第76話 仲直り
「エーテル・コロッセオの人と知り合ったの?」
ジーナに事の顛末を話した。
「ああ、さっきニールスさんに言われて初めて知ったけど。
中々凄い人だったらしい。」
「へー、そうなんだ。意外と社交的にしてるじゃない。」
…なんかさっきから、
シスターのようになってきているのは気のせいだろうか。
遠足の報告をしているような、
そんな気分になっていく。
「といっても、もうどこにいるのかも分からないから、会うこともないと思う。
ちょっと会いたくないし。」
「何でよ。せっかく友達になったのに。」
「…飲んでた時のこと、あんまり覚えてないんだ。
一夜の夢って事で、何とか出来ないかと…」
「恥ずかしいから会いたくないだけでしょ?カッコつけない。」
肩を叩かれる。
もはや、何を言っても敵わない。
すっかりシスターみたいになってしまった。
「その人も、きっとリオのこと好きになってるわよ。」
「てか、ジーナは昨日何してたんだ?」
これ以上は耐え難いので、話を強引にすり替える。
「あー、えーと、その…。」
…なんだ?
急に口ごもって。
「…そのね、お土産の話、覚えてる?」
…そんなこともあったな。
ザイードとの出会いが強烈過ぎて忘れていた。
「あ、ああ、あった。その、あの時もごめん。」
「謝らないでよ。私の方が悪かったんだから。ごめんなさい。
軽々しく扱ってしまって…、」
頭を下げるジーナ。
「いやいや、やめてくれって、
トータルでいうと僕の方が悪いんだから。」
飲んだくれ寝ていた人間に、
謝っている状況は、流石に許容出来ない。
「ありがとう、だからその、お土産になりそうなものを買ってきたの。」
そう言って、ジーナは立ち上がり、
備え付けのクローゼットから箱を取り出してきた。
「…それは?」
「キャンドルよ。とても香りがするの。王室御用達よ。」
ジーナは過剰な包装を解き、
最小限の形にして、僕に渡した。
「孤児院ならお祈りとかもあるでしょ?キャンドルなら消耗品だし、
お土産として持って行ってもいいでしょ?どう?」
恐る恐るといった感じでジーナは僕の顔を覗く。
「…王女様直々の品なら断れないな。ありがとう。
お祈りの時にいい香りをさせるわけにはいかないけどね。」
「そう、良かった。」
ジーナに笑顔が戻る。
…彼女も僕と同じ気持ちだったのかもしれない。
それからも、ジーナと談笑を繰り返していた。
いつも通り。
後になって思えば、
こんなにも簡単なことで、
世界が終わるような恐怖を抱いていた自分が、
少し可笑しくなる。
それでも、あの時は本気だった。
本気で、世界が終わる気がしていた。
これが、若気の至りということなのだろうか。




