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旅人 白鳥 恵子 Lv.5 ②

「私の予想だとまた階段があると思うの」

答える人は誰もいない。


てくてく。ふらふら。


草原を歩く。靴越しに感じる草が気持ちいい。地球じゃ草原とか無いからねぇ、ほぼ都市開発とかに消え去ってしまったから。現代っ子の私は虫が苦手です。それでも気にせず草原をてくてくする。だって。

……だって!

この世界で出てくる虫って魔物なんだもの!

「見つかりませんように……っ!」

遠めに見えた虫はおそらくバッタ。大きさはさっきのヤモリくらいだと思う……。正直触れたくないから来ないでほしいね。そうそう、そのまま向こうへぴょんぴょんしてくれればいいの。


『残り時間4時間23分9秒』


ああ、でも逃げてばっかりだと死んじゃうのか。

死にそうなほど怖い思いをするか、楽な思いをして死ぬか。……えぇー。選びたくないんだけど。

まあ、選ばなくていいか。攻撃されたらどんな魔物だろうと反撃はすることだし、あーでもゴブリンみたいなちびっこくて嫌悪感満載のアホ面ならいいけど、言葉が通じる人形の魔物は殺したくないかな。いざとなったらどうか分からないけど、とりあえず殺したくはないかな?



あっちへふらふらこっちへふらふら。

目的地の方向も距離も分からない以上迷った様に進むしかない。……とっくに帰り道なんて分からないし!目印がないってダメだと思うの!

「なにあれ」

一言で言うならトンボ。ただし相変わらずサイズがおかしい。さっきのヤモリよりも一回り大きい。頭の先から尻尾の先まででざっと1メートル?そのくらいはありそう。そして銀色に光を反射する薄い羽は、まるで刃物のような卑しさを見せてくれる。指切らないようにしようね。

そのトンボは風を纏いながら突進してきた。進路を予想して槍を突き出す。虫は気持ち悪いけど、倒さないで食べられるとかはごめんなの。

トンボの動きは予想外に速い。穂先を掠めるように、おおよそ最少の動きで回避し、私の懐へと侵入すると、そのままタックルをしてくるが……手に入れたばかりの胸当てに阻まれて痛みを感じない。少しガッカリ。

肘を上から、膝を下から……トンボの頭を潰そうとするものの、私が追いきれていない速度のまま逃げられてしまった。敏捷で負けたかなぁ。攻撃当てるのも難しそう。

槍をクルクルと回す。トンボはまたバカみたいに突進して来ようとしていたけれど自ら槍に突っ込む気は無いらしい。そこで私の刺突。避けられてしまったばかりか、左方向へと回り込まれてしまう。大きく口を開けて噛みついてくるが、進化し続ける乙女の柔肌を傷つける資格などない。

噛みついて無駄にガジガシするトンボへ槍を突き刺す。……私自身を囮に使った攻撃で、やっとその身体を捉えた。

穂先が僅かに滑る感覚。ダメージは与えられたものの、防御力に大半の威力を削り取られてしまったのを悟る。

「長期戦になりそうね……」

蜂のようにブブブ……と羽音を鳴らし、ガジガシと口を開閉させて威嚇する。向こうも同じことを考えてそうだ。知性があるのか分からないけど。

私の特化は言わずもがな防御力だと思う。だけど攻撃力も敏捷も低い。……その能力値が導くのは戦闘の泥沼化だ。

敵の攻撃を食らってもダメージを負わない。攻撃しても避けられるか弾かれる。

互いが互いの牙を無力化し、それ以上の効果を得られない。3度攻撃を仕掛けるが全て避けられるが、代わりに3度全ての攻撃を止めきる。……仲間、欲しいなぁ。

私が攻撃を引き受けて無力化。味方が致命傷を与える。たった1人増えるだけでも私の弱点が消え去ると思うの。

槍に体当たりをされ、手放してしまうもののすぐさまポケットから手斧を取りだし振るう。

スキルを持たない稚拙な攻撃でも、避けるには動作が必要だし、距離が空くこともある。その距離を詰めるまでの時間に槍に持ち変える。2、3発の攻撃も私には意味をなさない。

「……はぁ。疲、れた」

心なしか、トンボも息切れしているように感じる。仕方ないよね、5分も戦い続けてるんだもの。

あれから私が与えた攻撃は1度だけ、滅槍グングニルを当てることに成功したもののトンボの塊は生まれることがなかった。あれは確率発動なんだと思う。それか殺意が足りなかったか。

私が何発攻撃されたのかも数えてない、意味ないから。

トンボは遠距離で仕留める方向へとシフトしたらしい。羽をバサリバサリと動かす度に鎌鼬のような風が私に飛んでくるけれど、とても防具を貫通できる威力を持っていない。

……あ、でもトンボの動きが鈍ってる。これ魔法だもんね、魔力切れかな?

