第64話 全部
「なるほど、そういう感じね。」
リオとの話をニールスさんに話した。
お土産を買わないと言ったリオ、
それに対して、私が買う様に話をしたこと。
王族にとやかく言われたくない。
と、言われたこと。
ニールスさんは少し考えて、
ジーナに問いかける。
「ジーナさんは何でお土産を買って欲しかったんだい?
ぶっちゃけ、リオ君が買おうがどっちでもいいんじゃないかな?」
「…私のお土産。民族の工芸品が多いんですけど。
お母様が喜んでくれるんです。」
「王族にしては珍しいね。」
「はい。最初はお母様も好きなのかと思っていました。
でも、お母様は自分では買わなかったんです。
だから無理に喜んでくれていたんだと思って、一度、普通のお土産を買ってみたんです。」
ジーナは思い返しながら続けた。
「そうしたらお母様は、少し悲しい顔をして、こう言ってくれたんです。」
ーー「ジーナが好きなものだから、嬉しいのよ。」
「それからは、私が気に入ったものを贈るようにしました。」
「なるほど。だからお土産を買って欲しかったのかい?」
「はい。それで、その……少し言い過ぎてしまいました。」
ジーナは罪悪感からか、
視線をコーヒーに落とした。
少し覚めたコーヒーが、
意味もなく揺らめいていた。
「全く、君たちは考え過ぎだよ。」
ニールスさんは額に手を当て、首を横に振った。
「仮にだが、君はリオ君が少し失言をしたら口を効かなくなるのか?」
「いえ、そんなことは。」
「でしょ?もっと適当に話をすべきだよ。君たちも。」
ニールスさんは少し残念そうに話を続ける。
「それに今回でいうと、お土産を買うかどうかは問題じゃない。」
「え、どういうことですか?」
「リオ君は残るものが買えないという話をしていたんだ。
逆に言うと消えものなら買えるってこと。
消えものは食品だけじゃないでしょ?体験とか、香りとか、使い切るものとかね。」
「あ。」
ジーナは目を見開いた。
指先がわずかに震える。
どうしてこんな簡単なことに気がつかなかったのだろう。
少し自分が嫌になる。
「ま、リオ君も気が付いていなかったようだけど、
身分が違う人と仲良くなる方法。だったね。
ちゃんと全部聞いて、ちゃんと全部叶える。それだけでいい。」
身分の差など――言い訳に過ぎなかったのではないか。
目の前の、リオ本人の言葉すら見落としてしまっていた。
「…ちゃんと、全部聞いていなかったかもしれません。」
「そうだね、じゃあ、次はちゃんと聞いてあげてくれ。」
ニールスさんはにこやかに笑った。




