第63話 おもてなし
「あの、ニールスさん。」
リオが去った後、ジーナはニールスに声を掛ける。
「ハイハイ、どうしたんだい?」
「すみません。少し相談に乗っていただけますか?」
少し自信が無いのか、下を向いたままお願いをする。
「リオ君の事でしょ?いいねー、青春だね。
そうだな、立ち話もなんだし、少しお店に入ろうか。」
ニールスはそんな様子を汲み取り
先導して歩いた。
少し歩いていると、目的地であろうカフェが目に入る。
〈エーテル・ブランシュ〉と看板には書いてあった。
扉に手をかけると、
小さな鈴が澄んだ音を鳴らした。
外の喧騒が、そこで一枚隔てられたように遠ざかる。
焙煎した豆の香りが、柔らかく鼻腔をくすぐった。
磨き上げられた木の床。
窓際には白いレース越しに陽光が差し込んでいる。
「いらっしゃい。」
店主は年配の女性だった。
動きに無駄がなく、それだけでこの店の格を感じさせる。
ジーナは自然と背筋を伸ばした。
「2人ですが、空いてますか?」
「ええ、こちらの席にどうぞ。」
年配の女性に促され、テーブルの席に座る。
「コーヒーでいいかい?」
「あ、はい。お願いします。」
「コーヒー二つでお願いします。」
手慣れたようにニールスさんは注文を済ませる。
年配の女性は注文を受けて、カウンターへと戻っていった。
「結構いいでしょ?王女様をおもてなしするなら、ここくらいじゃないとね。」
ニールスさんは少し自慢げに話す。
「その、ありがとうございます。」
ジーナは苦笑いで返した。
いつもなら光栄な事と受け取ることができたが、
今回は違った。
どこまで行っても、
王女様である事実が、今の私には痛かった。
「それで、どうしたんだい?」
「…その、身分の違う相手と、対等でいるにはどうしたらいいと思いますか?」
「待った。相談するなら何があったのか、一からちゃんと話すこと。
相手に失礼だよ。」
ニールスは厳しく窘める。
「すみません。」
「まあ、時間はあるんだ。ゆっくりでいいから、この先輩にドンと話してみたまえ。」
ニールスは胸を張る。
少なくとも、頼られる事に喜びを感じる人のようだ。
ジーナは少し安心して、
強張っていた肩の力が、ふっと抜けるのを感じた。
そして先日、リオとあった出来事を、
ポツリ、ポツリと語り始めた。