攻撃しようとして……右腕に鎌鼬が当たる、槍を手放してしまう。トンボが狙ってやったみたい。少なくともダメージをえられる武器を無くそうってことらしいけど、私には手斧もあるんだよ!

アッパーの様に素手になった右腕を振り上げる。トンボの頭を捉えた感覚を感じた瞬間に手を開き、その頭を鷲掴みにする。そのあと左手で持った手斧をがら空きになった胴体へと降り下ろし続ける。逃げ道は塞いだ!弾くことも出来ないなら何十回も当て続ければ──!

……トンボが動きを止め、地面に落ちた。すでに事切れている。

「はぁ……はぁ……!」

トンボの体液で濡れた手斧を持ち、息を整える。少しは戦士らしく、凛々しくなってきたかな……?



『現在のレベル5。次のレベルまで305EXP』

『残り時間4時間14分34秒』


「おお、結構余裕ある!」

だからと言って進まないわけにはいかないんだけど。というか髪留め返してもらわなきゃ。あれだね、殺してでも奪い取るってやつ。今回は穏便に、丁重にころs……話し合った末、取り返すだけど。

あっちへとぼとぼ、こっちへとぼとぼ。

進んだ先にあったのは1つの宝箱。そっか、ダンジョンって魔物だけじゃなくてこういうのもあるんだ。

開けようと手をかけて──罠があるかもしれない!慌てて手を離す!うん、すぐに爆発したりは、しないね。

うーん……鍵穴があるわけじゃない、鍵はかかってないかな。側面にも裏側にも不信なところはない、ね。うん。

そっと開けてみる。……大丈夫そう。蓋の裏側にも何もないか。あーあ、緊張して損した!

中身は回復薬が2つかな。ポケットに入れて確認!

『回復薬(体20)』と『回復薬(魔10)』……?

効果が違うと別のアイテムとして扱われるのかな?いや、でも……うーん、分からないなぁ。決めつけはよくないってことしか分からないや。

とりあえず流浪が切れてしまってるので回復薬をどっちも使おう!

「ステータス!」


────────────

体力:120/124(180/186)

魔力:43/53(65/80)

────────────



よし、体力はほぼ全回復。魔力も8割方回復したね。

このダンジョンの階層はとても広い。いまだに壁が見えないのだから呆れてしまう。……いや、もしかしたら球体になってる可能性も?

空を見る。

遠くに階段が見えるから、帰りは迷うことがなさそう。結構な距離を歩かないといけないはずだけど。ここから見る階段は天高く、どこまでも続き、支えを必要としていない。あれを登るのは怖そうだ。

降りたときは洞窟の中で、壁に手を付きながら降りていき、一番下のところまで降りきって、まばたきをして目を開けたら草原になっていた。

すぐさま階段へ戻ると洞窟の中へと戻り、下を見ても草原なんて無かったから、きっと魔法でうんぬんかんぬんされてるんだね。

……。

よし、考えてても仕方ない!次行こう次!


──ズボォ。

「えっ?──ひゃあああああああ!!!???」


踏み出した先の地面が抜けた。

まるで落とし穴みたいに、というかそのものにずるぅっと足を取られた私は、そのまま重力に従い落ちていく。あれ?これ、下の階層へ行かない……?

「ああああああああっ!!!……いっっった!?」

地面へ衝突。お尻から落ちてすごく痛い。羽リンの槍を受けたときといい勝負の痛みだった。せっかく回復できたと思ったのに……。

上を見上げると、天井に出来ていた穴が塞がっていく。え?天井!?

慌てて周りを見渡すと、そこは小さな小部屋だった。立方体のその閉鎖感を与える部屋の壁、それも四方全てに木製の扉がある。ドアノブもあるから、一瞬地球に帰ってこれた気分にさせる罠か……このダンジョン強い。

「槍は……ある。持ち物もステータス。うん、無くなったものは無いね」

はぁ。それじゃあ急に始まってしまったダンジョン第2層の探索でも始めますかね。


さて、どの扉を開けよう?

