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タイムスリップ

作者: 11番29号

僕は死んだ


彼女と僕は新幹線で旅行先へ向かっていた

彼女はバックの中からポテチを取り出すと僕の口へと運んだが

僕は道中したちょっとした口論を思い出すと無言で窓の外を眺めた


新幹線の車内が少し揺れて大きな揺れにすぐに変わった

その瞬間から時間が少しづつ長く遅くなり目の前の座席が顔に凄い勢いで飛んでくるのが

ゆっくりと見えた

まるでバッドのフルスイングを両目にもらった程の衝撃と同時に

僕は視界を完全に奪われた


どれくらい時間が経ったのか、あまりの痛みに身体をうねらせながらも

僕は声を出している事に気がついた

「大丈夫か」

周りから少しづつ警告音や叫んでるいる乗客の声が聞こえてきた

隣で彼女が大変なことになっているかもしれないと思うと僕はもう一度声をあげていた

「大丈夫か」

目を開けることが出来ないまま僕は恐る恐る自分の顔に触れてみたところ

どうやら目は開かないのではなく、完全に陥没してしまっているであろう事がわかった

「おい大丈夫か」

三度目の問いかけに彼女の声が返ってくる

「うん、何とか...そっちは大丈夫?」

「大丈夫...ではない、たぶんもうダメだ」

枯れた声で返事をすると私は気を失ってしまった


目が覚めると僕の目の前には見知った女性が座っていた

夢で良かった、そんな話を彼女にして安堵してみたものの

僕はこの風景を知っている

この女性とこのあとホテルに行くのだが

喧嘩になってしまい手を繋げずに映画を観ながら寝てしまうのだった

僕はタイムスリップしたのだ(と錯覚した)

タイムスリップしたと思うと、もう一度チャンスがあると思って

不思議と焦る必要がない気がしていた


なぜなら次の日仲直りをして、手を繋いで歩く事を知っていたからだ


しかし何度手を繋ごうとしても記憶とは違い、彼女の手は僕の手を磁石の対極のように避け

いつの間にか僕は彼女と手を繋ぐことに囚われ数日間ことごとく失敗した

僕はまた気がつくと彼女とベッドの上で楽しく話していた

「もしも何かで死にかけたら、その時は絶対に手を繋いで死のうね」

その風景を見るまでそんな約束をした事も忘れていたので懐かしい気持ちでまたそう約束した

少しづつ彼女の顔色が変わっていき彼女が言った

「もう時間がない」

僕は大声で叫んだ

「手を繋ごう!」

すると彼女の濡れた手が僕の手の平に入ってくるのがわかり

僕は安心感に包まれた





そして男は新幹線の座席で女の手を握り息を引き取ったのだった


おしまい

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