黒作戦発動
エルヴィン・ロンメルを出してみました。相変わらず下手くそですが…
翌26日午前7時―――
前日の総統直々の激励もあってかロンメル師団の宿営地は活気に満ち満ちていた。
「あと2時間で出発だ!お前ら、ちゃんと飯食っておけよ!」
どこかの隊長だろう。声を張り上げて部下の朝食を急がせている。
「おいおい、急かして喉に食い物を詰まらせたら逆効果だぞ?」
苦笑しながら背後から声をかけてきた人物に隊長は慌てながらもドイツ式の敬礼をして返答した。
「しょ、少将!?いえ、今回の作戦に支障がないようにとの配慮をしていたのです」
「そうか。だがこれから向かうのは戦場だ。部下もそれくらいわかってるだろうから朝食ぐらいゆっくりとらせてやれ。まぁ遅すぎはよくないがな。さて、お邪魔してしまったようだな。私は司令部に戻らせてもらうよ」
それだけ言うとロンメルは司令部になっているテントに戻って行った。その隊長は
「流石は部下思いといわれるロンメル少将だな。俺も見習いたいもんだ」
そう一人ごちて自らも部下たちとともに朝食をとった。
3日後―――
首尾よくユーゴ軍の国境防衛線を突破したロンメル師団は一路ベオグラードを目指していた。
「それにしてもあっけないものだな。たった2,3時間で防衛線を突破して以来まともな反撃すらないとは」
無論、ロンメルもいくら小国とはいえ敵にとっては愛する祖国なのだからそれ相応の迎撃はしてくるだろうと踏んでいた。しかし現状はどうだ。反撃がないばかりか敵部隊との遭遇戦すら起きていないではないか。厳密には昨日少々小競り合いが発生したのだが威嚇射撃を行っただけでユーゴ軍は尻尾を巻いて逃げて行った。ちなみに実際には国境近辺の戦闘を指揮し、戦っていたのは国家の中枢の大部分に当たるセルビア人ではなく、クロアチア人であったため、戦意に欠けていたのではないかと思われる。
そんなわけでほとんど敵と戦うことなく1週間後の10月6日には首都ベオグラードからわずか25キロの位置まで進軍した。このころにはすでにベオグラードの国王一家はイギリスへ亡命するため、隣国ギリシャに移動していた。とは言うものの実際には逃亡に等しく、国内においてはすでに首都近辺から混乱が起き始めていたのである。このまま何事もなくベオグラードを占領できるかと思われたが、先ほど発見された敵航空隊の突撃によってそれはなくなったのであった。
「少将!敵空軍さらに増援!5機程度加わったと思われます。全機戦闘機のようです」
「陸軍の動静は?」
「現時点で周辺10キロ以内に敵影なしとのことです」
どうやら空軍単独で動いているらしい。仮に陸軍が来るとしても3時間はあるか。ロンメルはそう判断し
した。
「戦車部隊を後方に下げ、対空戦闘で弾幕を密にしろ!戦車を無駄にするな!」
「ようやく敵機のお帰りのようですなぁ」
双眼鏡で敵軍を眺めていた部下の一人がそうつぶやいた。
この戦闘でユーゴ空軍は8.8cmFlaK18型および36型を含んだ29門の対空砲、高射砲を破壊し、多少ながらも被害を与えたが、ロンメル師団は作戦の続行を決定、進軍を再開した。しかし、
「前方3キロほどの位置に新たに敵陸軍発見!また、後方戦車軍団より敵軍別働隊らしき集団発見との報告!」
「3キロだと!?今まで伝令どもはなにやっていたんだ!!」
そうどなている部下を横目にロンメルはため息をついた。
前後してドイツ本国、国防軍総司令部―――
「ロンメル師団がユーゴ空軍の攻撃を受け、対空戦闘を行うも被害ありとのことです」
そう言いながら参謀の一人が会議室に入ってきた。
「どういうことなのです?今更思い出したように反撃なんて」
「・・・分かりかねますな。可能性としては、王室の逃亡による混乱の収拾といったところですか」
別の参謀がそう言った。
「可能性はあるのです。敵機の数は?」
「報告によりますと敵部隊は全機戦闘機、数は30機ないし40機程度だそうです」
実際には20機程度だったのだが本国に通達することを急いだ電信兵が見間違えたか、焦って打ち間違えたのだろう。なんにせよ、この規模から考えて少なくとも航空隊レベルでの反撃であることは明白であった。と、そこに
「新たな情報が入りました。敵陸軍部隊少数を発見し、間もなく交戦するとのことです」
