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虚飾の空  作者: 古村
平常な一章
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 ゲームセンターを後にしたのは十八時過ぎ。

 頭上の空はすでに濃紺の天幕を張り終えて、その至る所から小さな光を降らせている。冬の透き通る大気は星をより見やすくするらしく、その上さらに今日は雲ひとつない快晴のために星がよく見える。


 陸東市はどちらかと言えば都会な都市だ。

 斎条町と陸東町が、斎条河を間に挟んで存在している。陸東町は斎条町よりもなお、都会な町である。

 星々は、地上の明かりにライトアップされた雑踏の上に、我関せずというように輝いているのだった。

「夜になると冷えるもんだなぁ」

 右京が、ブレザーのポケットに両手を突っ込んで、白い息を吐く。

 霧吹きで吹いた水のように柔らかく、上空へと霧散してゆくのだった。

「さすがに冷えるね。十一月も今日で終わり、か」

 明日からは、一年の最後の月である十二月だ。

 これからは昼夜を問わず、どんどん冷え込んでいくだろう。

 寒いのが特段嫌いというわけでもないが、やはり人間なので苦手ではある。

「もうすぐ冬休みやねぇ。今年も三人で、どっか行かん?」

 和馬が、はぁーっ、と自分の両手に息を吐きかけつつ言った。

 去年の冬は右京、行路、和馬の三人で雪国へとスキー・カニ極楽ツアーを楽しんだのだった。

 今年はどうなるのだろう。

「まぁまた、そのうち考えようか」

 バイトの方も考えないといけないな、などと考えながら行路は言う。

 冬休みを越えて春休みを終えれば最高学年、受験生の身となる。

 そうなってしまえばもう、遊びには行けないだろう。

 春休みも、三年生となる準備が色々とあったりしてあまり時間的な余裕はない。

 つまり実質、纏まった日程で遊びに行く予定を組めるのは、目前に迫った冬休みだけなのだった。

「何日だっけ、休み始まるの?」

 右京は未だに星空を見上げながら言う。

 それでも歩いてくる人や、路上の様々な障害物にはかすりもしないのが何とも気持悪い。

 えーと、と思い出すように和馬が答える。

「十五日やったよね、行路?」

「うん、十五日が終業式だな」

 記憶をたどり、ちょうど本日のホームルームで配られた来月の行事予定表の記載を思い出す。

 たしかそうであったはずだ。

「お金は大丈夫かなぁ? ぼくは一応、夏休みからちょこちょこ貯めとったんやけど」

「俺も大丈夫だぜ。週末の土方工事の手伝いだけでも、案外貯まるもんだ」

 右京は週末限定で持ち前の怪力と体格を生かして土方工事現場の手伝いをしていた。

 かなりハードならしいがその分、けっこうお金になるのだろう。

「僕もまぁ、いつもどおりかな。バイトも普通にしてるわけだし。足りない分はゲームとグッズをオークションにかければ……」

 行路は学校から徒歩二分のところにあるコンビニでアルバイトをしていた。

 時給は普通よりすこしいいぐらいだし、楽しい職場だ。シフトを強制されたり、ということもない。

 それに人間関係も中々良好だったりする。

 行路がそこに勤め始めてから、彼の顔見知りが多数、顔を出すようになったりもしていた。

 そういうところは恵まれていると思う。



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