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弟のアイマスがうるさいんだけど。
「うお、また連コインしてきやがった……やめられねーんだけど」
行路と和馬が格ゲーのブースへと足を運ぶと、大柄な右京はすぐに見つかった。
「やぁ右京、どんなかんじ?」
行路がそんな言葉と共にその大きな背中へと声をかける。
彼は振り向かず、ガチャガチャと操作をしながら返事をした。和馬が覗きこんだところ、どうやら今は、対戦中のようだ。
「相手が三千円くらい連コインしてきてんだけど……終わんねぇ……」
三千円!?と和馬が驚きの声をあげる。
行路も言葉には出さないが内心で「アホか……」程度には思った。
負けが悔しくてついついリベンジしてしまうのもわからないではないが、どう考えても三千円はやり過ぎだ。
そうこうしているうちに再び鳴り響く「ユア、ウィナー!」とファンファーレ。
もう三十二回目だ、と右京はげんなりする。
「負けたげればええんやないの?」
右京はこちらも見ずに首を振る。
そして彼は事もなげに言うのだった。
「俺は挑戦者を拒まねーからよ。向こうが折れるまでは折れねー」
立派だねぇ、なんて和馬の相づちに行路も頷いておく。
「じゃあ右京、僕たち先に帰ってていい?」
その途端に、右京の操作していたゲーム筐体から今までとは少し毛色の違う電子音がした。
行路はその音が、挑戦者を拒んだ際に鳴る音であるということを知っている。
「さーて帰るとすっか、行路、和馬」
「え? えぇ?」
混乱している和馬を尻目に行路は「そうだね」とだけ返すのだった。