4α 2/2
「カッコいいね、庇ったりなんて、しちゃってさ!」
メローネが秋風に発砲する。
乾いた音が、轟音犇めく雑踏に軽く響く。
それを秋風は腰に挿していた軍刀であっさり切り払った。
ギィンという音が鳴る。
常識の範疇で考えれば明らかに刃が負けるであろうに、刃はこともなげに弾丸を逸らした。
体勢を崩した秋風へとさらに立て続けに発砲するも、それをも秋風は完全に切り伏せてしまう。
彼の琥珀の両目が赤く輝いているのが、その能力が発動されていることを示していた。
いま彼が行っているのは『重力操作』に『神経加速』。どちらも過去に写し取った異能の力だ。
これにより秋風は今、空中で圧倒的な戦闘を見せている。
実のところ、彼は弾丸を切ってなどいない。
ただ、向かって来る弾丸に剣先で触れて、弾丸の軌道をずらしているだけだ。
『神経加速』という力によってこそ、なせる技である。
さらに。
フッ、と、空中にいたはずの秋風の姿が掻き消えた。
その途端に、ホロンが叫んだ。
「メローネ、お前は哀歌さまを追え! ここは私が!」
「……!」
何も言わずに、メローネの姿が消えると、それと同時に、そこに秋風が現れる。
「ちゃっちゃと片付けないとね」
相変わらずの薄笑いで秋風がそう言う。
再び雑踏に、轟音が鳴り響いた。
神経加速とは、文字通り神経を加速させることによって、自身の『知覚』を限界まで速くすることなのだ。
重力操作は、その通り。説明の必要もあまり感じない。
どちらもまたいずれ。