突は発動させないでも突きはできるみたいだね。
骸骨がしたのは若干左に動くだけ。それだけで骨と骨の隙間に槍が入り込み、回避されてしまう。槍が奪われる、もしくは折られると焦る私の目の前に骸骨はもういない。──後ろ!?
肩をぽんっと叩かれるととても怖い。
なんで今攻撃してこなかった?なぜこうも後ろをとられる?
分からない。
分からないが、骸骨の後ろでクロノスがその爪を頭蓋骨へと降り下ろすのが見え……空振っていた。
クロノスが外したんじゃない、避けられた……?でも、どうやって。
『今君たちがこのダンジョンを出て地上へ向かうと言うのなら見逃してあげよう。さあどうだ、死にたくないだろう?』
それにこの行動も謎だ。
なぜ殺さない?なぜさっきまで攻撃していたのに今になって攻撃をしてこない?……カマキリだって後ろに下がっている。なんで2対1に、不利になるようにする?
「なんなのよッ!」
怒りの手斧投擲。しかしそれは脇に逸れたみたい。反応されされなかったこの悲しみったらないね。クロノスがブレスを放つ、その広範囲に渡る攻撃も敵を捉えられない……。
また太刀打ちで殴りかかるが、今度は避けられるのではなく槍を掴んで止められた。眼球の腐り落ちたその孔が私を見つめる。その状況でさえも、クロノスの攻撃が当たらなかった。骸骨は回避行動を取ってない……?
『……そうか、ならば仕方ない。破滅剣ティルヴィング』
骸骨が掴んだいた槍を手放したかと思うと、いつの間にか剣を抜いている。咄嗟に回避をしようとしたものの、顔面へと向かってきたその攻撃を食らってしまう。
……まあ、ダメージは無いんだけどさ。数歩後ろへ押され、たたらを踏みつつ槍を構え直す。
ダメージってのは、こうやって与えるのよッ!
太刀打ちで剣を持つ右手を打つ、がそれは一歩下がって避けられる。相手が下がるよりも大きく踏み込んで顔面狙いの突きッ!
──ピキリ。
と、眉間に小さな穴を開けることに成功した。殺すことはできなくても、ダメージは与えられたんじゃないかな?
『破滅剣ティルヴィング』
「っく……!」
鉄製?の剣が私の胸当てを強く叩く。傷を負わない分、叩かれた衝撃や内臓への負荷の方が厳しい。まあ、弱音を吐いてられる状態じゃないけれど!
突きだした穂先を、首を傾げるような最短の動きだけで回避される。……けどね、それってあなたの右側を死角にしてるのよ?
『ピィー!』
『ガ……ッ!?』
クロノスの振り下ろした爪は骸骨の右肩を捉え、本体と右腕を分断した。骸骨は私がその腕に手を伸ばすよりも早く回収すると、大きく後方へと跳躍した。
『霧隠タルンカッペ』
また隠密系?攻撃されることを嫌った?でも与えたダメージは私でも半分も行かない程度なはず……。そうとう体力低い?それとも──うわっ!?
初撃を食らう。
驚くけれど、踏み込んですぐさま殴り返す。……外した。って二発目!?こっちは若干攻撃が重く、広い。カマキリの方かな?
ダメージにはならないけれど、2体に殴られるのは気が気じゃない……!
『ピィィ!』
クロノスが私の前に仁王立ち……かばってくれてるのかもしれないけれど、もう少し大きくなってからにしようね?
さて、ちょっと考えてみよう。敵の戦法と、スキルについて。
見て、聞いて、攻撃して、攻撃されて分かったことといえば、骸骨の姿とカマキリの姿が消えたこと。
行動の音はなく、足音から始まり呼吸音、剣を振る音やチョーカーの鈴の音に至るまで私たちに音が全く聞こえてこない。つまり、見えず、聞こえず……。
あと攻撃されて分かったのは、何故だか不可視の彼らから受けた攻撃は軽いんだ。破滅剣?を食らった時はたたらを踏むほどに、数歩押されるほどに威力があったのに、今ではすぐに反撃ができるほどだ。
もしかしたらこっちが素の威力で、破滅剣が威力増加なのかもしれないね。それにしてもなんで確実に当てられる今、威力を上げないのかと考えると……魔力温存?つまりこの霧隠か破滅剣のどちらか──もしくはどちらも──は魔力消費が大きいってことかな?
じゃあこの魔力消費が大きいと仮定する霧隠だけど、予想としては光屈折のための水魔術と音を掻き消す風魔術の応用だと思うの。
でも、霧隠はまだ能力があると思う。
それは2回目のスキル名を言った後。姿が現れたのに攻撃してこないで、こっちの攻撃は絶対に当たらない。
言うなれば影分身して、そいつが出たり消えたりを繰り返してるみたいに不可解な動きで回り込まれた。……攻撃してこなかったのは、自分の処理能力的に攻撃するほどの余裕がなかったから?
