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虚飾の空  作者: 古村
灰色の序章
1/17

1α 1/2

ライトノベルの定番、異世界バトルもの。

電撃文庫大賞、第二十回応募予定作です。

見ていただければ幸い。



 一人の少女が佇んでいる。

 彼女の周り、足元へと広がる世界は、現実離れした灰色。どこにも、色彩がない。

 だが、彼女にはそれがある。

 背中まで流れる銀色の髪や、世界を見る紫色の瞳、見に纏うゴシックロリータ調の服、生を強く感じさせる肌には色があるのだ。どうしてかその腰にはレイピアが挿されていて、それが服装と相まってどこか前時代的な雰囲気を醸し出している。

 だが、それ以外には全くと言っていいほどに色がなく、それゆえに灰色の世界だった。

 まるで鉛筆一本で描かれた写実的な風景画のように、それはそれは無機的だ。


 少女は、雑踏の中にいた。

 その姿には色があるのに、その様子はどこか、周りの世界と変わらない灰色で。

 音のない雑踏へと群れる人々はやはり、灰色で。

 とある灰色のビルの屋上から、消えた色が横たわる雑踏を見下ろしていた。

「また……また、こんな世界……」

 どこか投げやりで、どこか苛立った、そんな声が喉からこぼれていた。

 なぜ『世界』はこんな事実も知らずに流れているのだろう?


 視界の奥の方には、たくさんの人がいる。いや、ある。

 動いていないのだから、あるだけだ。


「哀歌さま」

 そんな彼女の後ろ、数歩のところに一人の男が現れた。

 屋上へと出る階段を昇ってきたのかすら定かでない、無音で唐突に、彼はそこに表出した。


「……うん」

 哀歌。そう呼ばれた少女は、振り返る。

 そこには彼女と同じように、色を持った男がいた。

 痩身の長身を黒のスーツで包み、壮年の浮かぶ顔に眼鏡をかけている。

 シルバーブロンドのオールバック。

 まるで中世のバトラーとでも形容できそうな立ち姿の男だ。

「……外を、見ていたのですか」

 男は穏やかな声で、哀歌に問うた。

 

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