第82話 自分
「おめでとう。良かったわよ。」
ジーナは僕に近づいて声をかけてきた。
「ああ、ありがとう。」
軽く返事をして、
少し自分の手のひらを見た。
子どもの頃の方が色んな魔法は扱えた。
そういう意味では弱くなっているかもしれない。
だが、子どもの自分と今の自分だったら、今の方が強いことは確かだ。
扱える魔法の数で、強さが決まるわけではない。
いつか全てが繋がる日が来るのかもしれない。
そんな淡い期待が、胸の奥で静かに灯っていた。
「やっぱ一対一じゃ、魔法使いにゃ勝てんか。」
弾かれた剣を拾ってきたザイードが戻ってきた。
「しっかし何で急に破裂したんだ?あの時、俺触れてなかったよな?」
あの時というのは二回目のことだろう。
「僕の意思で破裂させました。」
「そんなこと出来んのか?」
「ええ、石を投げようとしたのが見えたので。」
「マジか、魔法と一直線だったから、バレねえと思ったのに。」
ザイードが驚きの表情を浮かべた。
まあ、一対一で投石を仕掛けてくるという発想は基本浮かばない。
そういう意味では良い手だし、
実際、他の魔法使いには効果的だろう。
だが、それも通用する相手ばかりではない。
「よく先生にやられているので。」
それに関しては、
こちらは嫌になるほど受けている。
といっても、ユーリ先生の投石の方が全てにおいて速いが。
「…意外と修羅場くぐってるんだな。」
ザイードは納得といった感じだった。
「んじゃ、最後に弾かれたやつは?」
「あれは圧縮率を上げると性質が変化するので、
他の魔法より少し小さかったでしょ?」
「んな一瞬でわかるかよ。」
ザイードは腰を下ろし、
腕を組み、考える。
「魔法使いに聞くのもあれだが、どうやったら勝てるんだ?」
少し悩んだ末に、シンプルな質問を飛ばす。
自身の弱点を晒せといった、実に愚直な問いだ。
本来なら答えるべきではないのだろうが…。
「…少なくとも、魔法に対する知識はつけた方がいいと思いますよ。
最後にザイードの剣を弾いた魔法も含めて、
今回僕は魔法を一つしか使用していません。」
初級魔法である〈コウキュウ〉も知らない様子だったし、
そこまで問題ないか。
「…使えもしないものは覚えらんねぇよ。」
ザイードはそう言って、仰向けに倒れた。
気持ちはわからんでもない。
僕だって魔法が使えなかったら、きっと覚えていないだろう。
「魔法使いを倒すためって事で、頑張ってください。」
「チッ、調子に乗りやがって、今に見てろ。」
ザイードは恨めしそうに僕を見ていた。
おじさんを虐めて少し自信がついた。
文字面だけ見ると大変滑稽だが、今は噛みしめておこう。




