スチャラカOLの住処(お題小説)
沢木先生のお題に基づくお話です。
「通販マニア」をお借りしました。
大手商社のOLの香は、同僚のスチャラカOLの律子と買い物に出かけた。
あちこち歩いて疲れたので、香はそこから近いという律子のアパートに行った。
(そう言えば、律子のアパートって初めてかも)
「上がって」
律子はドアを開きながら香に言った。
「お邪魔します」
香は、
(会社の机が滅茶苦茶の律子だから、アパートはゴミ屋敷かな?)
不安に思いながら入ると、嘘のように片付いている。
キッチンのシンクはピカピカ、洗った食器は全て奇麗に籠に並べられている。
フローリングの床の上のこたつの上も取り立てて散らかっておらず、コーヒーメーカーがあるだけ。
カラーボックスに並べられた本はどれも順番になっており、普段のガサツな律子からは想像ができない。
「どうしたの?」
あまりのギャップに香が呆然としていたので、律子が声をかけた。
「あ、ごめん、ちょっとびっくりした。もっと散らかっていると思っていたから」
香はバツが悪そうに言った。すると律子は腕組みして、
「そうなんだよね。ここまでしなくてもいいのにって思うんだけどさ」
と妙な事を言い出す。
「どういう事?」
香は意味がわからず、尋ねた。
「藤崎君がさ、片づけ魔なの。ちょっと散らかっていると、すぐに掃除したり、整頓したりで」
律子はニヤけて言ったので、香は不愉快になった。
(惚気か!)
ギャップのない律子に少しホッとした香は、
「あれ、このクローゼットの扉、歪んでない?」
と近づいた。
「ああ、ダメ、香、触っちゃ!」
律子が言った時は、もう遅かった。香が軽く扉に触れた瞬間、惨劇は起こった。
轟音と共に扉が開き、クローゼットの中から次々に飛び出して来る不可思議な物体。
「何、これ?」
奇麗に片付いていた部屋は、たちまちそれらの物体で半分ほど埋め尽くされてしまった。
「私、通販が大好きでしてね……」
律子は頭を掻きながら苦笑いした。
よく見ると、それはありとあらゆるダイエットグッズだった。
食品系、運動系のグッズが幾つあるのかわからないほどだ。
しかも、どれもこれも途中で投げ出したのがありありとわかるほど埃に塗れている。
(こいつ、絶対ダイエット成功しないな)
香は思った。
どうもお粗末様でした。