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ダンジョンコア 魔宮 日向 Lv.2①

遅れてすみません

「あ~~~~~~!!! つかれた……」


 ぬりかべに突っ伏する。

 必死に頭を使っていたからか、オーバーヒートした頭にぬりかべの冷たさが心地好い。

 自分のおでこに触れてみるとじわりと温かさが伝わってくる。まさにオーバーヒートというのが正しいほどに熱く、脳髄まで溶けそうなほど痛く、そして達成感に満ち溢れていて楽しい。


 ウィンドウを5、6枚見比べて酷使した目元をぐりぐりと押すと、なんとも言えない心地よさがある。

 口のなかもパサパサだ。4つくらいの状況に平行して指示を出していたせいで、途中なんか息継ぎする暇もなかったほどだ。

 外傷こそないものの、満身創痍という言葉が似合うんじゃないだろうか。


 人間、何事もやればできるものだなぁ。


「……さいご、みすったかなぁ」


 自分を褒めて生き延びたことを喜んだので、次は反省会だ。

 いまだに腹の奥底で沸々と煮えたぎる感情へと意識を向ける。



 ゴブリンを9体も死なせてしまった。もっとさぁ、被害を抑えることはできなかったのか?

 そもそも、アイツらを逃がして本当に正解だったのか?

 アイツらはこのダンジョンの対策を考え、広めて、その上で戻ってくる可能性がある。ペコちゃんと針山エリアだけではなく、他のルートも見て回っていた。

 つまり、ボス部屋と住居を除く、ほぼ8割を見られたわけだが、今後これでやってけるのか?


 この先を生き延びるために、不確定要素を潰すべきだったんじゃないか?

 冷酷になるべきだ。殺して辱めて、世界を飲み込むくらいの気概でないと──



「……ひゅーがくん?」

「っっ!? なんだ、ナズナか……」


 いきなり声をかけられたせいで椅子から落ちそうになるほどビックリした。

 というか起きてたのか? 起こしちゃったのか?


「ねないの……?」

「ああ、寝るよ。だからナズナももう少し寝たらどうだ?」

「うん……」


 目元をぐしぐしと擦って、ふらふらと近づいてくるナズナを見ていると、少なくとも今生きているから良いのではないかと楽観視できてしまう。

 ナズナが寄りかかってくるので抱き止め──寝ぼけてなければビンタされてただろうな──ながら、頭を撫でる。



 ……嗚呼、生きてる。まだ俺たちは生きてる。

 いいじゃないか、もう。過去を変えることはできないんだし。

 なら、もうこれでいいじゃないか?



「ベッドで寝ような」

「んー……ん……」


 ナズナをおんぶする。

 お姫様抱っこは無理かもしれないが、背負う分には軽いもんだ。

 ナズナをベッドに寝かせると、すでに夢の世界に旅立っているようだった。……その無防備な寝顔に、ムラっとする。


「……おやすみ」


 キスしようかと一瞬頭を過ったものの、頭を一撫でだけして、彼女から離れる。

 再びぬりかべの所へと戻ると、俺は2階層を作り始めた。





 まず、階段の位置を決める。

 後から変えるとしても、とりあえず牢屋の先とかに──できない?

 親切なことに設置可能場所が表示されるが……まさかのボス部屋とダンジョンコアの間だけだった。


 「ボス部屋を置くからにはその先には階段か、ダンジョンコアを置けってことか?」


 後から配置変更で変えるとしても、その仕様は厄介だ。

 2階層入ってすぐ、1マスだけの通路の先に12×20の特大部屋を『掘削』『領域化』する。1200DP。

 同時に、『地形変更』を選び……林にしよう。50DP。


 10ptで機械音声さんに通話。


「生殖で増えるゴブリンとか作れないのか?」

「……『創造』に『血統種創造』を追加しました」

「ありがと。相変わらず仕事はやくて助かるよ」


 ptを無駄にしないうちに通話を切る──ん? なんか通話かかってきた。


「……どうした?」

「いえ、あなたが無駄話しないために通話料の制度を追加したのに、普通にかけてくるので……」

「無駄な通話なんてしたことあったか? それに通話かけても最小限しか話してないだろ」

「そう、ですけど……」


 どうしたんだろう。何か歯切れが悪い。

 特に用事があったわけでもないだろうし、通話かけてくるなってことでもなさそうだ。

 ……あ、もしかして。


「寂しかったのか?」

「──なわけないです。さようなら」

「え、あ、おい? ……切られた」


 ツンデレ彼女かな? 忙しいので後にしてほしい。

 追加されていた『血統種創造』を開き、ゴブリンを……200DPってなんだよ、10倍だぞ……?


 仕方ない。4体のみ召喚。

 見た目は変わらないんだけどなぁ……?