つまり分身体を1人で同時に操作していたってことかな。
それはそれですごいけれど、それならば単調な動きでも分身体でフルボッコの方が強そう。──気づいてないとか!?
うん、仕掛けは大体暴いたね。
でも問題は攻撃が当たらないし当てれてもダメージにならないことだよね?クロノスなら多少のダメージは入ってたみたいだし、即死させれる可能性があるから勝てなくはないんだけど……魔力が残り僅かなんだよねぇ。
流浪あっても残り37しか残ってない、グングニルは3回しか撃てないけれど、その3回で倒せるとも限らない、か。
今日はひいて強くなってから出直す?
……ダメ、髪留めを取り返さなきゃ。
推理してる間に3回ずつ攻撃された。1回はなんとなく避けられたんだけど、他2回は弾いたし、クロノスに限っては見えてないはずなのに攻撃当てるとかね。すごいね。
『霧隠タルンカッペ』
そしてまた姿を現したのは骸骨。左の脇腹の骨が数本無くなっているので、きっとそこにクロノスの一撃が当たったんだろう。
そして、槍で突くけれど姿が掻き消える。また影分身モードかな。めんどくさい。
『なぜ勝てないと分かっていて退かない?』
「私たちには目的があるから。……それに貴方たちも私たちを倒せませんよね?」
『殺すのには惜しい。引き返してくれるように時間を与えているのだが』
「……嘘、ですね?あなたの攻撃じゃ私の防御力は上回っていないんじゃないですか?」
『ほう、なぜそう思う?』
「勘、としか言いようがないけど……あなたのスキルは複数の雑魚を殲滅するタイプじゃないですか?」
『……』
骸骨さんが押し黙った。
そして多分、この人たちが通せん坊する理由を壊そう。
「別に、私たちはこのダンジョンの破壊が目的ではありません」
クロノスはどうか分からないけどね!
『む……なら、何故下を目指す』
「私は土偶のような魔物に奪われてしまった髪留め……装備を取り返すために守護者の部屋、というところへ向かっています。取り返せたらすぐにでも街へ向かう予定です」
『……』
また押し黙った。どうだろうか、この骸骨さんがダンジョンを守るために戦うのだとしたら、その目的には触れないはず。
「貴方も私も、魔力だけを消費するのは良くないでしょう?」
『それはお前の都合だろう、私は魔力など対して使っていないが』
「あのカマキリ……従魔さんはきっと私でも倒せます。それに貴方も回復を待って長期戦に持ち込むのは不味いはずです」
これは博打、私の大好きな博打。成功すれば、この交渉は有利になる。
「このダンジョンには他にも冒険者が入っていますね?しかも、もうすぐ到着するはずです。私と共闘されるのは。文字通り骨が折れるのでは?」
『っ……むぅ』
骸骨さんは押し黙る。いつの間にかクロノスが私の足元に来ていたし、カマキリが骸骨さんの隣に並んでいた。
最初の状態に戻ったみたいに見えるが、私たちはノーダメージで相手は少しだけ怪我を負った。
『誓えるか?』
成功!ガッツポーズしたくなる気持ちを抑える。
『ダンジョンを破壊せず、装備を取り返したらすぐに出ていくと誓えるのか?』
「はい、誓います。……クロノスは?」
『ピィ?……ピィピィ、ピュイ?』
『ああ、それでも構わない。……それにお前らではどのみちダンジョンの破壊は無理だろうしな』
「それは、どういう?」
『行けばわかるだろう。
ああ、これは少しの餞別だ』
骸骨さんが指をクルリと回す。まるで魔法を行使するかのような仕草に少しだけ期待が高まる。
──ボコォ。
と、地面が盛り上がり宝箱を形成する。……え?これ?
「開けてみても?」
骸骨さんがまるでプレゼントの包みを開けてみても良い?と娘に聞かれた表情をしている。頷かれるので……まあ、バレない程度に罠がないかを確認して開けてみる。
回復薬が5個?ポケットに入れてみると『回復薬(体20)』が2本に『回復薬(魔10)』が3本だった。
クロノスは体力が減っていないとのことで魔力の方を1本だけ飲んだ。私は残り4本を全て飲む……けど、けどこれ後味が悪いせいで口の中が最高にデンジャラスなことになってらっしゃる。
『回復薬は身体にかけても効果がある。
というよりもそちらが基本的な使い方だぞ』
「もっと早く教えてください!?」
骸骨さんは口を大きく開けて笑っていた。
……うん、敵でも言葉が分かれば仲良くなれるんだね。魔物語、もっと高くしないと。
そう決意して道を進む。
ダンジョン探索は、まだ終わりそうになかった。




