建国記念の日
「さて……」
紀元祭を執り終わった、高校2年生の宮司宮司が、服を正していた。
そこへ、寮の同じ部屋にいる星井出包矛が帰ってきた。
「おう、お疲れ様」
すでに2年間共に生活しているから、星井出も慣れたものだ。
まだ正式な神職として奉職しているわけではないので、階位はないが、出仕として業務に携わっていたことがあるため、服装はその時のを踏襲している。
「何してたんだ」
星井出が、私服のまま二段ベッドの下に腰掛けて、宮司に聞いた。
「今日は紀元節だから、紀元節祭をな」
「今日って、建国記念の日だろ。紀元節って日じゃねえぞ」
宮司が着替えながら、星井出に答える。
「昔は紀元節って祝日だったんだよ。1872年、明治5年に初代天皇であられる神武天皇が即位した日として制定されたんだ。それから昭和に入って天皇親祭として、大祭の一つとされたんだ。まあ、制定以来、祭としていろいろとしていたんだけどな。それに、この前後で太陰暦から西暦へと変わったから、日付も変わってたりするけど、祭として継続して執り行われてきたんだ。戦後、GHQによって廃止されたけど、紆余曲折を経て「建国をしのび、国を愛する心を養う」日として、法律で制定されたんだ」
「へぇー」
星井出がそう言って、宮司の服を、丁寧に畳んでいた。