前か後ろか、右か左か……迷ったら右!勢いのままドアを開けて突撃!

「?……ぁっ!?」

部屋が微かに煙たかった、それどころか紫色っぽく……そう、毒ガスで充満した部屋だった。迂闊にもガスを吸い込んでしまった私は急に息苦しく、そして吐き気がしてきた。即効性すぎる!

戻る!戻らせて!って後ろ扉なくなってるぅ!?

次!次の部屋に逃げ込もう!


さっきは右にいって失敗したから次は左!ドアを開けて逃げ込んだ先に……大きな蜘蛛がいた。この世界全てを大きくすれば魔物になるとでも思ってるのかな。

蜘蛛が私に向かって糸をとばしてくるけれど、私はすでに走り始めていて、そこにはいない。左側面へと回り込むようにして走った私は短期決戦を目指して槍に殺意を込める。

「滅槍グングニル」

槍が真っ直ぐに飛んでいき、蜘蛛の足のひとつへと命中する。そのまま足を壊して槍は地面へと転がった。

塊は生まれない、か。すぐさま手斧を召喚する。

また走りはじめて……転ぶ。転ばされる。

足元にはあの大きな蜘蛛が張っただろう蜘蛛の糸が絡まっていて、軽い力では動けなくされた。……軽くない力なら取れるんだよね?

ブチブチブチ、と糸を引きちぎる。手斧を使って切りながら、手足で無理矢理に引っ張って千切るとなんとか糸は取れた。足に残骸がついてしまってはいるけれど、それを取るのは蜘蛛を倒したあとにしよう。

槍へと走り出す、途中で蜘蛛を切りつけようとするが……

当然のように避けられた。槍までは、まだ届かない。

ピュシュッ、と風切り音。咄嗟に進路を変えると、足を出そうとしていた位置に蜘蛛の糸がベチャリとへばりつく。

知性が、あるのかな?偏差射撃とかしてくるんだ……。

よし槍を掴めた、また槍を投げようとするけど、少し怖いよね。短期決戦ならグングニルよりも刺突の方が効くかもしれないし。

よし、そうしよう!それじゃあ使わないから手斧投擲!

これも避けられてしまう、けどちょうど糸を吐こうとしていたらしく狙いがズレている、私が動かなくても当たらない。


「刺突ッ!」


穂先が蜘蛛の身体へと吸い込まれるようにして命中した。蜘蛛がギチギチと鳴き声?をあげて少しの距離を開ける。

どうせ距離が相手も糸が飛んでくるし、私は攻撃できないし、と走り出す。

「刺突!──刺突ッ!」

一撃目の刺突は回避され、そのまま口を開けて糸を飛ばそうとしてくるので、引き戻した槍を反転させ、石突をその開けた口へと捩じ込む。

『ギィィィィィッッッッ!!!!!!』

断末魔を上げて、蜘蛛は絶命した。

私についていた白い糸も光の粒になって死体とともに、消えていく。

「ふぅ……やっぱり決定力が無いなぁ……」


ふらふらと導かれるように正面のドアを開ける。今度は毒も敵もありませんように、と願って。

チョロチョロ……という水音。噴水がそこにはあった。

「……敵、はいないね。これも罠なのかな?」

警戒しながら近づく。その噴水は特に罠とかではないらしい。……ふと、喉の渇きを感じた。

思い返してみれば、この世界に来て何も食べていない。回復薬は飲んだけれど、あれはドロリとしていて喉が潤うといった感じではなかった。

「毒、じゃないといいなぁ」

そっと一掬い。匂いは……しない、というか普通に水。ちろりと一舐めしても、普通の水のようで変な味はしない。


ふぅ、と一息。少しは楽になった。や、それにしても結構飲んじゃったかな。お腹とか下さないといいな。ってさっきから希望ばっかり言ってるや。

でも、なんでこんなことに~とか考えても滅入るだけなので、どこから水が湧いてるのかなーとか、地下への階段どこかなーとか、そんなことばかりを考えておく。

「さて、進むか」

進むとここへの扉は消えてしまい、戻ってこれない。だからといって進まないってのは寿命で死ぬだけ。何も迷うことはない。きっとドアを開けてればここへ戻ってこれるはずだから……。


勇気を出してドアを開ける。

ドアを開けた先には、小さなドラゴンがいた。

小さなといっても本当に小さかった。私でさえだっこ出来てしまうような赤ちゃんドラゴンは、紅い綺麗な鱗をその身を包み、黒目をこちらに向けると、怯えたように後ずさってしまった。

「か、かわいい……っ」

なにあれ小動物かな!?小さな頭に生えてる小さな角とか、クリクリとした黒目とか、背中でパタパタしてる翼とか!可愛すぎるんだけど!!