「今度は陸軍だと?今まで何で出てこなかったんだ。それに話を聞く限り混乱しているわけではなさそうだが」
「・・・のようなのです。とにかくこのまま敵部隊を蹴散らしてベオグラード早く落とさないと…マジノ線のフランス軍が増強されているという報告もあるのです。今のところ追加の指令はせずともいいのです。何かあったら連絡してくださいなのです」
「了解!」
再びロンメル師団―――
すでに先ほどから戦闘が開始されていた。
今回はロンメルとて総司令官である以上最前線に立っての進撃はできないため、後方で今後の作戦展開を話し合っていた。
「敵は少数、一気呵成に打ち破ってベオグラードを落としましょう!」
そうロンメルに直訴しているのは第5連隊を率いる周囲からもよく言えば猛将、悪く言えば無鉄砲として知られているロベルト=カウフマン大佐であった。
「少し気になる点はありますが・・・このまま戦っている間に敵に援軍が現れたら厄介でしょう。カウフマン大佐のおっしゃる通り迅速な行動が望ましいかと」
そう言うのはもう一人の連隊長でカウフマン大佐と反対に常に冷静沈着、物事を理論的、合理的に考える有名なアルフォンス=フライベルク大佐だ。正直、この作戦に相反する思考の持ち主である二人を連隊長として起用するのはあまり好ましくなかったのだがほかに適任者がいなかった以上仕方ない。
もっとも、幸い意見が分かれることもないようだし、結果的には杞憂に終わったようだが。
「私も君たちと同意見だ。前線部隊の戦車隊長に連絡取れるか?」
「少々お待ちください・・・どうぞ」
「こちら指揮官のロンメル少将だ。そちらは?」
『こちら第23戦車中・・・ザー・・・カルツ大尉です。・・・ザー・・・ル少将どうぞ』
「前方に展開している軍勢を撃破し、そのままベオグラードまで突っ切っててくれ、以上だ」
『・・・ザー・・・了解・・・プツッ』
「さて、君たちも戻りたまえ。戦闘が終了すれば全軍前進だ。指示があれば無線で連絡する」
「「了解!」」
結果から言えばわずか1時間程度でユーゴ軍必死の抵抗も実質戦闘を指揮していたらしい戦車がやられるとあっけなく崩壊した。元々数も質も、装備すらも劣るユーゴ軍には地の利程度しか残っていなかったのであるから仕方ないともいえる。
とは言え、ドイツ軍の侵攻からこの戦闘が終了するまでの間にユーゴスラビア、あるいはベオグラードから東へ逃げた国民は1万人以上におよび、その国家への貢献には計り知れない効果があったことだろう。
一方のドイツ軍は、ユーゴ軍を圧倒していながら4号戦車や8.8cm高射砲36型などの最新兵器を含む14両の戦車、23門の対空砲・高射砲と300人を超える死傷者を出したこと、そして後述するベオグラード占領時の市民への砲撃および殺害によりロンメル以下の進級に影響を及ぼしたのである。
さて、そのように各方面であらゆる影響を及ぼしたユーゴ陸軍最後の抵抗も空しくその日のうちにベオグラードが陥落し、総司令部も降伏した。また、ベオグラード占領の際に市民の抵抗があり、100人以上もの市民を殺害したのである。この中には史実においてクロアチア人主体の共産党パルチザンを率い戦ったヨシップ・ブロズ・チトーの名もあったのである。
戦後処理において民族間の対立を利用しようとしたエリカはクロアチアにファシスト政党、ウスタシャによる傀儡国家クロアチア独立国を建国させ、これをイタリアおよび旧ユーゴ軍の残党、王党派パルチザンのチェトニクとの戦闘へ投じさせることとなったのである。
また、ギリシャに逃れた国王一族はイタリア、スイスを経由して英国へとのがれ、亡命王立政府を建てた。
かくしてバルカン半島で最大にして最強の国家、ユーゴスラビアはわずか10日で降伏した。このことは連合国各国、特に英国にとっては予想外の事態であったのだ。
元になってるゲームの性質上4号戦車ではアメリカどころか後期カナダ、イギリス軍戦車にすら勝てないので敢えて昇進を遅らせてみようかなと。
ちなみに史実ではフランス侵攻の後にユーゴ侵攻が行われました。その時は空軍による大規模支援の後の侵攻だったんですけどね。
あといつの間にやらユニークアクセス数が400突破してたみたいです。ほんとに何と言いますか・・・こんな駄作を見てくれている方がいられるようで感無量ですw
次はイギリスがようやく出てきます
次回『首相と司令官』気長にお待ちください