第3話 過去の記憶
その初恋の人は、クラスメイトの良子だった。
気が優しく、いつもクラスの仲間からいじめられていた裕一にとっては、頼もしい人物であった。
そんな裕一たちに小学校を卒業し、中学生になるという時期がきた。
裕一は、母親から私立中学への進学を勧められたが、どうしても良子のことが忘れられなかった。
いや、正直、裕一は、良子なしには生きていけないと思っていた。
卒業式の日、裕一はある決断をした。
それは、告白だった。
しかし、当日、結局、裕一にはそれができなかった。
裕一は、気がそれだけ弱かったのである。
しかし、そんな裕一を中学になっても、良子は守ってくれていた。
裕一は、そんな神妙な心持のまま、中学一年の夏を迎えた。
そう、裕一に悲劇はおきた。
良子が交通事故で死んだのだ。
前から来たトラックが、ブレーキもかけずに良子を轢いたというのだ。
それからというもの、裕一は、ショックで学校に行けなくなっていた。
もう、裕一には生きる気力さえなかった。
でも、自殺は、とても裕一にはできなかった。
やがて、残りの2年半、中学には行かず、高校へも行かなかった。
そして、今、裕一は、単純なニートへと変貌してしまった。
裕一は、母親の持ってきた料理を食べ、そしていつものように下に置きに行った。
下のキッチンでは、父と顔をあわすが、ここのところずっと話をしていない。
たとえ、話しても、早く一人立ちしろだのいわれるだけだからである。
そして、裕一は無言のまま、二階の自分の部屋に入ろうとした。
そのとき、裕一は部屋に誰か倒れているのに気がついた。
「おい大丈夫か。」
裕一は倒れている少年に声をかけた。
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