……それに、とことなく、ヨコシマさんに似ているその赤ちゃんドラゴンを、倒したくなかった。というかもう攻撃する気なんて皆無だよ!

さて、それじゃあ考えよう。どうやって倒さないで進むか。

1.扉まで全力ダッシュのガンスルー。

2.なんとかしてなつかせる。

3.倒す、現実は非情である。

4.その他

迷うことなく2だよね!!

ちょっとだけその他に良い方法を考えてみるけど、思いつかなかったもん。


まずは槍を仕舞う。そして目線を合わせるようにして屈んでみる。──もちろんローブの裾には気をつける。

『ピィ……?』

よちよちと近づいてくる赤ちゃんにすぐさま飛びついて撫で回したい気持ちになるけどぐっっっっっと我慢する。

「おいで~おいで~?」

『ピッ……ガァァ!!!』

赤ちゃんドラゴンのブレス。わーやっぱりドラゴンなんだなぁ。

でも、そんな炎じゃ乙女の柔肌は傷つけられないよ?乙女の柔肌は日焼けにも強いんだから!!(?)

『ピィッ!?』

「大丈夫、怖くないよ……おいで……」

今の私は聖母みたいな顔をしてることだろう!断じてデレデレもニヤニヤもしてない!

『信じて、良いの……?』

そう、聞こえた。目の前の赤ちゃんドラゴンが確かにそう聞いている気がした。私の奥に眠るステータスに違和感を感じるけれど、まずはこの赤ちゃんだ。

「私と一緒に、旅をしてみない?」

手を差し伸べてみる。

赤ちゃんドラゴンは他人を信じる恐怖で震えながらも、私の手に翼を乗せてくれた。



可愛いッッッッ!!!!!!

なにこの天使!可愛い!今すぐ抱きついてもふもふしてむぎゅーってしてそのまま一緒に寝てしまいたい!寝顔とかも可愛いのかなぁ!?お腹を出しながらでろ~んと寝て、よだれとか垂らしてる姿を想像するだけで私は、私はもう……っ!




そっと赤ちゃんドラゴンの頭を撫でてみる。ビクリ、と震えたあと、私に身を委ね目を瞑る。そのままなでなでしていると、どことなく気持ち良さそうな顔をしているのがポイント高い。

『ピィ』

「君の名前も決めないとね」

何にしようかなぁ、ヨコシマさんに似てるとは言え、この子はこの子。しっかりと彼を見てあげないとね。

……隆昭くん、ペット飼って良いでしょ?私が面倒見るから!

「アレキサンダー」

『ピィッ!?』

首をぶんぶんと振られる。そっか嫌か。

クリクリとしたその黒目が私に期待の色を見せる。


「クロノス」

『……』

迷ってる?あれ、そんな微妙?わりと良いと思うんだけど。

あ、赤の方がよかったのかな?鱗の色は赤だもんね。でも大丈夫、君の可愛い目は黒だから!

『ク、ロノ……ス?』

また声が聞こえた。

「そう、クロノス。どうかな?」

『ピィ!』

赤ちゃんドラゴン、その名をクロノスとした彼?彼女?は元気よく右の翼をあげたのだった。

よろしくね、クロノス。





私がまずしたことは、クロノスを抱きしめることだった。クロノスは最初こそバタバタと暴れたものの諦めたようにされるがままになった。……きっと、この子の力だったら無理矢理に逃げることは出来るのに。

『ピィ』

んー……なんだろう、言葉が分かるときと分からないときがある。

『ピィ……ピィッ』

クロノスがポケットに頭を突っ込んでいる。そこに入ってるの槍と手斧とゴブリンしかないよ?他には……ぁー、ゴブリンかな?

