第99話 弟子
その後、ジーナとも合流して
親善試合の会場となるエーテル・コロッセオに向かった。
近づくにつれて足取りが重くなっていくのを実感できた。
「なに?緊張してるの?」
そんな僕の様子を見てか、
ジーナが軽口を飛ばす。
「…そりゃね。あんな人数の前で戦うなんて、」
一昨日の光景が目に焼きついていた。
大観衆、そんな舞台に出るのも初めてだし、
対戦相手も知らない。
初めてだらけで少し浮ついているようだ。
「その点については多分大丈夫だよ。そもそもそこまで注目されていない。」
「え?」
ユーリ先生から、意外な言葉が飛んできた。
「どうしてですか?これって国家間の代理戦争みたいなものじゃないんですか?」
ジーナもそうだったようで、
ユーリ先生に問いただす。
「一学生の親善試合にそこまで注目する人は少ないよ。
まともな大人ならね。まあ、向こうはそうしたいようだけど。」
自分に大きな責任がないようで、
少しホッとした。
「でも、エーテル・コロッセオの舞台にたつなんて、滅多にない機会だ。
勝敗は気にしなくていい。好きにやっていいよ。」
ユーリ先生はそう言って、少し笑っていた。
エーテル・コロッセオに到着した。
恐らく。
曖昧なのは、
道を埋め尽くす程の人がそこにはいたからだ。
右を見ても左を見ても、人、人、人。
ざわめきが波のように押し寄せる。
…逃げ場が、ない。
「話、違くないですか?」
ユーリ先生を見ると、
少し驚いた表情をしていた。
ユーリ先生ですら知らない事態に、
心臓が自身の存在を主張し始めていた。
帰りたい。
今更ながらそんな子供のような感想が頭を支配していた。
「おーい!リオー!」
そんな時、遠くから人混みを掻き分けながら、
近づいてくる人影があった。
ザイード・クレストだ。
「ザイードさん。おはようございます。」
「ああ、てかザイードって呼べよ。」
いつもの様子のザイードを見て、
心臓が少し落ち着きを取り戻していた。
正直、かなり助かった。
ありがとう、ザイード。
「ザイード、一昨日でもこんなに人がいなかったと思うのですが、
何でこんなに人が…。」
「ああ、呼んでおいた。」
「へ?」
「折角リオが出るんだからな!俺の弟子ってことで、宣伝しておいたぜ!
まあ、今日は元々休業日だったから、ただ暇なやつも来てるだろうが。」
…余計なことを…。
たまらず膝から崩れ落ちた。
「頑張れよ、リオくん」
ユーリ先生から、
激励の言葉をかけられた。
いつもより楽しそうな声色に、
恨めしい感情が、心に残った。




