正念場
日が昇るとともに集まった能力者は7人。
期待していたがライトはこなかった。
そしてその前に立ちはだかるのがゼロの下僕。
筋肉質の背の高い青年だ。
「我が名はカリウド。ゼロ様の下僕にしてお前らを葬るもの。それにしても7人とは随分と少ないな。開花できないやつが多いのか、弱虫が多いのか。どちらにせよ全て俺が葬ってやるよ。」
カリウドは声高らかに俺たちを睨みつける。
「ガンス準備はいいか?」
「もちろんだぜシキ。援護は頼んだぞ、マチス。」
マチスと呼ばれた男は深くハットをかぶっていて顔が見えない。
だが両手に拳銃を持っていることからこいつがガンスの連れだとわかる。
マチスは一回うなずき銃を構える。
「行くぞー。」
ガンスの叫びとともに戦いが始まる。
7人が一斉に飛び出す。
「大侵植」
「爆泡」
「枝角」
3人の能力が一斉に放たれる。
ドガーンというすさまじい音とともにあたりには砂埃が舞う。
「なんだたいしたことないじゃん。もう終わりかよ。」
「そうそう。もうちょっと強くてもいいのに、ゼロのやつかいかぶりすg・・・・」
男が一人倒れた。
そして消えた。
「鉄砲」
「う、うそだろ。あんなにくらったのに。」
「あんな攻撃効かん。」
カリウドは無傷で立っていた。
「鉄砲」
「ぐはっ」
もう一人の男も撃ち抜かれる。
「う、うそだろ。こんなとこで。死にたく・・・・ない。」
やはり消えた。
どうやらこの世界では死ぬと消えるらしい。
「う、うわあああ」
泡の能力者が敵前逃亡する。
「ふっ、ザコが。鉄砲」
そして消えた。
「ガンス気をつけろ。こいつただものじゃねえ。」
「ああ。あっという間に3人も。」
カリウドの想像以上の強さにもう一度気を引き締め直し拳に力を入れる。
「行くぞ。」
こんどは二人でつっこむ。
「無駄なことを。鉄砲」
「シキそのまま行け。俺に任せろ。」
「ああ。」
ガンスを信じそのまま全速力で走る。
「岩壁」
目の前に岩の壁がそびえたつ。
その壁はカリウドの弾丸を見事防いだ。
「さすがガンス。」
「行け、シキ。きめろ。」
「うおおおおおおお」
殴った。
全力でカリウドを殴った。
そしてカリウドの体は吹っ飛ぶはずだった。
目の間にいたのは倒れたカリウドではなくビクともしてない姿だった。
「鉄化」
「な、なに!?効いてない。」
「残念だったな。俺は鉄の能力者。体を鉄にすることだってできるんだよ。」
やばいと一瞬で見極め素早く後退する。
後退した直後におそろしいほど鋭いキックが来た。
「あぶねー。」
「大丈夫かシキ。」
「ああ。でもあの体硬いな。」
「ならこっちも弾丸をぶつけよう。マチス任せた。」
マチスはまた一回頷くと銃を構えた。
「思いっきりぶつけてやれ。」
ガンスの激と同時に放たれた2発の弾丸はカリウドに命中した。
命中はしたが貫くことはなかった。
初めて見たマチスの顔は驚きの表情だった。
「そんなやわらかい弾じゃ俺は貫けないぞ。」
「どうするシキ。」
「いくら体を鉄にしたって体は体。弱点を突く。」
「わかった。俺たちに援護は任せろ。つっこめ。」
「ああ。」
再びつっこむ。
「ちっ、めんどくさいやつらめ。鉄連銃」
弾が連続で飛んでくるがお構いなくつっこむ。
「岩重層壁」
さっきよりも何倍も厚い壁が俺を守ってくれる。
前から1発こっちに飛んでくるが後ろからの1発に弾かれる。
振り返るとマチスが親指を立てていた。
「今度は本気で行くぞ。」
全神経を右の拳に集中し相手の弱点を感じ取る。
「真空拳」
「無駄だ。俺の体は傷つけられん。鉄化」
風をきった拳がカリウドの腹へとくいこむ。
「うおおおおお」
さらに力を入れ全霊をかける。
「ぐはっ」
カリウドの体は宙に浮きそのまま倒れこむ。
「シキどけ。」
「お、おう。」
ガンスの言われたままその場から離れる。
「岩龍」
岩でできた大きな龍がカリウドに襲う。
そしてそのあとから何十発という弾丸が援撃する。
「ぐわあああ」
傷ついたカリウドのそばにある少年が現れた。
「ここでおれっちハクネが登場だよ。」
ハクネと名乗る少年はどこから調達したかわからないダイナマイトを点火させカリウドのそばに置いてからこちらに走ってきた。
ズドーンという轟音が鳴り響く。
「やったー、やったーおれっち大勝利。」
「お、おいお前いつからいた?」
「最初からだよ。おれっちの能力は気配を消す能力。だからだれにも気づかれなかったんだ。」
「そ、そうか。」
「おお。よくやった。これで一人目クリアだな。」
ガンスがハクネの手を取り振り回しながら喜ぶ。
「鉄砲」
弾丸がハクネの頬をかすめる。
「痛い。嘘!?まだ死んでないの?」
「そうみたいだな。どんだけタフなんだ。」
「おれっち能力一回気づかれたら次の効果は薄くなるんだ。」
「それなら下がってろ。俺たちだけでやる。」
「お、おう。任せたよ。」
そう言いながらハクネは全速力でエリーがいる遠方へ逃げた。
「よく生きてたな。」
「ああ。さすがにまずいと思ったが爆発の寸前で鉄化させてもらったよ。」
ボロボロになった体をなでながら笑う。
「もう一度行くぞシキ。」
「おう。」
「もう一度などない。」
ガンスとカリウドが同時地面に手をつける。
「岩龍」「鉄龍」
岩と鉄の龍が現れお互いに交りあう。
ほぼ無傷のガンスの優勢かと思ったが岩の龍は鉄の龍にことごとくやられる。
そして全てを喰らったところでその牙は俺たちのほうへ向かう。
「やばいぞ。逃げきれない。」
マチスが何発も撃つが簡単に弾かれる。
「なるべく逃げろシキ。厚い壁は出せそうもない。」
「ガンスはどうするんだ?」
「俺はなんとかする。はやくいけ。」
俺はガンスの目を信じ少しでも遠くへ逃げた。
「岩壁」
壁が出現するもその壁はあっさりと砕けた。
「「うわあああああああ」」
遠ざかっていたため致命傷は避けられた。
「ガンス、ガンス無事か?」
声が返ってこない。
「ガンス!」
もう一度友の名を呼ぶ。
「安心しろ。生きてるよ。」
そこには果てしなくボロボロだがしっかりと2本足で立ってるガンスがいた。
「なっ、まだ生きてるとわ。しつこいやろうだ。」
「それはそっちも同じだろう。」
ガンスは笑みを浮かべながらカリウドに言う。
「ガンス大丈夫か?」
「心配はいらん。だがそう長続きはしないかもな。あと1発で決めてくれ。」
「わかった。」
今一度あたりを見渡す。
ガンスの言った通り俺たちは長続きしない。
そのためにも必ず決める。
右手を挙げて叫ぶ。
「ガンス、マチス行くぞ。」