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ダンジョンコア 間宮日向 Lv.4⑤

 5時間ほど眠っていたらしい。


 睡眠の必要がない体になってから、眠気は感じたところで頬を一度叩けば完全に目が冴えるようになった。とはいえ、動けば肉体的に、時間が経てば精神的に……疲労はどうしても溜まってしまう。

 そのどちらも解消できる方法のひとつが睡眠だ。何なら今後もしっかりと睡眠を取るようにしよう。

 さらに言うならば規則正しく、早寝早起きを心がけたい。


 15時間後にアラームをセット。15時間活動したら5、6時間の睡眠を取るようにしてみよう。



 ベッド以外に何もない私室を出て、廊下を通り、リビングへと入る。

キッチンの中では藍色のエプロンをつけたナズナが、ぱたぱたぱたーと忙しそうに走り回っていた。


「おはよっ 日向くん。もう少し待っててね?」

「ああ、おはよ。早起きだな」

「お昼寝何回もしたからかなぁ」


 どうやら朝御飯を作っているところらしい。

 というのも、寝る前にナズナに


『3時間もすればDPが少しは溜まっているはずだ。だから起きてお腹がすいてたらご飯を作って食べてて良いからな。1000DPくらい使って良いから、きちんとエプロンも召喚して着けるんだぞ?』


 と伝えていた。エプロンの件で少しジト目をされたものの、きちんと着けてくれているみたいだし、言っといてよかった。



 ウィンドウを開いてDPを見ると、2000DPほど残っていた。

 一時間で500DPくらいが捕虜から回収できる、そして5時間寝たから……。なんだ、使っていいと言ったのに遠慮して全然使ってないじゃないか。


「『役割変更』リビング」


 550DPが消える。しかしだだっ広いだけで意味をなしてなかった空間に4人用のテーブルと4つの椅子、それから絨毯と観葉植物が現れる。

 座る場所もひとつしかないので、椅子に座ってナズナを待つ。キッチンのなかを忙しそうに駆け回る彼女は、今までにないくらい楽しそうで……やっぱり我慢させてたんだな、と反省する。


「おまたせしましたっ」

「いや、楽しそうなナズナを見てたから。退屈しなかったよ」

「う…… 変な顔してなかった?」

「心配しなくても普通だったよ」


 目の前に運ばれてきたのは、エッグトーストと、コンソメスープだろうか?

 『いただきます、ってなぁに?』のくだりをしてから口をつける。ナズナも俺の見よう見まねで手を合わせる。


 ふむ……パンは地球のものよりも固い。それでも少し固い、程度であって問題なく噛み切ることができた。

 異世界のパンって、人を殴り殺せるくらい固いイメージがあった。スープにつけてふやかしてから食べると予想してたが、そんなことないのか……?


 コンソメスープにも口をつけてみる。

 温かい。そして……味が濃い。

 ひとつひとつの味が濃いが、喧嘩することなくそのままスルッと飲むことができる。なんというか、好みの別れそうな味だ。俺はこういう濃い味は好きだけど。


「美味しい……料理得意だったのか?」

「うんっ ――――――――」


 ナズナは何かを言おうとして、唇を動かすものの、まったく音を発していなかった。

 読唇術なんか学んでいるはずもなく、何を言おうとしているのかわからなかった。


「えっとね、料理の説明するね? トーストは食べたことあるよね?」

「ああ、普段食べてるのと同じか、それ以上に美味しいよ」

「焼いただけなんだけどなぁ」


 話そうとした内容に触れることはない。

 おそらく、ナズナの過去のことなんだろう。けれど、神様の妨害か、なんなのか。それが俺に伝えられたことは今まで一度もない。

 ナズナもそれをわかっているから話題を変えたのだろう。


「こっちがね、ポンスっていうスープでね、お肉で出汁を取って野菜を煮込んでるの」


 地球のコンソメスープみたいなものだろう。味はそれに近いかと言われると微妙だが……。まあ、これからもコンソメスープと呼ぼう、その方が迷わない。




「少し時間を置いたら、私室の模様替えをする。どれにするか決めておいてくれ」

「うんっ わ、いっぱいあるね」


 この世界……というかこのキッチン便利すぎる。

 使い終わった食器類は流しのシンクに置くと、自動的に新品同様の状態で収納棚に仕舞われる。

 火を起こすための薪はDPで補充しないといけないが、1回分で5DP……薪を持ち出せないのは欠点だが、安いし他で使うこともないだろう、何も問題ないな。



 時間は余っていて、DPもいくらか回復している。俺は私室を作ることにした。方法は他の部屋と同じく、『役割変更』するだけ……なんだが、私室に関してはテーマを決めることができるらしい。


 ナチュラル。ゴシック。アンティーク。

 モダンにレトロ、カントリー。

 アメリカンやアフリカンなど、俺じゃなきゃ伝わらないようなテーマまであった。

 その数、合計で20種類ほどだろうか。ワンタップすると変更後のプレビューをみることもできた。

 なんでこう、ダンジョン作成は意地悪なのに、住居エリアの作成だけは優しいんだろうか。必要な物は機械音声さんに頼む前にDP召喚リストに追加されてることも多々あるし。



 俺は少し悩んでモダンスタイルを選んだ。

 高級感のある黒いチェアに、ガラスのテーブル。作業用の机も置いてあるが、同じく黒を基調としたデザインで質素ながらに上質感を感じさせる。

 ただしベッドは今のまま。690DP


 ナズナは意外にもスタイリッシュスタイルを選んだ。

 物は俺以上に少なく、その全ては必要最低限でありながら、その機能を最大限に活かせるような上質なものだ。

 ヌイグルミとかが溢れた部屋を予想したが、そんなものはひとつもなかった。330DP……安くないか?


「これでいいのか?」

「これでいいのっ」



 その後、捕虜たちにもご飯を与えた。

 ナズナに頼んで干し肉を10個セット(85DP)を召喚してもらう。その内訳はナズナに5個、俺に2個、捕虜3人に1個ずつだ。

 俺には必要ないものだが、ナズナが遠慮して受け取ろうとしなかったから少なくても受ける必要があったことと、お菓子感覚で口寂しくなったら食べようと思って2個もらっておいた。


 そんな感じで、おにぎり2個、干し肉1個ずつを3人に配ってきた。これでもダニィは物足りないという顔をしていたが、あまり栄養のあるものを与えすぎて、元気のあまり脱走! なんてことになっても笑えない。

 かといって栄養を絞りすぎて餓死されても困る。

 ……栄養士って難しい職だったんだな。




 残り湯で朝風呂して、私室の椅子で昼寝までして、思い付く限りで住居エリアを満喫してしまった。

 時間を見るとウィルを逃がしてから10時間が経過するかしないかといったところ。


 ……侵入者はまだ来ない。

今回は少し短めなんですが、このくらいの分量だとやっぱり物足りないんですかね?

それとも誤差程度で気づきもしなかったでしょうか?


よろしければご意見ください

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