表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界は魔力でできている  作者: 真瀬 万知久
第一章 入学編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/76

第68話 酒場にて

剣士について歩いていると、

とある酒場の前で立ち止まった。


看板に目を向けると、

木製の板に大きく〈ノミナ〉と刻まれている。

長年の風雨に晒されたのか、文字の縁は少し欠けていた。


剣士は迷いなく扉を押し開け、

ズカズカと中へ入っていく。


扉が、バタンと閉まった。


……このまま帰ろうかな。


いや、流石にそれはまずいか。

覚悟を決めて、扉を押す。


途端に、

酒と肉と汗の匂いが鼻をついた。


店内には冒険者と思しき人々が所狭しと座り、

笑い声と怒鳴り声の中間のような騒音が渦巻いている。


鎧が床に無造作に置かれ、

槍が壁に立てかけられ、

剣が椅子に引っ掛かっていた。


……さっきの剣士はどこに。


「いらっしゃい! 一人?」


声をかけてきたのは、

腰にエプロンを巻いた女性だった。


……一人じゃないが、

待ち合わせでもない。


顔しか知らない。名前も知らない。


「あ、いや、その、えっと……」


どう説明するのが正解なんだ。


「おーい!こっちだこっち!」


助け舟のように声が飛ぶ。


視線を向けると、

例の剣士がテーブル席から大きく手を振っていた。


「えっと、あれと待ち合わせです。」


「はーい!用があったら呼んでね!」


女性は軽やかに去っていった。


……帰ろうとした罰が当たったようだ。


席へ向かう途中、

足元の装備を踏まないように慎重に進む。


ようやく腰を下ろすと、剣士が顎で壁を示した。


「さ、何でも注文しろ。」


黒板のような板に白文字が並んでいる。


エール 3ドーカ

赤ワイン 4ドーカ

煮込み 5ドーカ

燻製肉 4ドーカ

川魚(本日) 6ドーカ

パン 1ドーカ


「……じゃあ、燻製肉で。」


「遠慮すんな、川魚な。

おーい!ヴェラさーん!川魚二つ!エールも!」


「はーい!まいど!」


いや、なんで聞いた。


「僕はエールいいですよ。水で。」


「水はやめとけ、腹壊すぞ。」


……どういうことだ?

剣士は当然のように言った。


「水は衛生がヤバい。

エールの方が安全なんだよ。常識だろ?」


なるほど。

ヴァレンス連邦では、安全な水は貴重らしい。


「そうなんですね。ありがとうございます。」


「おう。」


酒場の喧騒が先ほどよりうるさく聞こえる。

だが、嫌な気分にはならなかった。


異文化をひとつ学んだ。


さっきまで張り詰めていた気持ちが、

ほんの少しだけ、緩んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