ゴブリンの塊を出してみる。クロノスの目線はその塊を追っている。上下左右に揺らしてみても、目線が追う。そしてかわいい。

『ピイッ?』

「……いいよ?」

何をするのか分からないけど。

『ピィ!』

ひょいパク。

えっ!?パクっとした!食べちゃダメでしょ!?

『ピィ?』

「食べ物じゃないよ!?ほら吐き出して!」

パカッと口を開けられたから中を見せてもらうけど……ない、ね。

『ピィーピッピ!』

今までとはまったく違う鳴き方。翻訳スキルは発動しない。


────────────

種族:ベビーファイアドラゴン

名前:クロノス

レベル:2/5(成長限界で進化)

体力:80/100(93/113)

魔力:51/52(56/57)

攻撃力:36(39)

防御力:22(31)

敏捷:54(59)

精神力:51(56)

幸運:1(4)


スキル

下級魔術(火・風・光)1

回避2


固有スキル

ドラゴンブレス1


主(飼い主)

白鳥 恵子

レベル:5/99


称号

従魔▽

虐げられし子▽

────────────


目の前に浮かび上がったステータス。さっきの鳴き声はステータスを呼び足す鳴き方、なんだと思う。

称号が2つある、確認しておこう。


従魔……主のステータス1割分を上乗せする。


これがステータスの上昇を生み出してるんだろうね。つまり私が強くなればなるほどクロノスは死ににくくなる。次。


虐げられし子……不運になるがステータスの伸び幅が大きくなる。


不運になる。今のところ幸運が低いとどうなるのか分からないし、隠しステータスがあるのかもしれないけれど、とりあえず伸び幅が大きくなるのは良いことだよね?

や、それにしても、さすが魔物。それの最強として謳われることが多いドラゴンだなぁ、ファイアドラゴンという名前の火竜、その赤ちゃんなはずなのに私と良い勝負のステータスを持ってる……。

んー、ゴブリンの塊はなんの意味があったんだろう?

まあ、いいか。とりあえず進もう。寿命は、縮まってる。この子を……クロノスを、一人にしちゃいけない。


ドアを開けて進んだ先にいるのは、裸電球と見間違うような天井から吊るされる1つの塊。それはミノムシだろうか?例のごとく大きさは50センチほどであり、キモチワルイです。

槍をポケットから取りだしクルクルと回し、構える。足元にいるクロノスが、口にブレスを溜める。いいよ、先制はクロノスに譲るね。どれだけ戦えるかは、ステータスで分かっているけれど、実際に見てみたいしねぇ。

『ガァァァ!!!』

私にも向けられたそのブレスがミノムシの身を包む。どうやら燃えるのを嫌ったらしく、ミノムシは風の魔法で身を守った。

そのまま燃えて消えてくれれば良かったのにね、クロノス。

「シッ……ハァッ!」

刺突は、使わない。どれほどの威力が上乗せされるのが分からない以上、敵の能力が測れない。

突き刺すのではなく、穂先の方で切り裂くように振るう。

ミノムシは天井から糸で吊るされている、それなら避けるのは容易ではないだろうし、当てるのなんて容易い。

私は真っ二つに、上下に分断できるほどに力を込めて切り裂いた、はずなのに。やっぱり槍は斬るための道具じゃない、それを実感させられた。

──相手の攻撃魔法が分からない以上、一撃で倒したかった。相手の能力を測ると言っておいて、矛盾してるようだけど。やっぱり攻撃されないのが一番いいから……。

『──』

聞き取れない音。風が葉を揺らすような、どこか心地のよい音。咄嗟に出来たのはクロノスを庇うこと。石突をクロノスの前の地面に突き刺し、自分の足でもクロノスを庇う。

だから、私は回避することも出来ずに魔法をくらう。

いたっ


──くない!乙女の柔肌は最強だった!くそぅ!なんかすごいムカついた!

「滅槍、グングニルッ!」

槍がミノムシの身体を貫いて殺す。塊にならないのか塊になんかさせないというのか……うーん、判断に悩むところだね。


『てれてれててててん』

『てーてれてってってってーっ』


同時にファンファーレ。


『残り時間3時間17分47秒51…』


『現在のレベル6。次のレベルまで1397EXP』

『残り時間5時間59分59秒』

恵子ちゃんに待望の仲間が!!!

これには作者も想定外過ぎてやばい。バランス調整がやばい。

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