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ダンジョンコア 間宮日向 Lv.4⑭

「やっと、戦える……っ」


 日向くんに名前を聞かれて、とっさに『ナズナ』と名乗った私は心に秘めたとある野望のため、どうにか戦闘に参加させてもらえるように頼み込みました。

 そして今日、やっと戦闘に参加させてもらえます。私は守られるだけの存在じゃないんだと訴え、模擬戦では圧倒的と言われるような戦闘を見せつけーーられなかったけど。

 ま、まあ! なんとか信じてもらえたみたいだからいいよねっ?


「……日向くん、見ててくれてるかな?」


 私はウィンドウを呼び出そうとしてみる。けれど何度呼び出してみても目の前に半透明な板は産み出されない。

 それはそう、当たり前だ。だって私はダンジョンマスターじゃないから。


 私が日向くんのサポートができていた理由はふたつ。

 日向くんにサポートキャラとして認めてもらい、補佐を頼まれたから。つまりはダンジョンマスターが認めたから。

 そして二つ目。私がコアルームか住居エリアにいたから。つまりは非戦闘領域にいたから。


 今の私はサポートキャラとしてではなくダンジョンの眷族としてここにいる。なにより戦闘領域にいる。


 ここに来てみて、色々とわかることがある。神様にサポートキャラに認定されたとき、必要となりそうな知識を一部与えられた。そこから推理すると、どうしてもわかってしまうことがある。

 例えば、日向くんは私を信用していないこととか。


 でも、それでもいい。利用されるだけでもいい。使い捨てられるだけでもいい。

 今の私は魔物だ。ただの意思を持った珍しい魔物。他の眷族と同じ、少し特殊なだけの魔物。それでもいい。

 日向くんが私を見捨てるのが先か、私の願いが叶うのが先か。そう、これは騙し合いだ。私の最も得意とする分類の戦いだ。



 絶対、日向くんになんかバレるものか。この願いも、この想いも、この気持ち全ても。きっとこの短い生涯、誰にも打ち明けることはないだろう。だって日向くんが死んだら私も死んでしまうのだから。

 嗚呼、なんて、なんで、どうしてこんなことに。


『ナズナ、4階層でひとまず待機だ。そっちからもリィルたちを監視して気づいたことがあれば教えてくれ』

「う、うんっ わかった」


 日向くんからの指示が聞こえてくる。言われた通り、私は4階層にいる、つまりウィンドウは開けないのだけれど……日向くんはそのことに気づいていないみたい。

 私もそのことを言うつもりはない。


 ペコちゃんの隣に腰かけ、ただぼぅっと虚空を眺める。まるでウィンドウ越しに誰かを監視しているかのように。

 そんなふりをする。

 もちろん、私から日向くんに声を届けることはできないし、日向くんが今何を見ているのかもわからない。


「何も起こりませんように」


 声に出さず、言葉を口の中で転がした。もしかしたら日向くんに聞かれているかもしれないから。


 なにもすることがないと、どうしても思考が加速していく。嫌な考えも、楽観的な考えも、どうでもいい考えも……この先に起こること、起こり得ることを考えてしまう。


 まず、私が確定で負ける要素がある。

『ダンジョンマスターによる絶対命令権』……それだけは、私の力ではどうしようもない。

 どんなにアリバイ工作をしても、どれほど友好的に接しても、どれだけ抵抗しようとしても、例え私が寝ていたとしても私は『命令』されたことならばその命令を遂行することだろう。

 それはつまり、「思っていることを全て言え」という命令が来たとき、私は私の願いを全てさらけ出してしまうことになる。

 それが私の負け。


 でも日向くんが私に命令したのは、私の体のこと……それもエッチなこと。たったそれくらい。

 まるで奴隷に命令することに慣れていないかのように自ら命令権を手放すとは……そんな拍子抜けするほど簡単に上手くいくとは、思ってもいなかった。



 ごめんなさい。優しい日向くんなら謝れば許してくれるかもしれないけれど、私は私のワガママのために貴方を裏切ります。

 ……でもね、きっとこれは決められていたことなの。

 私がここに来たのは神様にそう言われたから、神様に助けてもらっちゃったから。あの神様が起こした災害で、巻き込まれないようにって私だけを助けてくれたから、その恩返しをしないといけないの。その罪滅ぼしをしないといけないの。


 神様はそれを認めてくれた。応援してくれた。

 だって私の記憶はこんなにも早く、予定よりもずっとずっと早く戻ったから。こんな大切な記憶を返してくれたから。

 だから、ごめんなさい。


『ナズ、ナ……』

「っ 日向くん?」


 その声で意識が現実に戻ってくる。

 落ち込んでいた気持ちを無理矢理に引き上げ、下がっていたテンションを隠す。

 いつもの私に戻るんだ、日向くんに守られるだけの私に。


『……ごめん、ナズナ』


 いつもより落ち込んだ声。

 ……もしかして、今の私の考えが漏れていた? 命令はされてない、してこないはず。私は何も言っていない。心を読むスキルも持っていないはずなのにーーッ!


『敵が……侵入者がくる……俺は、お前を死なせてしまうかもしれない……』

「えっ ……敵?」


 安堵する。バレていたわけではないことに。

 でも、そしたら日向くんのこの落ち込みようは何? 咄嗟にウィンドウを見ようとして、見ることができないことを思い出した。

 でも日向くんに聞くこともできない。何が起きてるのかわからないけれど、何か声をかけないと。


「ひゅ、日向くん!」

『ーー作戦を伝える』


 声質が変わった。

 泣きそうな声から、残酷な声へ。

 柔らかい優しい声から、氷のような冷たい声に。

 ……私の嫌いな声に。


 もう少し、待っていてね、日向くん。

 私が必ずーー


「ーー私が倒してあげるから」



次回からいつものように日向くん視点でダンジョン防衛していきます

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