第85話 抗う体
刹那、全方位から一斉に〈エンソウ〉が飛んできた。
〈コウキュウ〉を発動。
先ほどより弱く。複数生成し、周囲を旋回させる。
いくつかは〈コウキュウ〉の破裂に巻き込まれ、
消滅した。
だが、全てとは行かなかった。
「グハッ。」
取りこぼした〈エンソウ〉が直撃した。
…ように思えた。
「…?」
いや、確かに当たった。
だが思ったよりもダメージが無い。
子どもの頃に食らったときは、
全身が焼けるように痛かったはず。
何だ?これは。
周囲を見渡すが、
魔法の衝突により発生した、煙に包まれていた。
「まあいい、好都合だ。」
「これでもう動けないでしょ。」
最近は訓練ばかりで、
ここまで派手に魔法を使う機会はなかった。
〈エンソウ〉を何本も発動したジーナは少し得意気だった。
「おいおい!嬢ちゃん!流石にやりすぎじゃないか!?
リオ死んじまうぞ!」
ザイードは先ほどの経験から、
今回の魔法に対する威力を想像し、動揺していた。
「大丈夫よ!魔法使いは魔法に対する耐性があるから!
ダメージはあるけど!」
振り返らずに答える。
ジーナは勝利を確信していたが、ジルの言葉が頭を過っていた。
「リオはユーリと同じタイプだね。」
勝算もなく挑んでくるような人じゃない。
ちゃんと見るまで、まだ警戒してないと。
刹那、煙の中に魔力反応。
と同時に〈コウキュウ〉が飛んできた。
ジーナはすかさず、〈コウキュウ〉を発動して迎える。
リオの〈コウキュウ〉と、
ジーナの〈コウキュウ〉がぶつかる。
パキィン
ジーナの〈コウキュウ〉は弾かれ、
リオの〈コウキュウ〉は真っ直ぐ飛んできた。
「噓でしょ!?」
ジーナは慌てて〈エンソウ〉を発動、
リオの〈コウキュウ〉を串刺しにした。
魔力密度の差で、
こんなにも消費させられるなんて。
そう思ったのも束の間、
リオが突っ込んできていた。
ジーナは更に〈エンソウ〉を発動。
リオに発射する。
対してリオは、
何もせずに突っ込んでいった。
「え!?」
リオの体にいくつもの炎の槍が突き刺さる。
「…やっぱり…な。」
炎の槍が刺さったまま、リオは直進を続ける。
「ヒッ、」
「何だありゃ!どうなってんだ!?」
ジーナは引きつる。
ザイードは訝しげに叫んだ。
だが、数歩進んだところで、
リオの足が止まった。
膝が折れる。
そのまま、地面に崩れ落ちた。




