ポーランド侵攻と総統のわがまま
このグダグダ感をどうにかしたいです・・・
1939年9月1日、ドイツ・ポーランド国境―――
以前より国内各地から集められていた多数の戦車部隊や歩兵部隊が続々と国境を越えて進軍を開始した。宣戦布告すらない突然の侵攻にポーランド政府は恐慌に陥り、迅速な対応を採れなかった。エリカの狙いはそこにあったのだ。今作戦、ポーランド侵攻作戦、通称白作戦は宣戦布告前に侵攻し、敵勢力が混乱している間に首都を落とすという前代未聞の作戦であった。そして今作戦はドイツ軍の士気向上と実地訓練を兼ねてもいる。ちなみに現場指揮官には作戦の立案者であるエリカが自ら名乗りを上げた。
「順調にいってるのです」
エリカはそうつぶやくと爆音とともに前方にすでに見え始めているポーランド航空隊を睨んだ。
「思ったより対応が早いのです。各戦闘機隊に打電、敵機をもみつぶすのです」
あの程度の航空隊、ドイツ空軍の力を見せつけるちょうどいいチャンスです。そう思い、エリカは突撃命令を出した。命令に従って、敵機のいる前方へと多数の戦闘機が爆音を上げながら飛び去って行った。
数分後―――
「ほんとにあっけないのです」
十数機はいたであろうポーランド空軍はものの数分で全機撃墜。こちらはエンジントラブルで1機が帰還しただけである。あまりにも弱い。よく今までどこからも攻められなかったものだと思った。もし攻められていれば我がドイツ帝国でなくともものの2,3カ月で陥落しただろう。もちろん、エリカはこの作戦にそれほどの時間をかけるつもりはさらさらない。この戦争は時間との勝負なのだ。各国が対抗措置を取る前にできるだけ多くの領土や資源を手に入れる必要がある。そのためにもすでに本国の研究機関には次の主力戦車となるであろう4号戦車の開発を指示している。この調子でいけばあと数カ月で実戦配備できるだろうという報告も受けていた。エリカがそこまで考えを巡らせたところで部下からの報告が入った。
「前方11時の方向に敵軍戦車部隊。爆撃隊12機を向かわせましたが効果は軽微、追加攻撃の指示を」
「航空隊はワルシャワに向かわせるのです。陸上部隊は訓練がてらにうちの機甲師団をぶつければいいのです」
つまるところエリカはとことんポーランドをなめているわけだがこの指示の結果ポーランド降伏が数日遅れたのである。エリカは遅くとも2週間でワルシャワまで侵攻できると考えていたが各地のポーランド軍は予想以上に統率が執れており、ドイツよりもはるかに旧式な装備ながらも頑強に抵抗したのである。もっとも、その抵抗がドイツ軍にもたらした損害は軽微どころかかすり傷にすらならないというなんとも悲惨な結果ではあるのだが。むしろ、ドイツ軍に抵抗し、降伏が遅れたためにソ連の侵攻をも受け、国としては消滅したうえに元々同じ国同士のものが二つの国によって引き裂かれるという悲劇すらも巻き起こしたのだ。なにはともあれ、侵攻からおよそ3週間後の9月19日にワルシャワは陥落、この驚異的な進軍スピードに、米英仏の三国は驚嘆したという。さて、初の実地任務を終え本国に帰還したエリカはというと・・・
「おい!エリカ!エリカはどこだ!」
無能な女好きの相手をしていた。
「ここにいるのであります。何か用ですか?」
まったく、帰還したばかりで疲れているというのに一体何だというのだ。
「おお、そこにいたか。いやな、帰ったばかりで悪いがすぐにまたポーランドに行ってくれないか?」
は?
「何でですか?」
「ポーランド一の美女を連れてきてくれ!」
死んでしまえよ・・・。エリカは最早呆れを超えて殺意すら芽生えてきた。もっとも、そんなことをして困るのはドイツなのだが。やむを得ない。いくらバカとはいえ総統命令である。従わないわけにはいかなかった。
「わかったのです。でも連れてくるのは一人だけなのです」
念のため釘はさしておく。こいつの命令がなければ軍も国も動けないのだ。
「えぇ~?別にいいじゃんかよぉ~?」
あぁもう、説明せずともこれくらい理解してほしいのです。女遊びにかまけて軍を動かすことができなくなれば戦争どころではないのだ。英仏に対抗するためにもバルト三国、せめてラトビアや、ユーゴスラビアだけでも落とす必要があるというのに。なんてことを説明してもどうせ分かりはしないだろうと思ったので
「ならほかの国の美女はどうでもいいのです?」
流石はドイツ軍人といったところか。エリカの言葉にヒトラーも
「いーや!世界中の美女は俺のもんだからな!よし、そういうなら一人で我慢しとこう!いざという時に使えなきゃ困るしな!ワハハハハ!」
・・・何が困るのか聞いてはならんだろう、これは。
勝手に笑ってることだし、ほっといてさっさとポーランドから美女を連れてくるのです。まったく、ヒトラーにつかまっちゃうなんて可哀そうです。そんなことをつぶやきながらエリカは部屋を後にした。実際、その哀れな美女はエリカが選ぶのだが・・・
ポーランドへ向かう飛行機の中でエリカは一人、次の作戦を考えていた。
ポーランドに駐留させている部隊から三分の一をラトビアに向かわせて残りをエスターライヒに集結させてユーゴスラビアに侵攻するか、あるいは全軍でバルト三国の攻略を目指すべきか、はたまたフランスの不意を突いて西進するか・・・悩むところではあるがやはりいきなりフランスに侵攻するには兵力が少ない。仮に国境を突破できてもパリまでの道のりは遠いし、下手をするとベルギーやオランダ経由でイギリス軍が本国に進駐する可能性もある。そんなことになってはフランス侵攻どころではない。兵站を側面から突かれ、組織的な戦闘ができなくなる。やはりここは北進か南進だろう。ソ連もバカではないから真っ先にバルト三国を狙うはず。ならばこちらはラトビア一国で諦めてさっさとユーゴスラビアを落としたほうがいいだろう。そう言えば、イタリアから枢軸加盟の話が来ていたんだった。確かに今この状況でフランスへの防壁は多いに越したことはない。だがいかんせんイタリア軍は弱すぎる。やはりまだ回答する時期ではないだろう。これで作戦は決まったかな。エリカは本国に帰還したら早速ラトビア侵攻とユーゴスラビア侵攻の作戦を固めようと決意した。まぁそれはポーランド一の美女とやらをヒトラーに差し出してからになるが・・・
「しょうがないのであります」
その一言で片づけれるくらいには心の広いエリカであった。
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