第98話 賞賛
翌朝。
泊まっていた部屋を出て、
階段を降り、食堂に向かう。
すると先にニールスさんがいた。
「お、来たね。おはよう。」
「おはようございます。」
ニールスさんに促され、
向かいの席に座った。
「早いね。」
「そういうニールスさんも、早いじゃないですか。」
「僕は仕事だから。」
ニールスさんはにこやかに話す。
親しげに話をする様子を見ていると、
ただの気のいいお兄さんという感じがして、
何十人もの人間を束ねている隊長には見えなかった。
「あの、少しいいですか?」
「ん?なんだい?」
「ユーリ先生とは、どこで?」
「お?また気になって親善試合に集中できないかい?」
フフッとニールスさんは笑った。
「そうですね、ぜひ協力してください。」
「わかったよ。ユーリさんか…、
最初はただ、僕が駆け出しの頃に雇われただけなんだ。
鉱物採集だったかな?その護衛に。」
「そうなんですね。」
「まあ、実際は荷物持ちだったけどね。」
ニールスさんは少し身を乗り出して話をし始めた。
「ムキール山ほどじゃないけど、
魔物が居る場所に行くっていうから身構えていたのに。
1人で全部片づけちゃうんだから。それも拳一つで。」
「…想像できますね。」
「当時は衝撃だったよ。こんな人が世界にいたのかって。」
楽しそうに語るニールスさん。
「何日か一緒にいたから、色々話を聞かせてもらってね。
それからは、ユーリさんが目標だった。」
かなりの影響を受けているようだ。
僕も、ユーリ先生を初めて会った時のことを思い出す。
…校長に投げつけられていたな。うん。
ニールスさんとは、
別の意味で衝撃だった。
「まあ、でもユーリさんからすると、僕はその他大勢なんだろうけどね。」
……。
その時だった。
「そう卑屈になるもんでもないよ。」
後方から声がした。
振り返るとそこには、
ユーリ先生が立っていた。
「ユーリさん、いらしてたんですね。」
「ああ、さっきの話だけど、実際に意思疎通がしやすかったのはニールスだけだった。
今は隊長なんだろ?誇っていいと思うよ。」
「ありがとうございます。」
ニールスさんは凄く嬉しそうに笑っていた。
その顔は、隊長ではなく、ただの一人の少年だった。
そんな様子を見て、
少しだけ羨ましいと思った。