「お前ら4体は林エリアで暮らしてくれ。必要なものがあれば教えてくれ、用意する」

「ギャアギャア」「ギャア?」「ギャギャアア!」


 ゴブリンたちが目の前で乱交を始めようとしたので、慌てて林に行くように『命令』した。

 ……まあ、ここまでくるとわかると思うが、ゴブリンを自生させるつもりだ。血統種というのはよくわからんが、普通の生き物みたいに性交で子供を増やしていく。

 林ならば木もあり石もあり、独自の文明を作ってくれることを期待している。


 ……そうだな。


 ついでに血統スライムも8体ほど、血統ファンガスも4体ほど林に入れておこう。スライムを底辺に、食物連鎖をこの中で形成してくれれば、食料問題も関係なくなりそうだし。

 血統スライム50DPを8体で400DP

 血統ファンガス300DPを4体で1200DP

 残り211ptと11339DP


 予想外の収入のせいでめっちゃ余ってるな。これから1階層も2階層も、予定の2倍くらいの大きさにしてしまってもいいかもしれない。


「階層ごとにテーマを決めるか」


 1階層は迷路のように道を多くして、複雑化。なんなら特定のルートを通らないと先に進めない……といった罠を張るのもありかもしれん。


 そして新規の2階層は外の森を……見たこともないので、俺の想像するファンタジーを再現した混沌カオスなステージにする。

 それが強いのかはわからんが、DPを使わずに勝手に増えていくならありがたい。



 林エリアの先に5マスの通路(25DP)と5×5のボス部屋(125DP)を作成。

 一階層の方も少し部屋を増やして、ボス部屋の生き方を変えよう。具体的には牢屋方面へと通路を掘り直して……追加の部屋を増やして……なんだか本当の迷路のようなステージになったな。


 二階層を作る前に比べたら3倍くらいの大きさにはなったというのに、まだ1万DPもある。

 もっと横へ掘り進めてもいいんだが……眷族が少ない現状で広くひろくしても、防衛が追い付かなくなってしまう。

 なので、5千くらい使って眷族を増やそうと思う。


「寿命も、残り5日か……」


 正確には、2日と3日。

 3レベルに上がるためには150EXP必要で、今の手持ちは221ptだ。捕虜を殺せばptが手に入るので寿命は一週間を越えていることになる。

 ……しかし、いつ侵入者に殺されるのかはわからない。かといって侵入者を殺さなければ一週間で死ぬ。


 嫌なシステムだな。


「階層を入れ換え、完了っと」


 迷路のような1階層を2階層にして、新規で作っていたフロアを1階層に変更する。

 入り口の再設定、階段の位置の設定、住居エリア等の調整など、少し手こずったせいで5DPほど吸われたが、まあいいとしよう。


 階層を入れ替えた理由は2つある。

 一度見られたフロアを最下層にすることで対策が無意味だと錯覚させる作戦ってのが1つ。

 2つ目は最下層に侵入者が到達したときのみアラートを鳴らすように設定して、各侵入者につきっきりで対応することなど無くすつもりだが……まだ余裕があるしいいだろう。

 ゴブリンを自生させるにしても、ダンジョン防衛を指示するといったら元1階層の方がやりやすいからなぁ。新規階層の具合も見ておきたいものだし。



「眷族『召喚』……『命令』する。各自ダンジョンを守れ」


 召喚の内訳は。

 スライム10体、50DP。

 ゴブリン30体、600DP。

 ファンガス15体、450DP。

 キラーバット15体、750DP。

 そしてホブゴブリン1体、500DP。

 合計で2800DP。……こんだけ使っても残り7250DPって、どんだけ余裕あるんだ。


 よし、これからも捕虜を捕まえていこう。

 というわけで新1階層にも4人用の牢屋を作成する。675DP。

 残りはナズナが起きてから召喚する新規の眷族の分だな。



「ふわぁ~…… 流石に、少し横になるか……」


 欠伸を噛み殺しながら、住居エリアへと移動する。

 ナズナがくぅくぅと可愛らしい寝息をたてているが、流石に同じベッドに潜り込むわけにはいかんだろう。

 前回はハウルを寝かせていたベッドへと身を投げ出すと、ギシリともバキリとも違う軋み方をしたあげくに、背中に痛みを伝えてきた。


「……地球のベッドが恋しい」


 なんでこんなに固い、床よりはマシ程度のベッドでナズナは寝れてるんだろう?

 ……かくいう俺も、寝ようと思えばあっさり寝つくんだろうが。

 教室で机に突っ伏して寝るよりは、横になっている分寝やすいし、疲れも取れるだろう。


「アラート確認……っと」


 設定のウィンドウを開いて、侵入者がきたらアラートが鳴ることを確認する。

 寝ている間に攻略されていました、なんて笑えないからな。

 よし、もうやり残したことはない。おやすみ、





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